PHASE-130【ポイントじゃねえ。経験だ】
「ふざけおって。舌の回りは秀逸だな。よほど良い油をさしているようだ」
小洒落た返しが出来るじゃないか。
刀を構えると、挨拶とばかりに氷の矢が飛んでくる。
岩を盾にして対処。
盾が欲しいな。
刀は両手持ちだから、盾を使用するなら、腕にくくりつけるのがいいんだろうが、そうなると今度は振りの妨げになるか。
――てな事を考える暇はない。
チラリと覗き見れば、
「ひょ!?」
狙ったかのように氷の矢が飛んでくる。
あぶなかった。
だが、さっきから氷の矢だ。
電柱並みのやつや、頭上から降り注ぐのは使ってこない。
今までは部下を使って時間を稼いでいたから、使用が可能だったんだろう。
コクリコよりは詠唱は早いけども、一対一だと、リキャストタイムでやはり隙が生じるようだな。
そこを突くべきだが、コクリコとの戦いで、接近戦で痛い目にあったからな……。
とはいえ、相手は自尊心の塊。
魔法に絶対の自信を持っているから、実際の所、接近戦は苦手と考えるべきか。
だが、仮定で行動は出来ない。なんたって命がかかってるからな。
ゲッコーさんのように、確実に行動しなければ――――、
目を地面に落とす。
手頃な石が有るのを確認。
刀を一度、鞘に納刀。
マテバを取り出してズドンと撃ってみる。
「ええい!」
目で捕捉するのが難しい弾丸は、氷の盾を目の前に作って対処。
次ぎに先ほど見つけた手頃な石を拾い上げて、マレンティ目がけて投げる。
「なんだそれは」
とか言ってるが、躱す姿にぎこちなさが窺えた。
間違いない。こいつは接近戦は弱い。
「一気に行くぞ」
堂々と宣言しつつ、マテバからもう一発。
弾丸に警戒してもらっているところで前進。
イメージとしては、ベルのように地面を滑空するかのような疾駆だ。
「鬱陶しい!」
手を前に出す動作が見えれば、足を止めて銃を構えてみせる。
攻撃魔法を中断して、盾の魔法に切り替えるマレンティ。
そこを狙って再び足を進める。
これを繰り返せば――――、
「よう」
指呼の距離まで到達。
鞘から刀を走らせて、上段から振り下ろす。
「なめるなよ!」
トライデントの柄で受け止められた。
こちらは腕二本。相手は腕三本でトライデントを持っている。
だから、単純に膂力では勝てない。
打ち込みが防がれれば、咄嗟に後方に移動。
瞬間、俺の腹部に拳圧が伝わってくる。
残り一本での拳打。
魔道師が接近戦は苦手という固定観念は、コクリコの時で打ち砕かれたからな。
いかにこいつが接近戦が苦手でも、腕は俺の倍あるんだからな、俺が経験した事のない攻撃パターンも豊富なはずだ。
だが――――、
「遅いな」
小馬鹿にしてやる。
実際、コクリコに比べれば、徒手空拳の動きはお粗末だ。
「シュ!」
顔真っ赤になりながらも、怒号を発する事はなく、俺に穂先を向けてくる。
普通の槍に比べたらリーチは短い。
三本の穂先からなるトライデントは、普通の槍より重量があるだろうからな。
柄が長いと、得物に振り回される事になる。
なので、間合いの取り方は槍よりは容易い。
一歩入り込めば、すぐに刀の間合いになるからな。
つかず離れずで、相手に魔法だけは使わせないようにする。
ハハ――――、こうやってスキルって身につけていくんだな。
ポイント振り制ではなく、経験で積み重ねていくことで、真に強くなれるってもんだ。
「なにがおかしい!」
「近道なんて無いって思ったんだよ」
「訳が分からん」
「訳が分からなくて結構。さっきも言ったけど、意味が無いからな。今から命を散らす存在には」
「ガァァァァァァッ!」
おお、本日一番の顔真っ赤を更新だ。
さっきは冷静を装って、シュっとか突きのかけ声を発していたが、流石に下等種族と思っている存在に馬鹿にされ続ければ、我慢は臨界点を突破だ。




