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PHASE-1255【年齢差には耐性できた】

「反省しよう。少しばかり有頂天になっていたのは事実だ」


「少し――ばかり?」

 今ベルを見ている俺の表情は、片方の眉だけがつり上がった状態なんだろうな。


「訂正しよう。かなり有頂天になっていたようだ」


「よろしい」

 凄いね俺。ここまでベルに対してマウントを取ったのって初めてじゃないの?

 九割は俺がマウントを取られているからね。

 一割だってゴロ太とかがいる状況でしか取れないわけだけども。今回はちゃんと俺の発言で言い負かしているよ。


「別にいいんだよ。ゲッコーさんも朝っぱらから酒を楽しんでいるからね。この貴重な時間を利用して羽を伸ばすのはいいことだ。でも気を緩めすぎなのは駄目。酒を飲んでいても、ゲッコーさんは王都内の情報はちゃんと耳にしていたからな」

 マヨネーズの生産による商売とかも考えていたしね。

 ベルと比べればしっかりとしている。


「すまない……」

 ついつい思っていたことをはっきりと言ってしまったな。

 こういった苦言がサラッと出てしまうくらいに、今のベルはポンコツモードが際立っているからな。

 たとえ最強の存在であろうとも、釘を刺さないといけないところでは刺させてもらわないと。


「精神を弛緩させていたとしても、油断は駄目だな。ここは猛省しなければならない。トールには教えられた」


「直ぐに反省が出来るのはいいことだ」


「まさかトールにこういった事を言われるとはな」


「普段とは立場が逆転したな」


「それだけトールが戦いだけでなく、人間としても成長しているということだな」

 と、ここで柔和な笑みは破壊力抜群ですわ。


「王都にいる間はゴロ太たちと楽しい時間を過ごしてくれてかまわないけど、弛緩しすぎるのは注意しといてくれよ」


「その発言、心身に刻み込ませてもらう」

 そこまで大げさに言わなくていいんだけども。

 美人の笑みに当てられてこちらの鼓動は早鐘を打っているが、口から出る言葉は裏返ることなく冷静な語り方だった――と思う。

 これもまた俺の成長だろう。


「勇者様もみんなと遊ぼう。みんな勇者様を待ってるよ♪」

 ベルとの会話に一区切りといったところで、タイミング良くこちらにテクテクと近づいてのゴロ太の誘い。

 ベルよりも先に俺を誘ってくるのはどうかと……。

 ――……ゆっくりとベルの方を見る俺の首からは、ギギギギ――っと建て付けの悪いドアの開閉音の如き音。

 もちろん俺の脳内だけで聞こえてくる音だけども……。

 ――……はたして正に俺の考えていた通りの表情をベルが作っている。

 柔和な笑みは消え去り、柔和な表情前と同様の半眼で俺を見てくる嫉妬から作られた表情……。


「トール」


「な、なんでしょうか……」


「今回、至らなさを気付かせてくれた礼に、私も鍛練に付き合おうか?」


「あ、結構です。俺は二刀の練習をしたいんで……」


「遠慮はしなくてもいいぞ。普段はレイピア一振りを使用しているが、二振りを扱うのも問題ない。なんなら私が教えてもいい」

 痛いだけの練習にはなるが、これはこれでおいしいイベントではある。

 ベルが純粋な気持ちで俺の練習に付き合うということならば――だ。


「あの……ベルさん……」


「なんだ?」


「もしかして怒ってます?」


「そんなことはない」

 ――……うそやん。

 声に怒気が潜んでますやん。

 隠そうとしているけども、どうしてもゴロ太が俺を優先するから、嫉妬からくる怒りを隠せないでいるよね……。

 ただのポンコツ乙女の八つ当たりですやん……。

 

 俺に向けての嫉妬なら嬉しいよ。男冥利に尽きるってもんだよ。でも嫉妬の根幹部分はゴロ太だからね。

 俺に懐いているゴロ太にだからな。

 でもゴロ太の事が大好きなベルは、ゴロ太に嫉妬の怒りを向けることは出来ない。

 なので俺に嫉妬で生じる怒り全てをぶつけてくるって流れ……。

 本当にポンコツの時は徹底してポンコツですわ……。


「ふぃ~」

 と、ここでドワーフさんの登場。


「大変そうですね」

 矢庭に立ち上がり、そっちへと移動する俺。出来るだけベルの嫉妬の目を回避したいからな。


「おお、これは会頭。お疲れ様です」

 なんとも丁寧な挨拶。

 ドワーフといえばギムロンみたいに豪快な性格の連中ばかりだと思っていたが、目の前のドワーフさんは肩で息をしながらも丁寧に俺に接してくる。

 肩で息をする原因は、背中に抱えた金属の板。それを地面に置いて再度、俺に一礼をしてくれる。

 ギムロンとは正反対のタイプだというのが、この所作だけで分かるというものだ。

 

 体を起こす時の反動で、先端が腹部まで届く長い黒ヒゲが揺れると、その間からわずかに覗き見ることが出来た認識票の色は黄色級ブィ

 中堅としてギルドで活躍してくれている御仁であるようだ。


 ――名前はパロンズ・リヒカルトン。

 年齢はギムロンよりも年下の百四十五歳。

 ギムロンに負けないほどの団子っ鼻の持ち主だ。

 蓬髪の黒髪。髪とは反対に整えられた黒ヒゲが特徴のドワーフさん。

 

 ザジーさん同様、俺達が王都外で活動している時にギルドに加入したメンバー。

 戦いは得意ではなく自衛程度の立ち回りしか出来ないそうだが、ギルドでは武具の制作やメンテナンスで活躍してくれているという。

 戦闘はともかく、制作なんかで中堅である黄色級ブィへとなったのだから、その技量と技術は本物のようだ。


 ギムロンとの年齢差は七十四と離れているが、肌質なんかに違いはないように思える。

 ギムロンの髪やヒゲが灰色。パロンズ氏が黒。違いといえばそのくらいだろう。

 

 人間目線からしたら七十四歳という年齢差は驚くところなのだろうが、今の俺を動じさせるインパクトとしては、貧弱、貧弱。


 俺の弟子たちの年齢と比べれば可愛いもんだからな。


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