PHASE-1468【デカ頭】
――。
「相手が出てきませんね」
「そうだな」
「私に臆したと見ていいでしょうね」
その言い様。如何にもコクリコだな。
城壁を目指して移動するが、今のところ会敵する事はない。
兵を伏せていることもないし、感知能力に長けているベルも警戒する素振りがない ので、次の目標としている城壁へとスムーズに進むことが出来る。
「相手は要所要所の守りを固めてきているって、ゲッコーさんが言っていたからな」
「迎撃ではなく邀撃に変更か」
「ベルが言うように準備を整えて、待ち構えてるってところだろうな」
これからはこちらに対して打って出てくるのではなく、俺達が足を踏み入れた場所場所で仕掛けてくるって感じだろう。
エルウルドの森でも経験したことだ。
こちらが圧倒すると相手は態勢を整えて待ち構える。
天空庭園での戦闘状況を報告する者もいただろうから、相手からしたら自分たちが有利になる場所で対応したいだろう。
それこそ足場の悪い場所に誘い込んでくることも考えられる。だがリンが合流したいま、落下の心配はなくなった。
スクワッドからのレビテーションってのも可能になるからな。
落下せずにこちらも空中戦を仕掛けることが出来るってもんだ。
「期待を持って視線を向けてくれてるみたいだけど――」
と、俺の目はそういったものになっていたようで、視線が合えばリンが口を開き、
「いきなりレビテーションを使用して戦えるなんて思わないことね」
と、継ぐ。
一朝一夕で空中戦が習得できれば苦労はしない。
落下は防げても、飛行による戦闘は数をこなさないと地上で動くよりもお粗末な戦いになるとのこと。
「でもシャルナは上手くいってたぞ」
エルウルドの森にて披露したレビテーションでの戦闘は素晴らしかった。
「無駄に長く生きてるエルフのマナ操作と、貴男の操作技量が同じだと思わないことね」
「――ああ、確かに」
納得する俺の横では、無駄に長くという部分でシャルナがリンに食ってかかるも華麗にスルーされる。
なのでシャルナは余計にお怒り。
笹の葉のような耳をピンッと立てていた。
それを落ち着かせるコクリコという妙な光景。
血の気の多いコクリコがなだめる役ってのが笑える。
「落下する恐れが無くなったことだけに留めておけばいいんだな。欲を出して空中戦まで考えちゃ駄目ってことだな」
「そゆこと」
フロートは上手く扱えてた記憶があるけど、地上を滑るって感じだったからな。
飛行はまた勝手が違うってことか。
落下して外殻で命を落とすことを回避できるだけでも良しとしよう。
「近づいて来たな」
堅牢そうな城壁と、それに守られた門が見えてくる。
「ここからはこっそりといくのかい?」
「ここを訪れているのはバレてるし、待ち受けているってんなら堂々と行く。大軍なんかでビビるような者達じゃないってのを教えてやらないといけない」
「流石は兄ちゃん」
「だろ」
「ミルモンは危なくなったら私の肩に移るといい」
「あ、うん。考えておくよ」
「そ、そうか……」
やんわりと断られたと理解したベルの落ち込み方よ……。
ミルモンがベルの事を苦手ではなく怖がっているってことは、絶対に口にしてはいけないな。
今以上に落ち込まれたら戦意の欠如に繋がるからな。
「ゲッコーさんも潜入している事だし、俺達が注目されて潜入活動を楽にしてやろう」
「そうだな……」
どんだけ拒否されたことを気にしてんだよ……。
ともあれ、
「この面子なら怖いものなんてない。どんな相手もドンとこいってね!」
――。
移動中、定時報告としてゲッコーさんとお互いの現状を確認しあう。
現在、天井裏に潜り込んで匍匐前進による地味な移動を行っているということで、今のところそれといった成果はないとのこと。
探索範囲を広げつつ、保険であるC-4も設置。
引き続き翼幻王の所在に尽力するということだった。
――ゲッコーさんとの会話内容を隊伍の面子に伝え終えるところで目的地へと到着。
この移動の間、会敵することはなかった。
やはり相手は邀撃に重きを置くみたいだな。
「立派な城壁と門だ。雲の外殻に守られているのに、尚もこんな堅牢な造りを欲するなんてね」
壁の高さは――、
「二十メートルってところか」
継ぎつつ全体を見やる。
鋼鉄製の巨大な門はトロールでも悠々と通れるほど。
壁上には二層からなる楼閣。
城壁内部は階層式のようで、マンションの窓を思わせるたくさんの狭間が設けてある。
城壁から出っ張っている小塔は等間隔で築かれている。
――煉瓦造りからなる城壁。
尖塔部分には以前に目にしたバナーが風でなびいている。
三本の爪で引っ掻いたような傷からなるデザインは、王都を攻めてきたホブゴブリン指揮する蹂躙王軍が掲げていたものと同様。
違いは蹂躙王軍のバナーは緑色だったが、こちらのは白色のバナーからなる。
「このバナーを掲げているってことからして、やっぱりこの城壁の向こう側にある城に翼幻王がいるってことでいいのかな?」
横を歩くベルに問うたつもりだったが――、
「お前達がそんな事を一々と知る必要はない!」
と、壁上方向から返ってくる。
「こっちは隣の人に聞く程度の声だったのに、随分と耳が良いようで」
今度はちゃんと壁上部分に向かって発せば、
「別段、耳が良いわけではない。馬鹿そうな声がよく響いていただけだ」
と、数人の中で真ん中に立っている存在から返ってくる。
「ほう」
初対面でいきなり馬鹿とストレートに言ってくるじゃないか。
「そんだけ頭がデカいと他よりも耳もデカいんだろうね」
負けじと返してやる。
皮肉でもあったが、実際にデカい。
顔全体を覆うグレートヘルムは今まで目にした連中や側に立つ者達と比べ、一回りどころか二回りは大きい。
俺みたいなクソエイムでもヘッドショットが狙えそうなヤツだ。




