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PHASE-1496【制する】

 ――埒外の強さを身心に刻まれるのは、ベルの攻撃が見舞われている者達だけじゃない。

 翼を持っていないのに空中戦を仕掛け、且つ有利に立ち回る。

 軽く打ち込むだけで相手の意識を奪うという業前。

 俺の後方でその業前を注視するヤツがゆっくりと口を開けば、


「なんなんだよ。あの美人は……」

 と、予想通りの発言。


「凄いだろう。何が凄いって、パーティーとして一緒に行動している俺もベルの技巧を目にすれば、毎回、驚かされる」

 別次元の強さってのは分かりきっていることだけども、本腰を入れて戦うところを久しぶりに目にすれば、痛感させられる実力差。


「くそ!」

 瞬く間に部隊を壊滅させられそうになる二人目のストームトルーパー。

 救出とばかりに生徒会長が指揮する後衛が、ベルと味方の間を遮るように幾重もの障壁魔法を張り巡らせる。

 さながら堅牢な魔法の牢獄。

 だとしても――だ。


「意味はない」

 言いつつ囚われたベルを眺めれば、慌てることもなくレイピアを振る。

 浄化の炎を纏わせていない、白刃による普通の斬撃。

 

 普通であっても、


「なぜだ!」

 冷静な喋りが特徴的だった生徒会長が驚きの声に変わった。

 自分たちが展開した幾重もの強固な障壁が、薄紙のように扱われてしまえば驚くしかないよな。

 

 突破されたその先には、表情が恐怖で歪んだ二人目のストームトルーパー。

 その表情を保ったまま白目を剥いて地面へと落下。

 霧散する前の障壁を足場として利用してからの――手刀。

 構えるモーションは見えても、振るところを見切ることは出来なかった。

 素早く動いて素早く相手を倒す。

 

 そんな動きを見せるベルの左肩には振り落とされることなくミルモンが座っている。

 苦手意識を持っているベルに座っているが、表情は嬉々としていた。

 相手方が撒き散らしている負の感情が最高のようだ。

 俺の実力では極上物は与えられないからな。存分に堪能してくれ。

 

 ――相手側はベル一人に尻込みしている。

 鬼神の如き活躍を見せる一人によって、数で圧倒しながらも初手で勢いを潰されてしまい、消極的な戦闘へと変わり果ててしまっている。

 当初の主目標である俺への攻撃を成し得ることが出来ない状況は、俺にとって最高の状況。

 

 ――ここでダメ押しといきますかね~。

 俺にヘイトが集まらなくなったところで、


「剣舞を一つ」

 口角を上げて言ってみれば、


「勇者を止めよ!」

 慌てる生徒会長の声を耳にしても、従う者達の動きは鈍い。

 そこを利用させてもらっての二刀によるへっぽこ剣舞を行う。


「ファイブカウントで刀を要塞へと向けますよ――」


『了解だ!』

 やはり楽しげだな……。

 愛刀二振りを振りつつ「5、4、3、2――今!」と、小声で発せば、タイミングドンピシャで要塞内部から聞こえてくる爆発音。

 振動までは伝わってこなかったが、確かに届く爆発音に、


「何事だ!」

 驚く生徒会長に向かって、


「これが我が能力」

 と、嘘を言いつつ、次の爆発のために刀を振る。

 ここでもタイミングドンピシャでゲッコーさんの特効がぶっささる。

 テレビやライブのスタッフとしても第一線で活躍できるであろう爆発のタイミングは、相手側の狼狽を誘うには十二分。


「次々いくぜ!」

 繰り返し爆発を要塞内部で生み出している俺――ゲッコーさんの仕掛けたC-4爆弾――。

 要塞正面の方にも忍び込んでいたのか、ここの近くでも爆発が生じた。

 今までと違って振動も伝わってくるからか、相手側は恐怖をにじませた顔で

俺を見てくる。


「なんとも腰の入ってない剣舞だな。戦闘時とはえらい違いだ。鋭さがない」


「うるせえ! お前にも我が切っ先を向けてやろうか!」

 後方からの小馬鹿にした発言。

 切っ先を向けると言えば、縛られて腕が上げられないからか、頭を激しく左右に振って拒んでくる。

 うむ。この拒みよう、ラズヴァートは俺が起こしている奇跡だと信じ込んでいるな。


「恐れるな! 不明瞭な技だが、その根幹となっている者を倒せばいいだけだ!」

 鼓舞による収拾は生徒会長。

 大音声による鼓舞。取り乱す連中の動きが落ち着きのあるものに変わっていくのが見て取れた。

 求心力が高いね。

 向こうは爆発を止めるために俺に集中するだろうけど、ベルが励む以上、俺に脅威は来ないと考えていい。

 で、その間に求心力の高い生徒会長をこちらが倒せば、要塞入り口部分での勝利は大きくこちらに傾くってのが分かった。

 連携が素晴らしいのは中心がしっかりとしている証拠だからな。

 数に者を言わせて驕り高ぶった戦い方をする連中とは違う。

 戦いづらくはあるけど、求心力を持つ者さえ叩けば一気に弱体化する。


「そら!」

 一振り、一振りと刀を振って切っ先を向ければ、数の分だけ生じる爆発。

 それを阻害しようと必死に俺を止めようとするが、


「無駄」

 短い一言で大軍をバタバタと地面に叩き落としてくれるベル。

 それに続くようにコクリコが迎撃魔法をアドンとサムソンと共に放つ。

 選択魔法はライトニングスネーク。

 リンのライトニングサーペントと比べれば名前も威力も負けているけど、飛行する者達からすれば雷系は大小関係なく恐ろしいようで、回避ではなく動きを止めて確実に障壁を展開して対処していた。

 致命的なダメージを受けなかったとしても、痺れて落下すればそれで命を落とす事になるのは、先の戦いでのアークディフュージョンが証明している。

 

 雷系を警戒して距離を取る部隊もいれば、落下を恐れて低空を飛行する部隊もいる。

 後者はベルによって直ぐさま倒されていた。

 これに加えて相手の足並みを乱す担当はシャルナ。

 レビテーションを使用して縦横無尽に飛行し相手を挑発。

 見事に乗って追ってしまえば、間隙を突くのが得意なコクリコによる、ライトニングスネーク一斉射が下方から襲ってくる。


「くそっ!」

 一人からの悔しがる声。

 片手で数えられるだけの連中に、言い様にされている自分たちが不甲斐ない! と感情を爆発させて継いでいた。

 

 大軍相手にそう思わせるだけの実力をこちらが有していることは誇らしい。

 その中には俺とコクリコの成長組も含まれるんだからな。

 精鋭相手に負けてない。

 この場を制している。


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