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No16 リーデルライゾン


リーデルライゾンに戻るとダイランは目を疑った。

「ジェーン!」

ダイランはバイクから降りて駆け寄り、フィスターがジーンストリートのリーイン地区で倒れていたのを抱き上げた。

「おいジェーン。目を覚ませ」

ユリも駆けつけフィスターを見て彼女は気絶している。ダイランはビクッと構えた拳銃をまた戻した。

黒豹はざっと闇の中へ飛び消えて行った。

ジャスミンがフィスターを背に乗せアパートの2階から飛び立ったのだ。彼女は気を失ってしまった。そのままジャスミンはフィスターを広い道までくわえ引っ張って、ダイランがいきなりバイクで走って来たライトに驚いてフィスターを置いて逃げて行ったのだ。

まるで清楚ながらも可愛らしい子山羊の顔と雌ライオンの顔を合わせたようなフィスターの顔は今は安らかに眠っていた。

何でディアンのジャスミンといたんだ?繋がりがつかめない。

ジャスミンは同じ雌の黒豹のヴェレとは違って相当の怖がりだしシャイだ。ダイランの様に常にキレている人間は怖くて近づけもしなく、いつも自分より体の大きいディアンの後ろでアガガガガと震え隠れているのだ。

ダイランは眉を潜めて辺りを見回した。ユリにキーを預けて彼女は前にケツを移動させる。

リーイン工場地区へ進んでいった。

レオンは顔を覗かせてから彼女の自宅になっているがらんどうの工場廃墟の扉を開けた。

「どうしたのよ。その子。どうしたの?ここはラブホテルじゃ無いわよ」

「誤解するな」

レオンはフィスターを預かってから外に目を向けた。

他の女の子がダイランのクラシックサングラスを掛けて煙を吐きバイクに跨っている。彼女は闇先の、今も動いている工場のトラクターを見ていた。

「あの子とどこかへ出かける為にお嬢様をばあやに届けに?」

「そんな言い回しはやめろ。悪いが暖めさせてやってくれねえか」

「構わないけど、誰?あの子は」

「マンションの住人だ」

「へえ。もう手出ししたんだ。あたしには冷た」

ダイランはシカトし歩いていったからレオンは「もう!」と腕を組んだ。

ダイランは一度戻って来てから一度は愛した女の顔を不安げな上目で見つめた。

「……。なあに」

年下のダイランはいつまで経ってもいくら相手が強かろうが、可愛い子だった。

「お前……。妙な男に付き纏われてるって?」

「ふ、アハハ!笑わせないでよ、妙な男って。チャリール警部の事?」

「ああそうだ」

「安心なさいよ。軽く毎回あしらってるから。彼も大変みたいよ。奥さんが恐ろしく詰まらない人らしくて……まあ、悪いこと言えないけど」

やっぱりだ。分かっていない。4年前もダイランに刑事になるために利用しただけだと言われ騙されたと怒ったくせに、利用されるには確かに似合わない女だ。

「気を付けろよ。あのカードのキングはいろいろ探るために」

「あたしの魅力をなめないで」

「ああそうだな。お前は最高だ。分かってる。注意だけはしておけ」

「ねえダリー。あんたが半年消えていた時期の方が心配だったわ。帰ってきて良かった」

そう一度ダイランに微笑んでから彼女は引き返して行った。

「もう消えないでよね。あたしが署内でけしかける人間いなくなるのは寂しいから」

その背がそう言い、彼女は消えて行った。

しばらく扉に肩をつけていたが、彼は引き返しユリを移動させてバイクに跨った。

「今からハイセントルのリドって男が開いているバーに行くから、そこにいるんだ。マーチっていう娘がいてよくしてくれるだろう」

「分かったわ」

店にはマーチがいつもの様に手伝いをしていて、ニューフェイスのユリににっこり微笑んだ。

ダイランはバイクをそのままハイセントルの深部へと進めさせて行った。

奴等は剣呑とした目で裏切り者ガルドを静かに睨んでくるのを、シカトし走らせて行く。




No17 孤島


デイズは根城の地下から出ていつもの様に歩いていた。

その先に女の情報通り、ダイランがバイクを走らせて来たから立ち止まった。

ダイランはバイクを停めて、デイズを見てからバイクから降りた。

「お前、今何を企んでる?」

「何の事だ」

「乗れよ」

「……」

デイズはバイクの横に来てからダイランの横顔を見下ろし、考えを読んだ。だがクラシックで隠れる目元は覗えない。

彼は背後に跨りダイランはそのままジーンストリートを港のある市場方向まで進めさせる。デイズはバイクや車の運転が出来ない。いつも部下に運転させたり連れの背後に乗った。

港に到着してから隣街とはそこだけ隣接するアヴァンゾンのヘリポート裏からフェンスの穴を潜って入って行く。

デイズのジェットに乗り込みデイズに操縦させる。

「いい加減その銃口外せよ」

ダイランは銃を仕舞いデイズがレガント一族から奪った孤島に着陸させる。

遠くにはアヴァンゾン=ラーティカの輝きが煌き、宝石の山の様に美を誇っていた。

その大きく湾曲を描いた遥か南側には一定の低い位置のオレンジや緑などの光が平らに続き、それは研究施設やスタジアム、イベント広場や大学、水族館などが多い向う街だ。

マンモス街はこの位置からでは陸の内側で見えない。

アヴァンゾンの背後になるリーデルライゾンは角度的に見えないが、港から出航していく巨大な夜間の輸送船はリーイン工場地区から出た物資を運び、孤島の横も通って行った。

「お前、LOGASTARを知ってるらしいじゃねえか。4年前俺が出したその名前の事調べ上げてたのかよ」

デイズがそこの人間を誰かの橋立で使ってカルゾラを裏切ったのは確かだ。

きっと、今進めている全米へのルート改正でカルゾラと組んでいたのを用無しになって消させたのだろう。

「さあね。俺は知らない事だ」

デイズはこの数年間でディアンの行動を突き止めていたからだ。

名前は知らない所だが、闇と繋がっているらしい。ディアンやガイの所属する場所をデイズが知っているわけでは無い。ディアンは言わない。

波の音が響いて、闇色の海は凪を見せなかった。どこまでも遠く響きつづけている。感覚を麻痺させてくる様にだ。

孤島はこの近海には8つあり、その中の2つをデイズがリカーから奪った。

3つがクラブイベント島、3つが夫々とトアルノーラの富豪達が構える島で、その8つの10キロ離れた場所に一つ無人島があった。

2人がいるのは8つの中でも2番目に大きな島だ。

既にレガントの別荘は取り壊され他の屋敷が点在している。もう一つの一回り小さな島は手付かずで、麻薬を精製させていた。

島内の一番大きな屋敷へ向うまでにいくつも屋敷が立ち並び、ファミリーの奴等誰もが女と共に好き勝手に使うための島だった。

ヨットハーバー、マリーナ、ヘリポートがそろっている。

クラブイベント島が一つ近くにあるし、この島の海は比較的浅い方で島全体を囲う珊瑚も美しい。

変った地形で、島へと続く珊瑚棚は中心から道を描くように地層が断裂されている。その先は円を描くように高く鋭い岩礁が立ち並び中心の断裂の終点部は恐ろしい程の深さで夜は闇を称えているが、クルージングもする昼にもなればどこまでも真っ青に底尽きる事無く深青を称えた。

島の周囲はそこだけ隆起していて全体的に棚台のような上にあった。断裂した道の底は先に行き着くまではなだらかに白の砂が沈み、きらきらと水面をすかして太陽に光り、天の桃色や紫に合わせて色もグラデーションに染まる。

島は手入れのなされた芝生が広がり、白い屋敷の建物が並ぶ。

だから、実に色鮮やかな島だ。

ぐるりと岩礁に囲まれる鮮やかなブルーの底に浸れば深い青に包まれた。

地球の宝石は実際の岩石だけではなく、地球の自然の織り成す色彩も宝石なのだと称えてきている美だ。

だが、海底を青の中を行き過ぎればいきなり激しい海流に一気に闇に持っていかれ生きて帰れなくなる危険も隣り合わせの美だった。恐怖の中の美こそがそれであるかの様に静かに闇は訴えかける。

ダイランはクルーザーに乗り込むとその今は闇の海上ホールまで滑らせた。

見下ろす海底はどこまでも暗く、だが天空の満点の星空をそのまま滑らかに映し出していた。

クルーザーからの琥珀色の照明が照らして光を深いブラウンにしては黄金にもしていた。ウィスキーのようで波はガラス質の様に硬そうだが、絶えず波を送っている。打ち寄せる高いチャプチャプという音と共に。

デイズはクルーザーの縁に腰掛けるとダイランを見た。

消えて行く海面の星と月を見ていて、現れた雲が鱗のようにぼんやりと流れてはまるで鯨がゆったり泳いでいるかの様だった。鯨をこの檻の中で飼えると思った。

月は白金色を鱗先から広げた。

「体は平気か?」

ダイランはぼろぼろに負傷している。

「おい。お前今の今までどこに行ってたんだよ」

「ラブホテル」

いきなりデイズはダイランの胸倉を掴みダイランはデイズを睨んだ。

デイズは床にダイランを放って彼は短く悪態をついてベンチに背をつけ海を睨んだ。

「なあダル。お前がいくら俺の邪魔をしようが無駄な足掻きだ。諦めろ。お前はドレンも殺して」

「俺じゃねえ」

「他に誰がいるんだよ。え?」

「さあね」

「いつまでもデカを続けられると思うなよ」

「警部だ」

デイズを睨みダイランは立ち上がった。

「証拠の一つや二つ俺への手土産に持ってこいよ」

「ハッ冗談」

ダイランが意地悪っぽく口元を微笑ませたからデイズの口端は下がった。ダイランは身を返し黒皮のベンチに腰を降ろすと縁に両肘を掛けて横に広がる海を見渡した。

元々ここはこいつらレガント一族の人間の場所だというのが気に食わなくてデイズは息をつき反対側に腰掛けた。

「例のdeath starとかいう女殺し屋は見つかったのか?その女はお前が怪しんでるLOGASTARって所の社員なんだろう。マンモス街に何で関わっていると思ったんだ」

「さあね」

「言えよ」

あの蛇野郎がLOGASTARを辞め他の線でマンモス街を張っていたのかもしれないし、RSというのがLOGASTARのこととも思える。

女の姿はどちらにしろ無かった。

3キロほどしか離れていないZe−nのクラブ島は一番巨大な島で、尚夜は明るく見える。

スポットライトが天を貫き照らし駆け回り、様々な色のスモークが噴射され色とりどりのレーザーは流れる。

巨大な模型手腕を動かしては鉄橋が上がり下がりし鉄道を走らせ、水鉄砲は高々と上げられて虹色のイルミネーションがその水や天の雲を反射させては夫々のロゴのマークを駆け回らせている。

小さな孤島ほどある巨大な6つほどのバルーンは浮きひしめき合っていた。

黒の甲冑のペガサス、マントを羽織った雲のような茶と緑の悪魔、銀の星、紫色の丸、ピンクセロファンの丸などのそれらが乱雑なスポットライトに当てられる天を浮いていた。

照明で明るい天を行く気球は様々な形をし、絶えずセスナが色煙を出させ文字を描いていたりアクロバットをしていた。

女パフォーマンサーが世界一高いブランコに乗って、地上すれすれと1000メートル上空をぐるりぐるりと大きく回転している。

その500メートルの2本の柱の天辺に仁王立ちする彫刻のような体の男2人がバルーンや噴煙、、レーザーの間から見え隠れしていた。

チームの頃の部下だったスキン女、ズィラードは元々あの島でパフォーマンスをしていた。

島はリーデルライゾンと同じ大きさの島で、レガントの島真横にあんな騒々しい島が7年前いきなり現れた時のリカーのぶち切れ様は凄かった。何者かの手で作られた島で、それが実はダイランでしたなどという事はリカーは知らない。

島までデイズに奪われて、それを知れば怒り狂う度合いが半端では無い。

謎の島のオーナーZe−nは全米に留まらず世界中に手を伸ばしていて、その姿は今だ現れたことは無いと言われているからだ。

こういう場所が世界に形や内容を変え幾つかあった。一部はFBIに取締りがされたものが、まだZe−n名義とは知られていない場から利益を得ている。

だから、以前デイズに島の仮オーナーを殺され権利書を奪われた際も、クラブ島位の金の入りなどZe−nの総資産額から見れば露ほどだった。

まさかのZe−nが実はごろつきにしか見せていなかったダイランだと知られた時には殴り殺され掛けた。デイズはキレると恐ろしい。普段誰をも打ち負かす体力の整ったダイランでも一切敵わなかった。

それも半年の始めのうちにデイズと仕方なく手を組んでやって新しいカジノの2つの実権を分け利益を2分してやった。

「酒が飲みてえな。島に行こうぜ」

ダイランはそう言うとクルーザーの中に入り走らせた。




No18 ナイトクルージング


クルーザーが月が出た透明な海面を走って行き、ダイランは一度ぐるりと海中をそこかしこに旋回させてはしばらくクルージングしていた。

アヴァンゾン付近は徐々にだが、既に離れていた。

イルカでも出没して鯨も跳ねそうな雰囲気の綺麗な沿岸だ。

デイズは誰かと連絡を外で取ってはダイランはその背を見ていた。たまに視線が肩越しに飛んではまた向き直り他の所へ連絡を送る。

振り向き様の口元の動きはヘブライだ。そんな相手は限られてくる。ディアン、キース、ハーネス、モーリーじいさん、他にダイランには思い当たらなかった。

デイズは連絡を終えるとドアの中に入ってダイランが恐い顔で見て来ているのを無視して奥へ歩いていった。肩越しに目を細め見てから向き直る。

このまま奴を拘束してハッチを外側から閉め、マンモス街の海上警察にでも突き出すことは可能だ。それを捜査引渡し手続きを署長かギガが済ませれば良い。

ダイランは唇をぺろりと舐め、チラリと背後を見てから舵を切り、黄色の月光にエメラルドの瞳が青く透明に光った。

回転で固定レバーを下げ、ダイランは腰の銃を抜きデイズが調理場に消えて行った方向に腰を降ろし覗いながら、まるで猫のように用心深く上目で進んでいった。

ドアの前まで来て顔を覗かせた。エメラルドがピカリと覗く。

「………」

くんくん匂いを嗅いだ……。肉のにおいだ!

猫の様にダイランはそのフライパンに突っ込んで行き肉を奪っていきそのまま「このドラ猫がっ!!!」とデイズに腹を蹴り上げられどっさり落ちた。デイズはフライパンで火傷した腕を見てダイランの頭を蹴った。

ダイランは唸って、作戦失敗した事に肉を噛み締めながら飲み込んで仰向けになってデイズを睨んだ。

デイズが怒鳴った為に耳を痛め起き上がると転がった拳銃に一度視線をくれ、一気に飛んだがデイズの細長い足に遠くにざっと飛ばされてダイランは背を伸ばしたデイズを睨み見上げた。

銃口が向けられ、デイズは激鉄を上げた。

「お前、いい加減殺されたいのか?今ここでぶっ殺せばあの海中穴に死体なんか即刻隠蔽出切るんだぜ」

「はん、そりゃいい証拠物件掴んだぜ」

ダンッとダイランの顔横の壁にでかい足を付けた。ダイランは床を見つめたまま視線を上げることすら出来ずに、床につく手は微かに震え、そのまま横っ面を蹴られるだろう方向の肩を縮めさせていた。

そのデイズの足は降り、向き直るとダイニングテーブルに腰を降ろし、上半身を曲げ顔を覆った。

ダイランはようやく立ち上がり、その壁に背を着け他所を睨んだ。

「おい。夢とかって奴、お前まだ見るのか?」

「……」

デイズは応えなかった。

そのままダイランの横のドアから出て消えて行った。ダイランは床を見下ろしていたのを背後のドアを見据え考えた。

あいつは確実にこの1年間で精神的に徐々に来始めている。一次は完全にやめていた筈の麻薬にも稀に手を出し始めていた。

デイズを精神的に追い詰め始めているのは明らかな悪夢だ。稀に、うな垂れる。そうやって顔を押えうな垂れるなど、前の奴なら一切考えられなかった姿だ。

自己破滅はしない質なのは分かっている。このまま狂気に奴が暮れる事も無い事も。今まであいつが取り乱した所なんか一切見たことは無かった。常に落ち着き払っていた。それか若い頃は質悪く狂喜していた。

激怒することはあった。ダイランを半殺しにした仲間からの追放の儀式の時すら落ち着き払っていた。自我がしっかりしているから狂い様が無い。

稀に理性をぶっ飛ばして本気で怒り狂うのは逆にダイランだった。

ダイランは奴が弱っている内にデイズを効率良く今の地位のままでこの先失脚させるには、Ze−nからの仕事交渉人ゼグ・ネオとしての行動を急いだほうが良いというのは確かだった。今、NYからAも来ているんだ。

俺も今の精神の安定するうちに。これらの最近の怠慢は自己的には完全に悪いとは思わない。今まで怒りに暮れていたが、それも一時的に落ちるとデイズの様子を観察することに集中出きる。

今の好転機に他の仕事も思いつき安い。

ダイランはドアから出て、操縦室のドアを捻った。

「………」

何度も捻ると一気に顔を険しくして何度も怒鳴り蹴り散らすが、鉄製のドアは凹み歪むだけだ。

「おい開けろ糞ッ垂れが!!!おらデイズ!!!」

デイズは猫がぎゃーぎゃー騒いでいるのをシカトしてクラブ島へクルーザーを滑らせ、その巨大な島はネオンが迫ってきては津波の様に光の渦が頭上高久に押し寄せる。

ハーバーに停めるとドアを開けた。ダイランはいじけて背を向けダイニングスツールに腰掛け勝手に作ったコンソメスープを飲んでいた。

「おい。行くぞ」

ダイランは立ち上がりクラシックを嵌めドアから出て行った。これだけはブラディスに似た所で、デイズはあの馬鹿がそのままにしていった食器をしっかり洗い拭いてから歩いていった。デイズは歪んだドアを膝を当てドアを支えてぐんっと戻してから首をやれやれ振りダイランに続いてクルーザーから降り立った。




No19 クラブ島


騒がしい人だかりを進んでいく。

港は今日は出張サーカスの人間達が来ていた。

宿泊施設もあるために車屋もあった。半一つの街でもあり、広野も山も滝もある。バイクコンベンションやアクロバティック演目やモータースの開かれるイベント島とバーやクラブが広がる半リゾート地のイベント島ははなれたところにあり、爆音を轟かせていた。

その光が遥か地平線から稀にぱあっと広がる。

この島ではドラッグが出回っていて、デイズのもう一つの持ち島から大麻が大量に流れて来ている。

島から入る利益はリカーが奪い、その後デイズと2分する事に収まった。この島のオーナーは現在デイズだった。

「おう!ガルドじゃねえか!」

ポカス達が手を上げ、マジェスタ、A、カルロと従兄弟のバゾール達が歩いてきていた。

デイズを見て口端を上げてからダイランを見た。珍しい組み合わせだ。

バゾールが連れて来た女達はダイランとデイズに色目を使って誘惑しに掛かって来た。女ははしゃぎ艶目で軽くストリップを初めて酒を呷り紹介を受けていた。

「昨日の分も楽しもうぜ」

そうマジェスタは言い歩いていった。

ダイランはAにスリークの事を聞いた。それをいきなり背後からその彼女に抱きつかれてダイランは振り返りキスを受けて、スリークはダイランの肩に腕を掛け猫のような顔で彼を見上げた。

「あなたがあの素敵なガルドね?何だか、とっても素敵さが増したわダイラン」

スリークは紫色のランニングのふわふわ毛皮を着ていて、シルバーの見にスカートから黒網の大きなタイツの足が伸びている。

彼女の綺麗な足を15センチヒールは鋭くゴールドアクセも飾っていた。

小悪魔なスリークはバゾールと3人の女と話し歩いているデイズを振り返るとウインクした。

デイズは口端を上げスリークを見ると彼の横の女が彼を自分の方に振り向かせ微笑んだ。

上空すれすれをジェットが飛んでは旋回して行った。

ブランコ通りに来ると女がぐるんぐるんと通っていて、女はダイランを見つけるとにっこり微笑んでからダイランの脇を取ってそのまま彼は女に引っ張られて行くのをスリークは手をかざした。

女は高い塔の上に降り立った。男達は物の見事に飛んできたブランコをキャッチして柱の上から垂らし始めた。

ダイランは拳銃や小銭だとかジッポーの落ちていった人だかりの地面を見下ろしていて、スリークがそれらを拾っていたが小銭は諦めていた。

「ねえダリー?あなたは今日ボスと何しているのかしら?」

女は意地悪っぽく微笑んでいつも手にしているオペラブラスをガーネットの飾るその目に当てた。

「さっきも岩に隠れて乱闘してた」

そうあでやかな声で通った高い鼻梁下のダイランの厚い唇に指を当てて微笑んだ。

ダイランはおどけて面白そうにブランコ女はデイズを見下ろし手をひらひらと振ってキッスを飛ばしていた。ブランコからは何でも見える。

ダイランの横顔を見てその男前で頑固そうな頬に手をおいた。

「いつまでたっても、あなたってセクシーね」

そう言いちゅっとキスをしたから、かんかんに怒ったスリークが塔の下に来てダイランを睨んだ。

天気の良い日には豊麗な雪を構えたレアポルイードの鋭い頂まで見えるのだ。

アヴァンゾン=ラーティカとは違い、基本的にどんな者でも受け入れるこの島はダイランも自由に行動できた。

この島にはもちろん交番すら無い。消防署がひんぱんにあるくらいだ。

派手なスパのあるクラブに入っていき、そこは島の中でも一番に大きなクラブだ。

最高の曲が流れ全ては色が曲で染まっている。各々の人間の感じる色毒毎にだ。

Aは気分良く楽器を取り出しスリークも微笑みステージに上がっていき、ディスクジョッキーも笑い目配せしてリミックスを始めた。

最高だ。ステップ踏んで、自分は微笑んでいた。回って踊っていた。

スリークの声音に反応してAの音色に酔って空間全ては刻まれるDJの音に揺れていた。闇と光が反転し。

女の腰を取り回って抱き寄せ、艶のような音色になり、紫ワインと青のライトが海の様に降りてくると沈んでいき、両肩に入れる女の腕の間の彼女を見下ろしキスをしようとしたのを肩を引かれ振り返った。

「………」

いきなりフィスターにびんたされて、ダイランは頬を押えレオンは横で腕を組んで可笑しそうに笑った。

違う。幻覚だった。フィスターはいなかった。

さっきのびんたも肩を引かれたことも。幻想だった。

女はダイランの顔を掴み戻させ、ダイランは酒で酔った甘い目を開くと女にキスをしのめりこんだ。

曲に乗せAの渋い声が歌いスリークは蛇のような目でダイランを熱っぽい目で射抜いて微笑みAに囁いた。

「ねえ。今日は彼軽いのね」

「土曜の酔い時はいつもああなのさ。相手にしてもらえよ」

「それって素敵な曜日習慣だわ」

「だがいきなり倒れたって言うから無茶させるなよ。お前はスゲーから」

「ふふ」

スリークは目元を微笑ませてダイランを美味しそうな目で見て唇を舐めた。官能的な歌声が高く響き渡りスリークは瞳を閉じ声を張り上げた。

毒の事はAはRから聞いていた。誰がそんな大それた事をあのガルドにしたのか分からないが、Aはダイランが微笑み女と見詰め合い何か囁きあって笑っているのを見てから、今はもう何ともなさそうに見えたからひとまず安心しておく。

デイズはいつの間にか消えていた。

部下が彼の所に来てディスクを持った男が消えたと言って来た。

ディアンはそれなら今何処にいるんだ。あいつ、俺を騙すつもりか。

デイズは急いでハイセントルへ戻ろうとしたが危険だ。糞。ガルドは囮か。

あのダイランの事なら誰か今の内に寄越してデスタント根城内にあるカルゾラと繋がるデータや共同し集めてきた他ギャングデータ、ルート改正案の入ったデータバンクを掴みに行かせた筈だ。

あの女の言った言葉を鵜呑みに……デイズは目を開いてちくしょうと思った。

あの女だ。

今頃俺の部屋の中を探っている筈だ。

この島に置いてあるジェットに乗り込んでリーデルライゾンに戻った。ダイランのバイクで走らせようと思ったが操縦法が分からない。

いつものんきで態度悪いヘドロを叩き起こしに行くと女と出ているのかいなかった。

仕方なくハンドルを握りキーを回して適当にギアを回すと回しすぎて一気に250キロのスピードが出て何体か車毎轢きそうになったが、一気に走らせこつを掴むと320キロ全開で走らせて行った。




No20 モリモリ・モーミー


バイクはそのままドア前で停まり部下達は驚いて転がっていったバイクを避けてデイズは大股で自らの部屋の観音扉を両方開けると書斎まで行き扉を開け放った。

「何やってる」

「……。あら。早かったんじゃない?」

女がマザーコンピュータを銃で打ち抜いた時だった。マザーを出すからくりまで知られていた。

デイズは女の肩を掴み壁に叩きつけて女は面白そうに上目で笑って体勢を直して、デイズは本が女の振動で彼女の足元に落ちたのを進んで女はくるんと逃れた。

「残念だったわね?ボス」

「お前はどこと繋がっているんだ」

元は他州ギャングの所の女ちんぴらだ。だが既にそのギャングは無力に変るに等しい。女は微笑し、別に?と言った。

「ねえそれよりも、あの女やめといた方がいいわよボス。まるで意地の悪い悪魔みたいよ」

「お前の方が底意地が悪いがな」

「そんな事は無いけれど?」

そうデイズの両肩に腕を回して恐い目元になった。

「あたしはね。デイズ。魂張って来てるのよ。だから邪魔はしても邪魔はさせない」

デイズは腹を押えてそのまま前のめって気絶した。女は支え、絨毯の床に仰向けに横たえさせた。

女はくすりと笑って頬にキスをしてからディスクを指に挟み振って服の中に仕舞い出て行った。

通路でバースとすれ違い、女はバースにすっごい顔をしてバースは顔をひきつらせ、ボスの部屋の扉をノックして入って行くと、書斎の方の扉が開いていてホールを抜け進んでいった。

「!」

バースは走った。

犬鷲が倒れていて気絶していた。頬を叩いたが目を覚まさずに兄のキースにモールス信号を送った。

キースは眉を潜めて根城の入り口を閉ざさせ女を捜させボスの所に駆けつける。根城内は一気に空気が変った。

女は影に隠れると通路の様子を窺った。

デイズは2人がかりでソファーに横たえさせられた。キースがいくら呼びかけても目覚めずに医者を早く来させる。

マザーコンピュータが壊れている。中の記憶バンクもこなごなにされていた。

女の仕業だ。だから女なんていう忠誠心の無い人種はやめておけと言ったものを、ボスはかの女に限って部下にしたのだ。

しかもボスを気絶させた程の女などありえない。男でも無理だというものを。

デイズは腹を押え顔を歪めて体を起こした。

その日こそ自分の体を重いと思った事は無かった。がっしりしているから筋肉が一時ショックで緩んだ今は支えるのもずっしりして思えた。

「あの女は」

「まだ見つかりません。何者だったんだ」

「……」

デイズは頭を振ると起き上がり、ビリジアンと金のソファーの彫りこまれた木枠に手を掛けた。

「あの女、普通じゃねえ……」

髪をかきあげた目に、女が連れてこられた。ハーネスにぶん殴られて赤くなった頬でふてくされていた。

ハーネスは女を跪かせ小さな頭を踏まれ銃口を突きつけられ、彼女は鋭い目でハーネスを睨んだ。

取られたディスクはソファーに座るデイズの手に戻された。

鷲のような目でデイズが睨み見下ろして来るのを上目で見て舌を出した。

ハーネスは女の首根っこを掴み引き上げた。

デイズはディスクをテーブルのクリスタルの上に放って女を見た。

アメリカの物資ルート改正案には女の所のルートも絡んでいて、それを崩されると都合が

「お前、LOGASTARと繋がってるのか?」

女はOという顔を冷や汗紛れにして、その名称を何故デイズが知っているのかと思った。ガイは言わない。ダイラン伝いだと思い当たった。ダイランがLOGASTARを知って?それはまずいことだ。

「それなら、俺と条件次第によって手を組もうじゃねえか」

「ボス」

「このディスクの中の欲しい情報によってはどちらにも都合良く行かなけりゃあこちら側もやりづらいからな」

「女の言葉や行動なんか信じるなボス」

「お、女?」

ハーネスは瞬きして今までファミリーの誰もが女みてえな顔だが野郎だと思っていたモリモリ・モーミーを見た。

「もしここでお前を欠いてもそこから他の人間が来て終わらないだけだ。そうだろう?要求を言ってみろ」

女はふんっと顔をそらしてディスクを見てからデイズの顔を下目で見据えた。

「……」

デイズは片眉を上げ、雰囲気と風雅が一気に変った女の顔を目を細め見た。

なんだ?この女は一体……。

女はサイドに顔を向け、再び戻すと意地悪っぽく微笑した。

「嫌」

デイズは立ち上がり彼女の前まで来て、どこか癖のある彼女の目を見据えた。

彼女は顎をついと上げ長い流し睫で囲まれた黒い際のでかい釣り目は何かが宿っている。広い瞼の目を細めさせて顎を引いてでかい上目で彼を睨み見た。

「……。吐くまで閉じ込めておけ」

デイズはハーネスにそう言うとディスクを手に部屋から出て行った。

女はハーネスが再び手を掛けたのを獣のような顔で手で払い牙を小さく剥いて踵を返し歩いていった。


ガイはディスクの内容全て上に報告してからそれをバキッと割った。

彼はデスタント内の情報は知らない。カルゾラの屋敷にマザーコンピュータがあると思ったのだ。完璧と思われたそれは巧妙に虫食いされていた。

元々ディアンはデイズにディスクを返す気などさらさら無かった。

情報部の人間はそれらのデータを目で追い、不完全だとみなしてガイの上司はその事を受け彼にまだデータの隠し場所がある事を伝えた。

ガイはディアンに連絡を取ったが彼は捕まらない。あいつは協力的なのかどうなのか分からない。ガイは引き返す事は危険だと悟った。こんな時に元相棒がいれば事はスムーズに進んだが、今奴はワンマンだ。

バースに見張られる牢屋の中の女は足を組み地面に放っていて、バースは手に下げるライフル銃を足に掛け雑誌を見ていた。

ディアンに持ちかけられた賭けに女は大金をつぎ込んでいる。これはどう優勢になるかは相棒に言わなければ分からなかった。

その相棒は今、黒の巨大バイクに乗り込み闇を走らせていた。彼の頬を冷たい風が浚いサングラスの目元は彼の鋭く冷めた瞳を隠している。

暗い天空を銀の星が瞬きを広げる。

依頼の続きの次の街へ向う。




No21 黄金の雲の際


ダイランは白いシーツの中の女たち3人に笑って女たちははしゃぎ裸体を弾ませた。

カルロがマジェスタに薬を投げた。スリークはポカスと消えていた。

Aはボリュームを調整してからソファーに戻って女に火を着けられて微笑み彼女の顎を擦った。

女たち3人はダイランにキスをしてシーツに紛れ、他の女4人はテーブがテーブルの上の粉と酒のこぼれる上に立ってストリップをしてはキスしあって男達の目を楽しませてウインクを飛ばしていた。

ダイランはいきなり顔を上げると女を残して2人の女がブロンズと皮が飾る腰でダイランの手や背に手を伸ばし触ってダイランは真っ青になってバスルームに入っていきカルロがドアを開けた。

気分が悪そうに洗面台に俯き白い顔を押え、思い切り吐いて蛇口を捻って顔を覆ったから驚きAを呼んだ。

毒が抜けきらずに体をちくちく痺れさせた。

「おいガルド、辛いのか?」

ダイランは首を振り顔を押えていた。肩を引いて水の入ったグラスを持たせてからダイランはそれを手にしたが、それを落として割ってしまった。

裸足のダイランはそれを土のように踏み均してはしゃぎ始めたからAはグラスぐらいでは傷は付かないダイランをバスルームから出させてドアを閉めた。

「彼どうしたの?どうしたのダリー?」

「何でも?」

ダイランはケロリとしていて女を引き寄せキスをしまた女たちの踊るテーブルに押し倒した。4人は笑いきゃあと叫び降りて体をくねらせた。

ダイランの背を面白がってつついては顔を上げるのを歯を剥いては向き直り邪魔されてを繰り返していた。

ダイランは女にも飽きると酒を流し込んでからストトラを引っ張り履いてAのソファーに来た。

アームを背に足を伸ばし座ってブロンドを両手で頭ごと揺らしてから目を開き、腹の上に投げられた煙草に火を着けてジッポーをテーブルに放った。

彼は目がとろんとしていてナイフを操る手を伸ばして器の上の葡萄を取り、腹の上に乗せてナイフで一つ一つ皮を剥いてあげて背もたれに腹をかける女に食べさせてやっていた。

ぶっちゃけ3分の1になっている。

Aは自分の足の上に乗せてきているダイランの片足もそのままに、Aの横でアームに腰を掛けてAの肩に身を寄せている女がガラス破片を払ってやっていた。

それをダイランはくすぐったがって笑いながらその片足を引き寄せ房だけになった葡萄の残骸で足裏を払ってその房を投げ捨てた。

ダイランがこの数年で完全に薬をやめてからはどんなに手に持たせても、ダイランはそれをポーイと捨ててきた。

「お前が手を引いてからはやり方が変って来てるぜ」

ダイランは相槌を打ってからナイフで研いだ爪を見下ろしていた。

「戻る気はねえのか?お前なら動かせるってのにな」

ダイランは首を振ってからナイフを仕舞った。

窓から見える深夜は全てのライトが艶やかに飾っていた。

雲の際が黄金に光り、ヴェールの光と影が天を差している。一筋だけ白く太い柱が斜め上に射し、水色の先に消えて行った、。雲は音無く泡の様にゆっくり柔らかに渦巻き、白と水色の影を天にはっきりと映写させ、銀色の雲を背後に置いている。

雲と雲の柔らかな間にも光を通し、ヴェールはグラデーションを描いてどこまで続くのかと思ったこともあった。

それらの光には日没が来るものだ。それを夕陽の様に熟させることを誰もが再びZe−nに望んでいた。

雲を射抜き、黄金の太陽の陽が眩しく白金に光っている。まだその雲に隠れたままの状況だ。今にその雲の薄い所から丸い陽をはっきりとさせようとしている。存在を確固としたものにさせようとだ。

眩しく目を開けられなくし、それをダイランは戻ろうとはしなかった。

過去を消したのだ。温かい光を熱く感じる前にカーテンを閉ざした。

ダイランはそういうような物だった。目の前を依然ちらつかせ続ける太陽の残像を通して現実を見つめていた。

女たちははしゃぎ部屋から出て行き、カルロとAは残ってマジェスタは女たちと消えて行った。

マジェスタは1度目配せしてから出て行き、Aはダイランを口説きに掛かった。

「なあガルド。戻って来てくれ。お前がいるといろいろやりやすい」

「俺はもう身を引いた。無駄だ」

そう言ってから立ち上がりカルロの所まで来た。

「Rはきっと今に身を引くはずだ」

「親父は抜けられない身だ」

「Rがそう言っているのか?俺が手を貸してやってもいい」

「だがZe−nが許さない」

カルロはZe−nの正体を知らない中に入っていた。知る人物も極限られている。

「それに、自分から抜けたがらない筈だ」

「それならそれでいい」

カルロは煙草を消してダイランの肩を持った。

「誰だって言ってるだろう。警察なんかにいても何にもならないんだぜ。お前は本当は何を企んでいるんだ?親父だってお前の考えを図りかねてる。いきなりNYでリーダー達を消して市場も捨てて何をしでかすのかと思えば。心配してるんだぜ」

ダイランは身を返してテーブルに腰掛け細い足首を膝に乗せた。

「所詮警察が出きる事はたかが知れてる。今の俺が持っている身分は何の意味も無いも同然の事だ。もし再びアングラに戻ることがあったとしても、幾らでも手はある」

Aとカルロは口端を上げ、早速今出ている話を出した。

「1度非番の日でもいい。NYに顔を出して欲しい」

「いいだろう」

「任せたぜ」

ダイランは時計を見てからAと部屋を出て、Aと共に一歩後ずさった。

デイズの部下はダイランに首をしゃくり、Aを1度見てから彼は歩いていった。

ダイランを人気の無い所へ連れて行くると銃を下げ煙草に火を着けた。

「お前、カルゾラの奴等のクラブにいたらしいじゃねえか」

「さあ」

「そこで何をしていた?」

ダイランは男が背を着ける煉瓦の横を煙の先、這っていく蜥蜴を見てから男の顔を見た。

「亜ぞールファミリーに手を出したのはお前か?」

「何で俺が」

「何か嗅ぎつけたんだろう」

アゾールがもし情報をディクスに掴まれていたとすれば手を出すだろうが、ダイランは出くわしてはいない。マンモス街の部屋を襲撃したのは奴等ともいえる。

「女達がどうなってもいいのか?」

「きたねえな。やり方が」

「フェミニストなお前じゃあねえんだよファッキンルシフェル」

その呼び名にダイランの目元がぴくりとなり、鋭い目になっらがある一方を見た。

9人の女が捕まって車の中に押し詰めにされていた。

「今日は大人しく帰ることだな負け犬野郎。これ以上ガキが下手な真似するんじゃねえ」

アゾールを襲ってネックレスの秘密を知られる前に奪ったのはカルゾラの所の人間か、あの蛇野郎の仲間のはずだ。カルゾラ部下が言うように出を組んでいたなら情報が組み込まれていた筈。RSは蛇野郎の所属する場所に違いなかった。どちらにしろアゾールに消えられても困らない。

ダイランは女達のいる車のところまで来て、気絶し転がっているマジェスタを見ると男をぶん殴ってマジェスタを引き起こした。銃口を向けられたのをドライバーに肘鉄して車の外に蹴り出してからA達を来させ女達を開放してから2人の男をビンタし目を覚まさせた。

「デイズの野郎の企みを言え」

「ファッキンルシフェルが」

ぶん殴ってから顔を向けさせた。

どちらにしろデイズの部下は嫌になるほど口が堅い。2人の頭を銃で吹き飛ばし煙草を吐き捨て歩いていった。

カルロはダイランに目配せして頷き横を歩いた。

「何かが起きているらしいな。元街でも」

「俺側が調べる」

「手を貸そうか?」

「いや。大丈夫だ」

マジェスタを肩に担いで階段を上がっていくと、すっかり酔いも冷めていた。

Aは女たちの傷を治療してやっていて、ダイランは女たちにごめんなとキスをしてから彼女たちは甘い目になって微笑み、「こんなの平気」と言った。

「ねえ飲みなおしましょうよ」

だがダイランはそのまま島を出る事にした。

A達はだだこねる女たちを連れて鎖に繋いで猫の様に彼女たちはダイランに色目を使って歩いていった。

カルロも連れてダイランは大陸に戻って行った。アヴァンゾンの私営ヘリポートに着くとカルロはヘドロの事をそこまでの道で聞いていたから驚いた。

「どこの人間だ」

「まだ不明のままだ。検討はそうやすやすと付けられねえ」

アゾールが手を出された。カルゾラに総括されていた内には入っていなかったところだ。あの口ぶりじゃあ男も何故アゾールが痛手を負っていたのかは分かっていなかった筈。

警官としてダイランが張ってカルゾラから情報を得ていたと思っていたか、デイズに言われて何の情報を男から得たのかを探って来いと言われたんだろう。

デイズはダイランがZe−nだと知っている存在だ。

昔その名義でカルゾラと手を組んでいた事もボスは話に出したのかもしれない。

カルロは渋い顔をして何度か頷いた。

ダイランはマンモス街とアゾールの近状を調べさせるためにその街の情報屋に連絡を取る。

「ああ。デカがホテル張っていたが、アゾール共の死体が上がってる。銃創から言って未確認らしい」

RSか。

ダイランは連絡を切ると目を上げて降り立ち歩いていった。

ダイランは目を上げ、立ち止まった。

アゾールに襲撃され、手元に戻ったディスクを蛇男が持ち去るためにカルゾラの部下に交渉を持ちかけデイズと繋がりカルゾラを滅ぼさせたという事は、クラブで殺されていた2人はデイズに買収されていた筈だ。RSと蛇野郎がカルゾラとデスタントの橋渡しをしていたのをデスタントに言われカルゾラを殺し、RSを動かしていたなら、RSにも動く意味があったからの事。

RSの目的はデスタントからも裏切って情報を奪う為に動いていたとすれば、蛇男はまだいる。

RSの情報?LOGASTARの情報か?

非番にNYにおもむく。交渉人ゼグ=ネオとしてZe−nの意向の元動く為だ。

RSやLOGASTARの拠点は何処なんだ……。

逃げした蛇男の事を呪ってからカルロの肩を叩き歩いていった。




No22 バジョー


Rのバー、バジョーにはオリジンタイムスマスターのジョスが来ていた。

入って来たダイランをカウンタースツールから振り返って、ダイランはジョスの横に腰掛けた。

「お前、パーティーはどうした?何だかえらくズタボロじゃねえか」

「転んだ」

「ハハ、とれえなあ」

ダイランの肩を叩いて、ダイランは酒を注文しカルロは妹とバトンタッチしてカウンターに入った。

「さっきの子はどうしたんだ」

「さっきの子?」

Rの言葉にジョスはダイランを見て、ダイランは酒を飲んだ。

「捨てられちまったよ」

カルロはおかしそうに笑ってからジョスに言った。

「下でビンタされてたんだぜ。泣かせて」

ダイランはジョスがカラカラ笑ったから言った。

「嘘だ。今こいつを偽証罪でしょっぴくからな」

と言って手錠を出した。

「酔った成りで行ったら逆に例の上司にお前書類送検されるぞ」

そう笑って言い、ダイランはぺろりと舌を出した。

「ったく、あのハノスの野郎完璧主義過ぎるんだよ俺を良いように利用しやがって」

ダイランはぶつぶつ言い、横にきたジョウを見上げた。

「どうしたの?その傷は」

「痛いんだ」

「傷薬持って来てあげる」

ジョウはダイランの頬にキスをしてからドアから出て行き、上の階へ上がって行った。

彼女は鍵を回して店内に入って行く時、短く叫んで口を押えられ気絶した。

しばらくしても来ないジョウをダイランは見に行くと、男2人と鉢合わせた。

その2人を階段から蹴り落としてジョウを抱き上げドアからカルロが顔を出した。階下を見て親父に振り返る。

ダイランは走って上の店を閉めてから落ちていった2人の男の所へ来て見下ろすと野次馬を追い払った。

Rとジョスは出てきてカルロからジョウを受け取り、カルロは下へ降りてきた。

男達を引き上げてから連れて行く。

見たことの無い顔だ。ダイランは横のカルロに目配せしてから2人を見た。物取りでは無いだろう。Rの店と知っての事か、ギャング絡みで今動いているのか、毒が目的かは分からない。

「このままサツに引き渡すのか?」

「いいや。事情を聞いてからだ。お前はジョウの所に戻れ」

「分かった」

カルロは戻っていくと2人は言った。

「誤解するな。別に怪しい者じゃ無い」

「どこが怪しくないだって?女気絶させて店の金奪おうって魂胆か?誰に言われた。どこの人間だ」

銃を探ろうとした手に、慣れた手触りの物を手にした。ダイランは眉を潜めてそれを出し、意外な物が出てきて2人の男を見下ろした。

FBIの人間だ。

主任に言われてダイランの周囲を調べているのだ。毒で倒れたと聞き。

ダイランは目を細めて、案の定ハノスの使いだろうと感づいた。

今自分の身の回りで起きている事を知られてはまずい事だ。FBIの人間を消すわけにもいかない。ハノスに繋がる人間だ。しかもあの食えないじじい、長官にも。

FBIにこのままマンモス街を調べさせられないだろうか。だがすぐにその考えを打ち消す。街はもうあのディスクが奪われたのならデイズの手中だ。

だが実際、ガイは虫食い部分を持ち去っていたからデイズはディアンにどういうつもりだと聞くために部下達に探させていた。

ガイは街の様子とギャング達を見て、引き返す他無かった。

FBIの2人は逃げて行った。ダイランはその背を見ていた。ハノスが監視している。

ダイランは1度上に戻って目を覚ましているジョウは無事だった。

夜中3時半。

これ以上動くことはやめたほうがいい。NYでの仕事に支障が出る。

デスタントはマンモス街を警察が調べている報せで動きを止めた。女は何を言っても吐かずにいる。ガイも戻ってくる事すら無かった。

LOGASTARが確実に目を付けてきているという事だ。これからの行動に支障をきたすようなら徹底的に調べを進める必要がある。

Aは島から移って船に乗り込み、夜のスキューバに女たちと出かけていった。





後篇 NO1 ROOM101


ダイランは酒を買い込んだ。

101の部屋のドアを叩き入って行った。

101は牛革ソファーにすわり、入って来たダイランを見て雑誌を放った。

「珍しいじゃねえか。お前の奢りなんて」

「思い切り飲みてえんだ」

レコードに針を落としながらダイランは言い、曲が流れ出した。

「ユリも呼ぶか?」

「今日はリドの店にいる。それをこの2人の野郎に付き合わせるのか?」

そう振り返ってスツールソファーに酒を置いた。

「スリークは結局来なかったのかよ」

「会って来た」

「女位用意してからこいよ」

「お前の女は」

「さあ。機嫌悪いんだ」

101はソファーから立ち上がって酒の袋の中を見てからそれをローテーブルに置き、ダイランを見ながらソファーに座った。

「お前の女は」

「俺の女じゃねえよ」

「あの天使はもうお寝んねか」

「そうだろうな」

ダイランは棚裏のキッチンスペースに来てグラスを持って来た。グラスに酒を注ぎ、飲まずにローテーブルに置く。

「電話してみろよ」

「………」

ダイランは101に背を向けて電話を引っ張りダイヤルを一つ一つ回した。

ダイランは死にかけていた風は覗えずに手の痣はまだ残っている。

101は雑誌に目を戻し、グラスを傾けた。

「はいもしもし……」

本当にフィスターが出たからダイランは驚いて電話を切った。

その事で完全に目を覚ましたフィスターは時計を見た。

まだ3時半だった。まだ2眠りも出来るじゃないの。

そこはレオンの工場のアダルトでヨーロピアンとオリエンタトエキゾチックを配合させた部屋だった。ブロンズと群青に青紫、白と黒の空間だ。

フィスターにはどこなのかは分からない。

彼女は外に出ていていなかった。

白の上等品のファーベッドから上がってその銀狐の毛皮を、群青のシルクシーツの上に正した。

壁の写真が目に入った。

レオンと、ガラの悪い青年だ。だがそれは制服警官で、レオンはもう少し若くはつらつとした様子だ。いつもと同じく勇ましくグラマラスな体を皮のライダースボディースーツに包み足先のブーツはやはり鋭く、レオンを前に2人でバイクに跨っている。

このレオンの後ろの彼、若い頃のダイランなのだと気づいた。

荒んだ鋭利な目で元のブロンドと共に黒く染められた複雑に長い髪が変った風に編み込まれていて、10代だろう。彼は19で刑事になったとコーサーから聞いていた。目が毒々しく雰囲気も普通じゃ無いから正規の警官には見えない。

闇やアングラに浸りきっている。その風とオーラが覗えた。静かな目元に邪な風が色濃い。今の彼とは全く違う。

ダイランは101に頭に雑誌を投げつけられ、肩越しに睨んでもう一度電話を掛けた。

「はい」

今度ははっきりした声のフィスターが出てダイランは咳払いした。

「さっきは悪いな。間違えただけだ。よく眠れ」

フィスターは真っ赤になって、ダイランが切ろうとしたから101が奪い取ったからダイランは小声で言った。

「お前みてえな無職じゃねえんだよ。やめろ」

「おいフィスター?俺だ。エスリカ。今からこいよ」

「馬鹿が。今何時だと思って」

「いいですよ」

「何?!」

「ひいっ、え、だ、駄目ならいいです……」

「こいよフィスター」

「気安く呼ぶな」

「マンションで飲んでる」

「おいジェーン。お前に一つ聞きたいんだが、何でリーインにいた?」

「平気です。なぜかは……」

フィスターは口を濁した。

「目がすっかり冴えてしまいました。どうせなら付き合いますよ警部。明日はあたしは非番ですから」

「だがお前なりの予定はあるんだろ」

「いいえ。たいした物は入れていませんから」

そう言うとフィスターは切ってしまった。

ダイランは慌てて逃げ出そうとしたから101がダイランの首根っこを掴んだ。

「お前がいなけりゃ俺がいたいけな天使をどうしても良いって言うんだな?」

「駄目だ!」

ダイランはそう言うとその場に座ってエスリカはキッチンに向ってつまみを作り始めた。

フィスターは歩いていると、背後から男に声を掛けられた。

「何やってる?」

デイズだ。

フィスターは耳を赤くして俯き、上目になって身構え肩を縮めた。

夜の闇はリーインに指しかかったジーンストリートを心底的に深くしていた。

デイズはダイランにバイクを返しに行くが、部下に行かせると絶対に何らかの仕掛けを施しかえってくる。仕方なく誰にも言わず持って来ていた。

デイズの跨るバイクを見てナンバーを見るとフィスターはびっくりした。

「盗難です。逮捕します」

そう言ってデイズの手首に手錠を掛けた。デイズは肩をすくめて手の間接を外し手錠をフィスターの手に放った。

「盗難なんてするガキじゃねえよ」

盗難です。

「どこに行くつもりだ?お嬢様がこんな夜中に」

「……」

フィスターはデイズを睨み見上げていたのをデイズが彼女の細い腕を引き寄せた。

「今からガルドの部屋に行くつもりだ。バートスクにでも用事があるんだろう。乗せて行ってやる。それとも24マーケットか?」

「あなたも警部の部屋に?」

「バイクを返しに行くだけだ。乗れよ」

「分かりました」

義務的にという様にフィスターはデイズの背後に跨って、デイズは無言で走らせて行った。

フィスターは闇を見つめつづけた。

「あなた、警部を諦めたの?」

「……。あいつはあんたも知っている通り裏の身分がある」

「……」

フィスターはそう言って来たデイズの背から頬を離すと、バイクはバートスクストリートに差し掛かった。

「絶対に渡さないわ。あなたには」

いきなりの事でデイズはバイクのバランスを戻し、戻し損ねて横転した。

若者の乗るオープンカー3台が彼等を豪速球で轢きそうになり、それがデイズ=デスタントだと知ると真っ青になってアヴァンゾン側へ逃げて行った。

二度と帰っては来ないだろう。

デイズは頭を押えて唸り地に倒れるフィスターを引き起こした。

「何するんだお前」

そう恐い顔で言ってフィスターは口をきゅっと結んだ。

そのまま無理やりにでも左折させたからだ。いきなり身を乗り出して、その先のエリッサ署にギャングボスを連行させるためだ。

「なんてどうしようもないお嬢さんだ。ガルドと同じだなお前は」

フィスターは唇を突き出し俯いて腕をさすった。

「傷だらけになって。俺があの野郎に睨まれる」

デイズはフィスターの擦った肘に布を当ててから、他は硬質で滑らかな金属に守られていた。彼女をしっかりバイクに跨らせる。

「女が無茶するなよ」

そう言うと髪を後ろに流しまとめてからギアを変えた。

フィスターは大人しく乗っていた。もう心臓はばくばく言っていた。恐れられるデスタントボスを相手に単独検挙しようとした自分の行動にだ。

マンションに着くと、のんだくれ103がでろんでろんになって地面で眠っていてフィスターは驚き駆けつけた。

「タルクさん?大丈夫ですか?」

「ありゃエンジェルが舞い降りたあ」

「え?いやだわエンジェルだなんて。後ろに悪魔ならい……」

「……」

デイズは闇を見ていたのを、白い目をしてフィスターの狭い背を見下ろした。

「ごほん、大丈夫ですか?タルクさん?」

デイズはやれやれと首を振って、103はそのまま気分良さそうにすやすや眠ってしまった。

アジェン地区は意外と舐められるほど地面が綺麗だ。リカーがデイズからどうにかエリッサ地区に加えて権利を死守した場だからだ。労働者階級地区とはいえ、塵一つなく廃棄物処理にも何に関してもリカーは小煩い。

元沼地だったために地価が安くて安給料のダイランもやっていけているようなものだった。今にこの地区も奪い取ってやる。デイズはそう思いながらも身を返して歩いていった。

101のドアが開いてダイランがフィスターを見た。

デイズに気づいて驚き彼女を引っ張りいれてドアをバタンッと閉めた。周辺市民が利用するダイラン防止ドアという代物は、ダイラン自身が締めると周りの壁が揺れる。

ガチャ

「なんで俺の後輩といた」

「迷子を保護しただけだ。じゃあな」

「え?飲んで行かれないんですか?」

「おいジェーン何考えて……」

デイズはフィスターに口端を上げ勝手に入って来たから101は瞬きして、自分の部屋だというのに一気に居心地が悪くなった。

101は諦めため息を吐き出すと首をしゃくって促した。

「何の用だ」

「お前にバイク持って来てやったのさ」

「マジかよてっきり盗ま、……。お前自身が盗んだって言えよ……」

「やっぱり!」

「借りただけだ」

デイズはベッドを背に寄りかかり片足を放って見回した。狭いが居心地のいい配色と趣味の良い家具だ。

「おいエース。この部屋幾らだ」

「何で」

「俺が買う」

「おいっ」

「202にでも移れよ」

「悪いなこの馬鹿はこういう性格なんだ。どうせ俺を部下に見張らせようって魂胆なんだろう。売るな101」

ダイランはフィスターに彼女の好きなジンとグレープフルーツジュースで弱い酒をつくってやりながらそう言い、振り返ると101が自分のソファー横にフィスターを座らせていたからカンカンに怒って頭を蹴り退かした。

101は悪態を突きながらも自分だけソファー下に座り、ダイランに酒を注文した。シェーカーに酒を注ぎクラッシュした氷を入れるとコンッと1度打ち付けシャカシャカと高速で振った。

「フィスター。こいつ、バーテンなんだぜ」

デイズは横目でフィスターに微笑み言い、フィスターは前方のデイズを見ると目をぱちぱちさせて小さく微笑んだ。

「気安く呼ぶな!」

デイズまでフィスター呼ばわりしたからダイランは激怒して戻って来てデイズの足をまたぎクッションにケツを乗せローテーブルに片腕を置いた。

「警部、バーテンダーだったんですか?」

「まさか。手伝いしていただけだ」

「ハイセントルにこいつの育ったバーがあってそこでシェーカー振ってたんだよな」

「10代の頃だ」

ダイランは背後の床に手をつき、サイドのベッドに背をつけるデイズに耳打ちした。デイズはダイランの顔を眉を潜め見た。

FBIが街を張っている情報を渡してきたダイランはどちらにしろおかしかった。自分の行動を制限させる為だろう。何かガルドが動こうとしているなら、逆に怪しくも情報を渡しては来ない。逆に自分に囮になれとダイランは目で言って来ている。

「もしかして、あっちの方面で動くのか?」

そう低く声を落として言い、それはZe−nとしてという事だ。ダイランは首を微かに傾げさせた。そんなものこいつの言葉など信用ならない。

きっと今のデスタント側の問題を探るつもりだろう。

フィスターは上目で2人を見て、グラスに口を付けていた。様子を窺うに、何だか上司に報告したほうが良さそうな関わりがあるのだろうかとたまに思う。

半年前も絶対にデイズ=デスタントが手引きをしてガルド警部は海外逃亡を果たしたと思われているのだから。

様子を黙認しつづける部長がFBIからのGメンだと言う事はフィスターは知らなかった。

「だから今もお前がここにいる事は分かってるって事なんだぜ」

「FBIなんかに何が出来る」

デイズがフィスターの視線に気づいて、ダイランは目を上げてフィスターを見た。デイズがローテーブルの所まで来るとフィスターの顔を見てから横のダイランの顔を見た。

「お前等結婚するのか?」

フィスターはデイズの言葉に真っ赤になって101は言った。

「ガルドが結婚?有り得ねえ。だが、期待しておけよフィスター。こいつ、お前には優しいんだぜ。元々地元じゃあ女とファックしまくりだったってのになあ」

「ななな、か、か、彼は女性にとても真面目で揺らぐ事無く仕事に生きる硬派で」

デイズも101も白い目をしてダイランを見て、ダイランはふふんという顔でグラスを傾けた。ダイランはスツールに腕を掛けてデイズを横目で見た。

今こいつはこうやってここで悠長にしているが、部下共が動いている筈だ。警察とFBIが張っているくらいじゃあこいつらの地下は動きを止めない。

こいつはあの蛇野郎を知っているのか?

どさっという音が聞こえ、ダイランが顔を向け101が振り返ると、ソファーでフィスターが酒で酔っ払い眠り倒れた。

ダイランは立ち上がり、ボリュームを下げると彼女の上にキングチーターの毛皮を掛けてやってから101を威嚇して離れさせた。

101は煙草を探って、残り1本になっていたからそれをくわえて立ち上がり、煙草を買いに部屋を出る。

「俺のバイク使えよ。あのドけちなエジプシャンに見つかる前に酒場に戻して来てくれ。それと、部屋の周りうろついてる人間覚えて来い」

「ああ」

101はキーをキャッチし出て行った。マンションオーナーは2台分の駐車を許さないからアジェン場末の酒場地帯にダイランはいつもバイクを隠し停めていた。

「おい。本気で警官なんかと関係持つつもりかよ。お前、自分の身分分かってんのか?闇でいずれ動かざるとも、レガントの人間だぜ」

「………」

「警官嫌いのリカーばあさんが許すかよ」

ダイランはソファーの開いたスペース、フィスターの足側に腰を降ろしていたのを斜め横のデイズを睨んだ。

「俺はガルドの人間だ。もしこいつと俺が結婚するとしてもガルドは変らねえ。俺は既に警察の人間だ」

背もたれに掛けている片腕を1度ハッと広げて話を反らそうとするデイズを見てから、フィスターを見下ろしてしっかりシーツを引き寄せた。

「こいつがディアンの野郎の黒豹といた。何が動いてる」

「さあ。兄貴のやる事は俺はしらねえよ」

むしろそんな事、彼自身が知りたい事だった。

「捜査協力、させてやる。お前も調べを徹底的にして俺に情報持って来な」

「デカなんかと手はくまねえ」

「知りたくねえのか?会社規模についてだ」

「ハッ、知りたがってるのはお前だろう。その女を気にしている傍から他の女追ってやがるんだからな」

デイズはRSを知らないようだ。だが今回の事にLOGASTARが関わっている事は分かっているという事。こいつが直々に関わったのか、横槍を入れられたのがLOGASTARと思っての事なのか。

「お前に言われなくても調べは付ける事だ。それ以上は何も言うつもりは無い。お前が俺に今お前が隠し持ってやがる情報を渡す気が無いっていうなら、考えもあるんだぜ」

そう言い、デイズは静かな目元で腕を掲げた。ダイランはフィスターに向けられた鈍く光るナイフとデイズの上目で鋭く見てくる目を睨んだ。

こいつは上目になるとディアンそっくりの顔になる。ディアンが下目で見下ろして来るとデイズそっくりの顔になった。

だが互いに滅多にディアンは上目で人の心理を覗っては長身を低いものにあわせる目線を変えないし、デイズは姿勢が良い長身から視線が下の人間を下目で見てくる目線を変えない。それも彼等自身の長年の性格と兄弟仲の関係に由来していた。

デイズは嫉妬深い。重々分かっている。昔からそうだ。こいつの近くにフィスターを置いておくことは絶対に危険だ。

「外に来い」

デイズは刃をくるんと仕舞うとダイランはデイズから顔を反らして何も言うつもりは無かった。




NO2 ROOM201


辺りに誰もいないと確認してから壁に囲われた階段を上がっていき、踊り場まで来ると蛍光灯の下、暗がりの壁にダイランは背を付けた。

蜘蛛の巣が天井と壁に貼っては巨大な蛾が蛍光灯の周りを飛んでいる。

デイズは踊り場上の階段に腰を降ろし、ダイランを睨み見上げた。

「警官なんかと結婚させねえ。レガントの地位をみすみす放棄するつもりか?今に俺に協力してばあさんから金を全て巻き上げて地主の地位を俺に差し出すつもりでいるんだろう」

「俺がレガントの人間としてばばあから金取ってお前は権利手にして、それで満足かよ。それだけの存在か俺は」

「ああそうだ。だから早くリカーから全てを奪えよレガントのジョーカー」

「……」

ダイランの壁を睨む鋭い横顔の口元が震えた。

「お前の立場は分かってる筈だぜ。お前はレガントから除外された存在。打ち捨てられたレガントの邪魔者だ。だがガルドとしてだけじゃあ俺はお前を捨てさせない。そんな犬のままで安々と終わらせる程馬鹿な話はねえからな。お前の闇の身分は既になくなるに等しい筈だ。じゃあ残された身分は何だよ。今のお前は何の価値も意味も無い存在に他ならねえ。さっさと全てを俺に用意しろよ」

デイズは立ち上がり俯くダイランのブロンドを見下ろした。

別に気分良いわけでも無い。

ダイランは暗い目元を上げデイズも見ずにその腕を肩でどついて階段を上がって行った。

「いつまで意地張ってこんな切り詰めた生活して行くつもりだよ。ハイセントルの俺の所に戻ってくるか、さっさとリカーばあさん脅迫してレガントでも手に入れるんだな」

「俺の勝手だどんな生活をしようが」

「貧しい地区に住んで」

「うるせえな」

そう睨んで201のドアのキーを回した。

「警官で有り続けてそれでそうだって言うんだよ」

「………」

ダイランは手を止めた。

「警部って地位貰って俺等捕まえて尚安月給で週末しか派手に遊べずに生活の糞にもならねえ暮らしして、恨みの元もなくなれば廃人みてえに詰まらねえ人生警官同士で送るつもりかよ。血はあがらえねえって物を突っぱねて点でお前はレガントに戻るつもりもねえ。行動FBIに見張られて闇も自由に行動できねえ。こんなに金無え分際でいずれあの女デカと結婚出来ると思ってやがるのか?お前等2人そりゃあ大した明るい未来じゃねえか。え?警部殿」

ダイランはキーホルダーを持つ握る拳を震わせて歯の奥を噛み締め視線の注がれるドアノブをきつく睨みつづけていた。

「俺はいつまでも待つつもりだ。お前が俺の前に再び姿を現すまでは」

ダイランは踊り場のデイズを見て、顔は見えなかった。

背後の空は徐々に夜の色が失われ始めてもいた。

ダイランは視線を落とし、ドアを背に視野に広がるアジェンを目を細め見渡した。闇霞みの向こうにバートスクは広がっているはずだが、この時刻は見えなかった。

「実際お前は今もしも職場を裏切ったとしても、お前自身には何の支障にもならないんだぜ。FBIからの目なんざ、事実お前にならかいくぐれる。呪縛やしがらみから逃れたいなら俺がまた幾らでも手引きする。次は二度と戻らない覚悟のつもりならな。お前の心が揺らいでるのは結局は道が決まっているからだ。ただ一つの道としてだ。闇に戻りたいってな」

こいつは幾らでもデスタント討伐熱を蘇らせる。署に戻るからだ。

絶対的な許さない正義の男、ハノス=カトマイヤーがダイランを正義にがんじがらめにし、恨みを蘇らせ続け警察組織にいつかせ悪へ戻らせる事を許さないからだ。激しい討伐熱を力と検挙率に変える彼の力を利用し尽くそうとするからだ。

「そのつもりはねえ。邪魔しないでくれ」

ドアを開け入って行こうとした。

「ハッああそうかよそこまで言うならそうしてろよ」

ダイランはデイズを睨んでそこまで行きデイズの肩をどついた。

「そんな言い方して俺に謝れよ」

「ああ悪かったなあまりにお前がお前を完全に捨てていたもんだからもうどうでも」

ダイランの何ともつかない顔を見て、口をつぐんだ。

「……悪かった。本当にすまない。今のお前を否定したかったわけじゃねえんだ。お前はお前でよくやってる事は分かってるつもりだ」

ダイランは何も言わずにいたのを、階段に影がつき始めていた。ダイランは背を向けて、その背は余りにもさびしそうだった。

「今の俺はそこまで憐れか?」

「………」

デイズには言えなかった。署内では変わり者と言われ市民からは嫌われ元仲間やそのハイセントルの人間からは負け犬呼ばわりされデスタントの人間からは死神と影で呼ばれている。元のグループの仲間を全て失ってレガントからも存在を拒否され居場所や味方を彼は完全に失い、独りで一匹狼の様に生きていた。

事実、哀れだったし余りにも惨めだった。どこからも嫌われ、本当の居場所をなくしていた。

元々誰からも可愛がられ続けた我が侭な寂しがりやだ。

何も、嫌われつづける事が辛く無いわけなんかじゃ無い……。

「お前、リーデルライゾンから離れればいいだけなんだぜ。お前を受け入れて可愛がろうって人間はリーデルライゾン外には溢れてる。いずれ、そうするつもりでお前がいる筈だと俺は思ってるぜ」

デイズは背を浮かせ、階段を降りていった。

ダイランはしばらく、背後を振り返りそのさっていく背を見ていた。

結局はぐらかしてきつづけたという事は、きっとマンモス街でのダイラン自身の持つ情報はデイズには既に不要だったという事だろう。

「………」

ダイランは自分が言われた事にショック過ぎてデイズから何も聞き出すことすら出来なかった事に、しばらく部屋に戻るとベッドにうつぶせ顔を覆って動けなかった。

全て、生きて来た全てを否定された感じだった。デイズに崩された過去も、ディアンに奪われた過去も、傷つきすぎて全てを崩した過去も、今の今までそれでも生にすがりついてきた全ても。リサと親父を失って、自分の全てを捨ててでも警察組織に感情を捧げつづけてきた全てを否定された。

それだけに捧げた全てを、貶された。

巨大な打撃だった。

全く動くことすら出来ずに、頭が何も完全に働かなくなっていた。

死にたくなった。

生きて来た物全て馬鹿にされて、生きて来た意味全て存在価値だった物毎デイズに足下にされて、真っ白になった。

この世の美しいものなど、飾るものなどもうどうでもいい……

生きていく事がこんなにも辛いだなんてここまで感じた事など無かった。

余りにも辛い。

死んでしまいたかった。

生きていたくなど無かった。

からっぽだった。

顔を険しくする機能も停止し、彼は表情も死んだまま余りにも生きているには不自然な空虚を見つめ続けていた。

停止した心で。

大きな目で。

乾こうとも……。

「警部?」

「…………」

フィスターはこんこんとドアをノックして、ドアが少し開いたままなのを、「失礼します」と言って顔を覗かせた。

「!」

フィスターは驚いて駆けつけた。

ダイランがなんだか、怖かったからだ。ベッドに倒れたまま、さっき30分前に見ていたというのにまるで別人の様に頬だとかが真っ白でやつれて思えた。

「ガルド警部?!」

まるで5キロくらい一気に痩せてしまったかの様で、フィスターはダイランを思い切り強く抱きしめた。

何故?何故なの?何があったの?何が警部に。心が空っぽになってしまって……

フィスターの淡い目からぽろぽろ涙がこぼれて、いつも熱い彼の体が冷たくて、いつも怒りの感情を激しくなって表してばかりいたダイランがダイランでなくなってしまった事を怖れた。

ダイランは彼女の背に手を伸ばし掛けて一気に安心したようにゆっくりと包括した。

「……フィス、」

抱き寄せて彼女の温かさに安堵して、ただただずっと抱きしめ続けていた。

頭はそれ以上は働かなかった。空虚で、頭の中は真っ白で微動だにする事すら出来なかった。

カチャ

「おいFB」

デイズは眉を潜めてダイランを睨んで背後からフィスターの腕を引いた。

ダイランは様子がおかしかった。

引き動かし、瞬きしてフィスターを振り返った。ヤバイ軽さだ。

「何かしたのか?」

「あなたが警部に何かしたんでしょう?彼、ショック受けてた。ディアンさんだって言っていたわ。あなた達双子が彼から全てを奪って今の彼を悪魔のような彼にしたんだって……、……あなたが、悪魔よ、」

デイズは向き直り立ち上がるとフィスターに向き直った瞬間だった。

フィスターは目を見開き口を押え、デイズは足を見下ろしてその場に崩れ座った。その背後からそのことで見えたダイランの、まるで起きたばかりの5歳児のような体勢と長い垂れ下がった前髪の間のぼうっとした目元に、表情も無い口元に、何も宿っていなかった。

拳銃をだらんと下げていた。まるで、おもちゃに見えた。

「警部!」

フィスターは駆けつけダイランから拳銃を奪ってからデイズを見下ろした。

彼は「糞、」と悪態を尽き膝の傷口を手で押えた。ダイランはそんな頭部と先の壁際の間を今にも眠る寸前のTVを見る子のようにぼうっと見ていた。

「大変、布を」

デイズは背後のダイランを睨み向き直ると思い切り手の甲で払ってベッドからフロアに転がった。

「だからさっさと俺の元に来いって言ってるんだろうが。いつまで強情貫いて俺を苛立たせるつもりだ。他の道は許さねえ」

フィスターはデイズの腕を引っ張った。

「駄目だわ。彼は今何言ったって分からないの。お願いだから刺激するようなこと言わないで。治療をしてさっさとここから出て行って」

そう諭すように言った。デイズは彼女の腕を払ってからバスルームへ消えて行った。

フィスターはダイランの倒れる横に駆けつけて頭を抱え撫でた。

「彼が強行を貫く人なら、考えだってあるんです警部。もうあなたを被害に合わせません」

あたしが彼と結婚してジェーン一族の身分を持たせればいいのよ。結婚枠に収めて彼を傾かせないように。最悪な場合を考えて、彼には故郷を離れてもらう事になるとして、リーデルライゾンからあたし達の地元のマイアミに越すことも出来る。そうやって堅気になれば警部は警察官同士からも怪しまれない。

フィスターは彼の硬い頬にキスをして、頬に柔らかい頬をつけた。

ダイランがそれで感情が目を覚まし、確かにさっきまで情景は目に入っていたのだが、頭はどうも全ての入ってくる言葉を処理しなかった。

それを、大きな目をばちばちさせて視野の部屋の白の壁と間近のラブフィスターの顔半分を見ると、

「うおおおっ!!!」

ダイランは大驚きして一気に体が熱くなって顔色が戻った。

「警部!」

フィスターは生き返ったダイランに大喜びして彼を見上げた。しかも顔もいつも通りのまるで恐ろしい鬼のような顔だ。

ダイランは地獄耳で何かの音を聞きつけてザッと背後を振り向き見た。あれは水が激しく流れる音だ。エスリカの糞ッ垂れか。

ダイランは一気に駆けつバスルームを開けると、デイズの馬鹿垂れが湯をジャンジャン出しっぱなしでしかもボディーソープのポンプも空にしてブックンブックンの湯船に漬かっていたからダイランはカンッカンに怒って湯を止めてデイズの頭をぶっ叩いた。

「無駄遣いするんじゃねえ!!!」

「ああ?湯に浸かってるだけじゃねえか!」

「エースの部屋で入れ!!」

風呂場から蹴り出し、人の治療セットを勝手に使ったらしい長い足を蹴散らした。ダイランはバタンとドアを閉ざして光熱費も減った暮れも無い熱々の湯に自分が浸かって背後を睨んだ。

デイズは怒って髪をかきあげ振り返って歯ブラシを探し当ててパッケージを捨ててチューブから怒って握ったらニュオッと全部出てしまった。デイズはあのドケチダイランがまた切れるのを焦って手で指で排水口の中に流し込んで買い置きをバレない様に開けて、使っていないのでは不信がられるので使ってあった分だけを出して5分の3流しブラシにも付けて口を洗ってブラシをゴミ箱に捨てた。いつもダイランが気に入ってそれだけとんでもなく高価な物を使い続けているロイヤルゼリーモイスチャーソープで顔を洗って泡を湯で立てたので半分の大きさになってしまったがまあ気づかないだろ……ドカッ

金粉も入ったそのソープが飛んでいき、床に突き刺さった。

さっきからその様子を腕を組みずっと見ていたダイランはデイズの背を蹴ってデイズは額でバリンッとミラーを割ったのだった。

「何しやがる……」

デイズは傷の着かなかった額を押えて俯いた。

「野郎のくせに女みてえにケチケチしやがって、お前それでも23かよ」

「お前はB型だから金に悶着ねえんだろうがA型の俺は金の使い方が計画的で律儀なんだよ」

「ただのドケチってだけじゃねえか」

「お前もやる事が往生際悪いんだよっ!」

歯ブラシ粉の詰まった真っ白の排水口は見られるものでは無く、、白い陶器の蓋がはまっているようだった。

「いいな。お前鏡屋に連絡して修理しとけよ。金はお前持ちだからな!」

そう言い髪を拭きながら歩いていった。

フィスターは勝手に冷蔵庫の中の物で調理をして調理用では無い飲料ミネラルウォーター2リットル分全てを鍋に注いでしまって米を強火で炊いてしまっていたから、もうダイランはがっくりうな垂れて怒る気も失せたのだった。

「あ!警部!今、ご飯を炊いているんです!」

そう笑顔で上半身を振り向かせ、ダイランは瞬きして1度頷くと踵を返してクロセットを開け、今のスラックスとシャツにネクタイを引っ掛けた。

心臓が落ち着かない。フィスターがキッチンに立って、まるで妻の様に鼻歌を歌い400グラムの肉をぶつ切りにし調理しているのだ。

ダイランはちらりと横目でフィスターの背を見ると、咳払いして髪をワックスで流した。

「?警部は今日出勤されるんですか?遣り残した仕事が?」

「え?」

「警部も今日非番です」

ダイランは瞬きしてドア横まで行き、壁の受話器を手に取った。いつも早めに来ているソーヨーラが出た。

「え?何言ってるのよ。今日は第2週目でしょ?あたし達処理B班の日でしょう?」

「………」

ダイランは受話器を置いて、舌をぺろっと出した。フィスターはくすくす笑ってから手を拭いた。

「2人分の朝食を作っておいたので、どうぞお食べくださいね。ご飯はもう少し掛かるかしら」

彼女はそう言うと、ドアの方に向って行った。

「送って行くから車に乗れよ」

外は薄く光が空の色を朝にし始めていた。

そう言い下に促し、デイズに「他の備品もしっかり買っておけよ!」と声を掛けてから階段を降りた。バイクは101がアジェン酒場地区に持っていき消えていた。今頃ゆっくり距離を歩き帰ってきているだろう。

灰色の空気の中、朝の鳥鳥達がせわしなく走って行く。

リーイン地区とエケノの間際のジーンストリート沿いにある警察官寮に到着するとダイランはフィスターに礼をされ、彼女は豪華な木を彫りこんだ扉を開け入って行った。

しばらくして、車両は再び走らせて行く。

FBIの目は今は見当たらない。ギャング連中は身を潜め朝の空気に紛れている。

ダイランは曲を掛け、朝の中をボリュームを下げたパワフルなジャズが駆け巡った。極々小さくだ。

朝は全ての時間が死んでいた。

世界が動き生まれ始めるものが朝だという物を。

光がそれらをスペクタクルに伝えてこようとする時刻という物を、唯一の全てが停止した時間帯のように.

フィスターを寮に送り届けてからダイランは部屋に戻った。デイズがミラーを粉々にしているという謎の行動を見て彼を見下ろした。

「さっきエスリカが顔を出してボディーソープをおいていった。何で戻って来た?」

「今日は非番だ」

デイズは相槌を打つとケツポケットから黒の動物製の財布をダイランに持たせた。

「宿泊代だ」

「な、」

ダイランは馬鹿にされて目を見開いてデイズを見上げてそれを放り投げた。

「ふざけるなよ」

「やっぱりこんなに金も無いってのにあの女といずれ結婚したいと思ってるのか」

「フィスターは関係ねえ!」

デイズは元々金銭感覚が昔からおかしい。ダイランは苛立ってデイズを睨んだ。デイズといると自分が憐れで仕方なかった。

「お前になんかもうメシやらねえか……」

ダイランは鍋を開けると、瞬きしてしばらく停まらなかった。

「ああ、エースと食っておいた。あの女2人分しか作らなかったぞ」

ダイランは腹をさすってから向き直って普段着に着替えた。もう喋る気力もなかった。

「兄貴はマンモス街に顔を見せたのか?」

「さあ。お前等が揃って何を企んでるか知らないが、毒で眠らされていたうちに何かしたのは確かだ。お前等、手を組んでいたってのか?どれだけ俺を馬鹿にするつもりだ。不仲は振りだったのかよ」

「いいや?」

ダイランはデイズを睨んで踵を返し、部屋を出た。

「おい。ハイセントルまで送っていけ」

そう助手席に乗り込んだがダイランはシカトしていた。だからそのままバートスクから大通りに出てもベッドタウンの西側に向わずに南下して行き、大通りの突き当たりの24Hマーケットを右折し隣町へ向って行った。

「何処に行くつもりだ」

「NY」

「ビットはまだいる筈だ」

「何で知ってる」

「当然だ」

デイズは背後に1度視線をくれると、向き直った。部下の車両じゃあない。

「おい。妙な車が付けてきてるぞ」

「……。そうだな。FBIかマンモス街の奴等だろう」

「大体お前、何でマンモス街に向った?」

「別に。女の機嫌直しだ」

いきなりその車両は激しくダイランのオーズッドを呷って来ようとしたから丘にさしかかったのをダイランはドリフトし、車を離させ一気に加速した。

全スモークのその車両は発砲してきてデイズはダイランを見て、ダイランは舌を打ち4輪駆動にした車両はバックで後輪を思い切り上げて相手の車を思い切り下敷きにしてバウンドし、そのまま走り去って行った。

「お前を狙ってるんじゃねえのかよ」

デイズを睨んでから大破した車から彼は前に向き直った。

「お前、俺達の事に介入したらしいじゃねえか。デカが横槍入れてくるんじゃねえよ」

「今の身分で何が出来るっていうんだ」

「個人の行動は自由で完全制限できない。FBIがお前を張っていてもな。だがお前には協力するって頭は無いんだろう」

ダイランはデイズを横目で一瞥してから鼻を鳴らした。

「お前がフィフティーフィフティーで情報を渡してくる人間じゃあねえからだ」

車両は隣街に差し掛かり、空港へ向って行くが、他の追手はどうやらいないらしかった。





NO3 ゼグ・ネオ


「FBIに狙われていてよく行動に移そうとしてるじゃねえか」

ダイランは言葉にシカトしてエントランスを歩いていった。

チケットを買い、デイズにも渡した。

「何で俺まで」

「知らねえよ」

ダイランは歩いていきデイズはFBIの人間だろう者が周りで2人様子を窺っている中をダイランが歩いていくのを、首を振り後に続いた。気づいていないのだろう。

部下達に動きを止めさせてある中、カルゾラも消した今リーデルライゾンにいても警官がただ煩いだけだ。ガイも逃げディアンも見つからないとなれば、他ギャングの虫共が様子を窺い身を潜めている今、動けない。

だが、ガルドは今動くべきでは無い。闇が停止し、警察組織が大きく網を張っていると言う事は、仲間内の警官ダイランも大きく見張られそのFBIに逐一情報が行っているというものを。敏感な程にだ。

飛行機に乗り込むとダイランはサングラスを掛けて睡眠を取った。デイズは2列離れたダイランの座る座席背後を1度見てから向き直った。

A伝いという事は身分あっての事のはず。昨日の内から奴等は見晴らせてあった。

3時間後NY上空に差し掛かると彼らは降り立った。

また嫌な夢を見たせいでデイズは顔色が悪かった。元々こいつらユダヤンは肌が自棄に白い。アメフトをやっていた時期ならまだしも。逆にバイクで広野を走らせてばかりのディアンは健康的だった。

一瞬のみ、ぐるりと視線だけが薬を探したが、すぐに頭を振ると通常のデイズに戻った。

ダイランは肩眉を上げてから様子をじっくり窺いはじめる。デイズはいつも通り毅然としているが、目元も落ち着いた中をゆっくりとした瞬きだけが時間の流れが違った。きっと疲労を感じている筈だ。

デイズは振り返ってタクシーに乗り込もうとしたダイランを停めた。

「邪魔するつもりか?」

「今の時期動こう何て大胆すぎるんじゃねえのか?」

「俺はお前じゃ無い」

「今は動くべきじゃねえ。みすみすあやしまれに行くつもりか?とやかく言われるのはお前なんだぜ。よく考えてから選べよ。きっとあいつ等から降りてきた山だろう。今のお前に。怪しい話だ。それで奴等はNYを離れてる。何をやらせようって言うんだ?お前固体で」

ダイランはサングラスの下の目で窓の外を見ていたのを息をついてデイズを見た。デイズはいつも慎重派だ。

「ああ分かった。やめればいいんだろう。だが引き受けた俺の面子がつぶれることになる。今の俺の状況のきつい中をな」

「そんなに弱気をさらけ出すな」

「ふん」

「俺が付き人だからって安易に物考えるなよ」

タクシーはダイランの言った屋敷前で停まった。

ホールから貴婦人と屋敷主が出てきてダイランを見て喜んで招き入れ、ユダヤの男を見ると3人の息子達を下げさせた。

何故ここにギャングのボスが?ゼグ・ネオは数年姿を表さないと思ったら、特定のギャングに専属的に様々な仕事を卸してZe−nと契約を結ばせていた様だった。

彼が消えた辺りからデスタントファミリーは名を知られ始めたのだから。今では勢力を留まる事無くアメリカの極北から徐々に南下してきている。その裏立てをZe−nがしてくれていたとなったならそれも凄い勢いなわけだ。

確かにZe−nはデスタントに様々なものを裏から用意してやったのは確かだった。だがそれは、一部の権利、リーデルライゾンのみなと市場の権利を渡してやっただけだった。かなり間接的にだ。Ze−n名は知られていなく、その時代闇市場のブラックシープとだけ港で言われていた。

デスタントは独自で躍進を続けているのだ。

3人の息子達はダイランを見て笑顔で走って来た。

「おうお前等。でかくなったじゃねえか」

「でかくなったでしょ〜」

「あの兄さんはピエロだからな」

3人はデイズの所は目をきらりとさせてデイズにけりに掛かったから母親は真っ青になってダイランを見た。別にデイズは子供に何もしない人間だ。ダイランは肩をすくめておいた。

デイズは子供嫌いだからダイランを呪って子供を無視してキャビネット横のテーブルに腰をつけた。走ってこようとした子供達も無視していた。

「おい。3人を子守りしてろ」

デイズは溜息をつき、2人を肩に座らせ一人を脇に抱えて歩いていった。3人は大喜びして「サーカスサーカス!」と言った。

「おいピエロ。誘拐するなよ」

「してどうする」

背は消えて行った。意外にデイズ=デスタントは若い男だった。まさか、まだ20代前半なのではないだろうか。

デイズはボスらしく振舞うことを嫌っているからプライベートでは無口だし、格好もいつもラフだった。だがその見かけに騙されると何時の間にか全てを失っている。

母親は気が気じゃない風でダイランを見た。

「人質に取るつもり?悪い話じゃ無いわよ」

「分かってる。あいつにはここにいてもらったらどちらにしろお前等も都合悪いんだろう。ただ、下手すればあいつが手を下すだけだ」

「変らないわね」

「さあ。話をはじめようか」

「ようやく腰を上げてくれて良かった。待っていたよ」

「何も言わずに留守にしていて悪かったな」

ダイランがそう言うと男は強く微笑み手を組んだ。彼がまさか警官だと言う事はNYでは知られていないことだ。仕事がやりやすいし、自由な昔通りの情報が流れて来る。わりと網に引っかかる情報は多いものだ。

ゼグ・ネオの仕事内容は幾つか手順が決まっていて、自らが仕事を仕入れに行く場合と、こうやって金のある権力者がオーナーになり特定の仕事を渡している場合。そしてZe−nから持って来た仕事を紹介し進行を手助けする場合だ。他は他ギャング絡みで仕事を調達する。

そうやってどんあ仕事でも自分で情報を掴んで全状況を把握する事に役立てた。市場を動かし易くもあり、Ze−nファミリーも起動し易く直接その場から手を下せ、人員も最低限で済み、無駄にZe−nの名も知られずに済む。

だからダイラン=ガルドとしてもゼグ・ネオとしても動き易くなる。

Ze−nは姿を見せない事で闇で蠢くことで、各国都市で高級品の物資関係、ギャンブル、市場金融、武器密売、他ギャングとの提携などの幅一位分野で部下達を動かしている。

「Aから聞いていると思うが、君には中立てしてもらいたい仕事紹介がある。今、A達に取り組んでもらっている事だ。C−6だが」

ゼグ・ネオはアングラの何でも屋もやっている。

C−6は美術館から美術館への搬送を狙ってくる不届き者共に加わり、美術館館長が提携を結ぶギャングから物資を奪い、闇にそれらを流してオークションを開くまでの仕事だ。

その向う街への美術館へ輸送させるまでにゼグ・ネオがNYの美術館からの輸送を仲間達と狙い、向う街のA達が美術館で裏から既に控えさせている物資の紛い品を調達させた後に合同し、他のアングラの街でオークションに掛ける。

「OK」

ダイランはそう言い、屋敷主人は微笑んでから友人である美術館オーナーに連絡を入れた。そのオーナーは彼等に騙された形になる。





NO4 殺し屋


デイズは3人を黙らせるために風船とソフトクリームを与えた。

彼らは風船をバンバンに踏み割ってはソフトクリームをもういらないと言いデイズはそれをセントラルパークのゴミ箱に捨てた。

サングラスの下の目で、案の定FBIの追手の中の1人が近くをうろついているのを無視していた。

3人もろとも脇に抱えてきゃっきゅ3人がはしゃぐのをつれて行った。

デイズは今真っ当にお守りをしているだけだった。

バスに乗り込むとポニーだとかが放し飼いにされている場所で3人をあそばせて彼は芝生に寝転がっていた。

「相変わらずラフね」

「……」

デイズは片目を開けてその女を見てから半身を起こした。

「ああ」

きっとエジプトからお忍びで来たのだろう。彼女は水のような指でサングラスを1度下げると微笑んで彼の横に腰を降ろした。

彼女の視線の先ではポニーに乗った女の子が若い連れ合いの女に微笑んで会話をしていた。

ザリだ。

半年前にはじめて会った。

「割合、目の辺りが貴方に似て来たでしょう?」

「そうだな」

眩しい太陽の光に虹彩が金色掛かる焦げ茶の瞳は鋭く、利己うそうな子だ。

「きっと、美しい子に育つわよ」

「そうだろうな。あんたにも似ているから」

「ありがとう。貴方。それで、あの子達は貴方の子?」

「いいや。お守りをしているだけだ」

王女は彼との断られた婚姻を世間体もあり、6年間外させなかった。1年前に正式な離婚をすると王女は父の決めた他国の王子と婚姻を結んでいた。

「すぐに貴方だって、分かったわ。こんな所にいるなんて驚いたけれど、今のお昼と6人で共にしない?レストランに予約を取ってあるの」

「いいのか?」

「大丈夫。支障は無いわよ。それとも、あなた側が今の身分上都合が悪いのならもっと囲まれた隠れ場所にも行けるけれど」

「そうしてくれたほうが良い」

「分かったわ。貴方」

そう艶の様に微笑むとボディーガードに目配せした。

デイズは3人を呼んで来させると、3人は綺麗な女の子を見て同様に頬を赤くした。

娘は自分の本当の父親を母親から知らされているが、今の新しい父親の事を何も不満も言わずに受け入れている。

「こんにちは」

ザリはデイズに微笑み、デイズも「ああ。元気そうだな」と言った瞬間3人の男の子達が大喜びしてデイズに知り合いなのかを聞いた。

だがザリは自分の父親である事は言わずに、微笑んだ。

「そうなの」

そう言うと、3人は嬉しそうに共にシルバーのリムジンに乗り込んだ。

アラベスクな唐草模様を配してアカンサスな葉が蛇に囲まれたエンブレムの車体は滑るように進んだ。

シャンデリアは揺れる事無く停車し、共に、まるでセットの様に太陽の光を受け、デイズはそちらを見た。

全プラチナ製の大型バイクが横付けされたのだ。

「………」

黒の上下シャツとパンツの男が黒のメットを外して頭を振り、サングラス越しにリムジンを見た。

白い肌は、まるで切り抜きの様だ。デイズは目を細め、そのプラチナが太陽でバイクと男の金属の様に銀色の髪を射した。

デイズは目を険しくし腰から銃を抜き王女を暗殺し様とした男に向け合った。

一瞬男の銀色の瞳が険しく光り、デイズを鋭い目で睨み見据えると、そのまま急激にバイクを走らせた。

殺し屋だ。

デイズはドアを開け走って行ったから王女とボディーガードはそちらをザッと見た。

デイズは信じられない脚力でバイクの男の背肩を掴み勢い良くその背後に飛び乗って、男は銃床でデイズを殴りつけたがデイズは背後からアクセルを全開にしてトレーラーに突っ込ませようとした。

男がスピンさせそのまま振り落とそうにも落ちずに舌を打って、背後からはボディーガードが発砲してくるのを走らせる。

パークに来てデイズは手を座席につけ男の背後から背を蹴りつけバイクから叩き落した。2人は芝生に転がって男はサングラスを飛ばしてバウンドしたのを歯を剥きデイズを鋭く睨んで起き上がった。

デイズは胸倉を掴み、男は顎をついと上げでデイズを見下ろし、手をバッと邪険に振り払ってから髪をさらっと流した。

デイズは眉を潜めてその男を見た。

あの女に似ている。

マザーコンピュータを破壊した女にまるで双子の様に似ている。

だが男は紛れも無い男でしか無く、オーラも雰囲気も異なった。

立ち姿は悠然とし、野生的に鋭凛としている。

顔は悪魔の様に整い美しいが、鋭く険しい。

「お前、何者だ。俺の邪魔をする者は全て消えてもらう」

男はきつい声音でそう言い、冷たい声は全ての物を跳ね返し引き寄る隙を与えなかった。

「お前は……、あーあ。見覚えがあるぞ」

男は思い当たって顎をしゃくり口元を微笑ませると顎を引いた。また下げた長い両腕は動きが雅でもあった。

ターゲットの元旦那だ。共に片割れが張っている街のギャングボスだと気づく。

互いにこんな昼時の芝生が似合わない風は同じだった。片方は闇の心底に生き、片方は闇と黄金の交差する中を暗躍しているのだから。

エジプトの一つの血筋の王族配分調整のために女王は消去する内に入っているが、離婚したデイズ=グラン=デスタントはターゲットかた外されている。

既に新しい旦那の暗殺は済んでいた。

次期後継者を正しく製造させ、現在政界の動向を変え操作する役目が彼、Silver Wolfにはあった。

これから王女と娘を始末しおえた後の政界の人間共との会合を控え、不祥事の生じる国への調整に回る。

王女の母親であった某国女王は7ヶ月前に自殺に追い込ませ、彼女が他国の王達と関係を持ち子供をその国へ送り影から国王達を脅迫し実権を握っていた元手は既に死んでいた。社交で情報を集め、消す領分、残す領分のリストは徐々に消去の方向をゼロに等しくさせていた。

デイズは背を伸ばし、同じ高さの背の男を見て怪訝そうに上から下まで見回した。

男は小さな頭を傾けることでさらっと髪を流すと他所からデイズを鋭く見据えた。

「……。お前等、双子か?」

「ハッ、お前等が双子だろう」

男はそう、冷めた声音で返しそこまでもあの女との関係を別人と無関係にした。

ディアン=デスタントからはデイズに関する賭けを持ちかけられている。

Silver Wolfは面白そうに口端を上げた。

デイズは1度声に振り向き男から視線を外し、一瞬を置いて振り返って眉を潜めた。

辺りを見回し、男もあの全プラチナのバイクも消えていた。

「糞、逃げ足の速い野郎だ……」

あの女はLOGASTARとかいう、ダイランが探っている会社との関わりがありそうだった。あの男もか?

王女のボディーガードが走ってきてデイズを見た。

王女の所へ戻り、無事を確かめた。

王女と娘を殺す事は国王達の意思で決められた内に入っている。


男は黒のジェットにバイク毎乗り入れ、バイクの故障を一通りザッと見回すと菜種油が原料のガスタンクと黒のタイヤを外した。後から洗浄機に掛け、純正プラチナの池へ突っ込み溶かせば良い。

本部司令塔から小うるさく連絡が入るのを悪態を突きイヤホンをもぎ取った。

ジェット本体からも入って来る。

「有り得ない失態をあなたがまさか、引き起こされるとは」

「うるせえ無駄口叩いてんじゃねえ。てめえのその面に次回のエステ毒擦り込めさせるぞ」

「上、等、です」

ガチッ

男は悪態を着き耳を痛めたのを通信機を叩き消した。





NO4 追跡


ダイランは仲間達を確認すると、ワゴンの背後に乗り込んだ。

「ようゼグ。お前、この数年どこと契約結んでた?Aはお前の消息を一切言ってこなかったんだぜ」

「ボスはどう言ってる」

ボスというのはゼグ・ネオの上にいる姿も見せず指令を下すZe−nの事だ。

「今まで行動停められていただけだ。他の国で下手やらかしたからな」

「だが、お前はアメリカ内の手引き人の筈だっただろう。そんなに人員が少ないのか?どうやら他国の幾つかのしまをFBIに邪魔されたらしいな」

「その処理に向わされて俺をとことん使い切ろうって魂胆なのさ。姿無きあの野郎はな」

「お前も大変だな」

ダイランは肩をすくめさせると煙草に火を着けドライバーに言った。

「輸送車のトレーラーの色は。どこの車名だ」

「VOLVOだ。銀のトレーラー引っ張って黒の頭の。ナンバーはこれだ。16:30に美術館から運び込まれて17時にはポイント地点に到着する。そこを狙う」

ワゴンはそのポイント地点までを走らせて行った。

「今A達がいるZe−nのクラブ島がそこの地元ギャングに奪われたって話は聞いたか?Aに会って来たんだろう」

「ああ。ボスは気が立ってた。半年間はそのせいもあってアメリカから退いてたのを俺もくっついていったが、どうも蝿がうるせえ」

「俺達で手を回させるぜ。FBIなんかにたかられてたんじゃあ俺等もやりずらいからな」

「悪いな。お前等にも支障きたさせて」

「なに。この商売だぜ」

「ハッちげえねえ」

ダイランは寝転がり、FBIの人間が一人車で追ってきているのを視野から外して適当にドライバーに張らせた。横の男もスモーク越しにそのセダンにせせら笑って首をやれやれ振った。

FBIの人間の車両はスピードを上げたダイランの乗るワゴンを追いかけ、急激に曲がったのを彼もハンドルを切った。

「!」

FBIは目を一瞬見開き、リムジンに激しく横から突っ込んだ。

ダイランは激しい音に目を開き、横の男が「あーあぁ」と言ったのを1度見える範囲でシルバーのリムジンに突っ込んだ車両を見ると、また目を閉じてから起き上がった。窓をスライドさせ、デイズが同じように窓をスライドさせたのを目が合った。

ダイランは意地悪そうに目を細め、デイズは彼を見据えてワゴンが走り去って行ったのを顔を戻した。

車両の中の男は野次馬達に引き出されたが息は絶え絶えだった。

女王は子供達を抱きかかえてボディーガードが辺りを見回してから男の胸元を探った。

「FBIの人間です」

「困ったわね……。救急車を早く呼んでちょうだい。ねえ貴方。貴方はこの子達を連れてここから離れて」

共にいる事を女王が知られる事があってはまずかった。スキャンダルにされる。

デイズは頷くと、3人とザリ、付きの女を連れてその場から離れて行った。

ガルドの奴、と心の中で罵り、ケツポケットのディスクが割れていない事を手で探ってから歩き出す。

「ねえ。ママはどうなるの?」

警察が周りをうろつけば不用意にさっきのような殺し屋も手をつけられないだろう。

「大丈夫だ。とにかく黙って歩け」

「はい」

「ふああん!ママの所に帰りたい!」

男の子達は泣き叫んでデイズはその泣く2人を抱き上げて足早に歩いて行った。タクシーに乗り込むとワゴンを一瞬探すが、既に無い。デイズ達を付けていたFBIは現場から急いで去って行ったタクシーを追ったが、巻かれてしまった。

上司に連絡を入れるとハノスは溜息をついてFBI長官に連絡を入れた。

まさかFBIがエジプトの王族のリムジンに突っ込んで行ったなど、問題を起こされて目を回した。

先ほど昼にマンモス街の警察本部から連絡が来て、おたくの所の市警が関わってギャングのカルゾラが大きな痛手を負った事をエリッサ署長に渡されてハノスのところにも降りてきていた。

そういう事でダイランがマンモス街にいた事がしられてしまった。今その処理で手一杯らしく、問題児のダイランに一切捜査に関わらせないでくれと謹慎処分を言い渡すように言い切った。

そう言われずとも、ダイランは今NYに行っているのだから。情報に寄るとまたデイズ=デスタントと行動していると言うから、こちらが仲間を奪った先で懲りずに暗躍し様と目論んでいるのだろう。全く証拠も掴めないから何食わぬ顔で署に帰って来てもダイランは平然としているのだから困る。

それでしっかりデスタントファミリーの弱みをいくつか携えて帰ってくるのだから。

ワゴンは道を走らせて行き、武器やマシンガンの調整に入っていた。すばやくばらし組替えて弾を充填して行く。





NO5 双子


片割れから連絡を受けたSWは彼女がデズタント根城から今ルート改正案のディスクを持ったまま行動しているデイズ=デスタントの事を聞き、自分にさえあきれ返った。

「どうしよう、どうしよう兄貴」

「馬鹿が。俺は一時NYから離れるからお前が奪い取ってガイに渡せよ。俺はもう奴の前には出られない」

「何でよ」

「しくじったからだよ」

「うっそ信じられなーい」

「いいから言う通りにしろ」

「分かったわよ。たまにはあんたの尻拭い位あたしがしてあげる」

「俺達の情報下手に掴ませるなよ」

「OK。楽勝よ」

彼女は通信を切るとガイには知らせずにディスクを奪ったらそのまま上司に連絡を寄越すことにした。NYでのSWの仕事でそのままディスクの情報を掴んで奪ったからあんたから言ってガイを帰らせるようにと。

彼女はモリモリさの欠片も無くSWがそれを聞き怒っていたモリモリ・モーミーというふざけきった仮名の変装をとくと、全純正プラチナのジェットにバイク毎乗り入れNYに向った。

髪をプラチナに戻して水色のカラーコンタクトを外すと水銀色の瞳が鈍く光る。

黒の皮パンに足を通し黒のシャツを痩身に着込むとブーツのベルトを締め操縦桿を握った。

顔つきを変え、どこから見てもあのSWそのままだ。

ロガスターの総司令官さえ、彼らが双子である事等知らない。うまく騙せていた。世界さえも。

彼女はネットワークを起動させ、今の世界の情勢を確認する。兄貴が行っている国政調整の仕事はあとはエジプトに置かれた女王と娘を残し、4名だ。

その女王の妹であった女も半年前のリーデルライゾン海上刑務所での暗殺を終えていた。ダイランが10代の頃に部下をしていた女の中の一人、ジャー=レムだ。

彼女はお気に入りダイランの情報を掴むためにネットを張った。

そして、FBIのプライベート情報をハックしハノス=カトマイヤーの線で彼がNYで行動している事を掴むと口元を引き上げた。

だが、鉢合わせないようにしなければ。

今の所、ハノスに様子をうかがわせておけばいいだろう。あまりMMの名で頻繁に通信を取り合うことは避けたほうが良い。4日前にも1度リーデルライゾンで問題を起こしたばかりだ。

だが、ダイランがロガスターの名を知っていて、デイズにも渡したという事は痛い事だ。上司のあの糞鬼に下手に知られる前にその尻尾を隠さなければ。





NO6  LOGASTAR


「LOGASTAR?あの悪漢の砦って言われる会社か?」

「ああ。情報集めてるんだが」

ダイランはウィスキーを瓶毎流し込み喉を焼くとポイント地点でトレーラーを待っていた。

「あそこの奴等は情報を渡してきたがらねえよ」

「蛇の男はしらねえか。目がまるでそれみれえな野郎だ。右手から腕ろ肩に掛かって左手まで不気味な大蛇の刺青入れてやがる男なんだが」

「……。臣倉凱の事か?タトゥーコンベンションやバイクイベントにもよく顔を出すそこのメンバーだって話だ」

「なんだと?女は」

「さあ。どんな女だ」

「4年前はチビだった。猫みてえな顔で、緩いウェーブのボブだ。deaht starとか言う名で名乗った」

「聞かないな」

「イベントでの奴の行動は」

「よく仕事を持ち掛けて来た」

「ディアン=デスタントって男、お前等知ってるか」

「……」

2人は黙り込み、ダイランの顔を見た。

「関わりがあるんだな?」

「おいゼグ?何探ってる」

「ボスがうざがってるんだよ。LOGASTARの存在もそこの人間と見られる蛇野郎の事もな。デスタントは関わりがあるのか?」

「イベントで臣倉凱に話をよく持ち掛け合って情報交換しているが、奴も悪漢の砦に加わってるのか?」

「わからねえ。情報が流れてくる」

ダイランはブチギレそうになった。もしもディアンが本気で例のLOGASTARに加わっているとなると、もしかしたら本気でデイズの野郎とダイランを陥れようとしているという事だ。

もしかしたら、蛇野郎とマンモス街に手引きしていたのもディアンかもしれない。

デイズは何も言って来なかった。

夕暮れ時、闇から悪魔でも光臨してきそうな夕陽が辺りを紅に染め尽くした。

ダイランは煙草を吐き捨て、共に3人ともワゴンから降り立った。

トレーラーが砂塵を巻き上げ遠くから走ってくる。

闇に紛れて黒のワゴンは夕陽の陰に隠れ、壮大な天は闇色の雲を抱き包んで、悪魔の心臓のような陽はまるで不動にも思えてもがき苦しんでいるかの様にもみえた。

ダイランは機関銃の頭で2人を誘導し、一気に走って行った。

トレーラーは急激に止まり、昼同様何かに突っ込まれそうになったがプラチナのバイクではなかった。

その姿を確認する瞬間、ドライバーの頭は吹っ飛んで夕陽の赤に血の赤が舞った。

ワゴンドライバーは男を蹴り落とし運転席に乗り込むとダイランと共に2人で荷台へ走り、中の様子を窺いながら頷き合ってあける。

荷台から5人の美術館提携ギャングが2人にライフル銃の銃口を向け、ダイランは3人を撃ち殺して美術品に彼らは吹っ飛び油絵に血と肉片が飛び散った。

2人が飛び降りダイランの仲間の男を銃の筒で蹴散らしダイランに銃口を向けた瞬間彼の長い足が飛び男は天に発砲しながら飛び倒れ、もう一人の頭をワゴンドライバーが背後から撃ちぬいた。

死体を捨てて気絶する男を引き上げるとダイランは扉を閉め、ドライバーは運転席に飛び乗って走らせて行った。

死体を砂塵が汚していき、夕陽の中を行く。

ダイランは血液を油絵から除去する弱い薬品のスプレーを布に染み込ませると注意深く表面上の血液を取り除いてく。

男は唸り目を覚ますと頭を振った。ダイランはそちらを1度見てから向き直って美術品の鑑定に入っていた。計算していき、オークションでの出品額を算出していく。目覚めた男に酒瓶をなげ渡し、彼はそれを飲み下し頭をはっきりさせると立ち上がった。

向こう街で控えているA達に強奪を成功させた連絡を渡すとA達はトレーラーのナンバープレートを変えさせて時間を確認しながらその時期を待った。

向こう街への到着時間を待つ。

ダイラン達は他のポイントで荷台の中の物資を他の輸送車に運び込むと、次の街へオークションの為に向う。

LOGASTARはどちらにしろ、Ze−nには関わって来る事は無い。動き的に全く内容が異なるからだろう。事実そうでもあるが、ロガスター最高司令官はダイラン=ガブリエル=ガルドに目を付けつづけている事に変りは無い。

闇を行く輸送車の中でダイランは美術品の算出を終えるとその場に座った。

一つの仕事を終えるごとに再びZe−nの新規の金庫に金が入って来る。

ハノスに崩させはしない。

「ディアン=デスタントを張っていてくれねえか」

「OK。だが、あの男は用心深い。ただのハスラーとも思えねえ。関わりがあるとも思えないんだぜ」

「へえ。LOGASTARってのは基本的に暗殺請負会社だって聞くが、本拠地はどこなんだ?」

「メンバー以外知らない筈だ。俺も前誘われて介入し様と思ったんだが、2回目の仕事でヘマやらかしてその術を絶たれた。お前自身なら出来ると思うぜ。お前は腕も立つし情報も多く持っていてメンバー同士での交換も上手く行くだろうからな」

今の身分じゃあ無理だ。警察に根を置き、FBIに目をつけられている中こうやって行動するにも支障をきたしているのだから。

ダイランは相槌を打っておいてサングラスを嵌め目を閉じた。曲は馬鹿みたいにカントリーが掛かり、のんびりした様子で輸送車は疾走して行く。

「会場に到着したら知らせてくれ」

「OK」

その頃にはNYと向こう街からの中間地点のオークションの街にA達も到着する。





NO7  ディスク


デイズは3人を寝かしつけろとまで言われていたがやってはいられなかった。

7時。

坊主達をベッドルームに押し込んで彼等は激怒しドアを内側からどんどん叩きまくっていた。

デイズはリビングに来ると屋敷主人は顔を上げた。

「あの男はお前等の依頼先か?」

「ああ。ゼグにはひいきにさせてもらっているからな」

一人掛けに腰を降ろすと一時警察から開放された王女が彼の葉巻に火をつけた。

王女は夫人に紅茶を出され、微笑みソーサーを受け取った。

「今でも動いていたのね。あの子」

「貴女様は彼をご存知で?」

「少しね。やんちゃぶりは変らないみたい」

「ああ。全くだ」

デイズは呆れてブランデーグラスを傾けた」

「それで、あなたはNYにも根を張る予定だって噂が流れるわ。今回の仕事でZe−nに敵に回された美術館を取り仕切るギャングは憤りを感じていてね。彼らは大きな力を有しているけれど」

「ふん。俺達には値しない」

女王は首を緩く振ってから視線を屋敷主人に向けた。

「彼が躍進する際に、力立てになってあげてね。あの子はきっと彼には協力しないと思うわ」

「それはお安い御用だ」

そう口端を微笑ませた。

デイズは気配を感じ席を立ち、リビングから出た。

廊下を歩いていき、煌びやかな中から野外に出た。

庭を見回し、歩いていく。

「ッ糞!」

いきなり背後を蹴り付けられ銃を手に飛び起きた。

昼の男だ。

彼女扮する彼は、ディスクを手にしていた。背後から取られたのだ。

「……」

デイズは殺し屋を見据えて銃口を向けつづけ、殺し屋は1度面白そうに微笑むと顔横に弾が飛んだのを飛び退ったものの、デイズに突進されて物の見事に芝生に転がって行った。

背に跨りのって手からディスクを奪い取ると殺し屋は肩越しにデイズを睨みつけて反転し彼の額に銃口を突きつけた。

「返してもらおうか」

デイズは足を外して口端を上げ、ディスクを仕舞うと下げたままの銃口を殺し屋に向け合った。

「断る」

殺し屋はプラチナの髪を小顔を傾ける事で流し、彼を見据えた。

「どうしたの?」

王女が不用意に出てきて、殺し屋はそちらを1度見た。

「……、MM、」

彼女は驚いた顔で目を見開き、デイズは眉を潜めて瞬きし殺し屋を見た。その瞬間だ。

殺し屋はデイズを一撃し気絶させるとディスクを奪い取った。

王女は口を両手で押え、動けなかった。銃口は自分に向けられ、殺し屋は、緩く妖艶に微笑した。

「何故、」

「久しぶりだな」

そう言い、銃口を向けたまま倒れるデイズの様子を1度見下ろすと王女に首をしゃくってここまで来させた。

彼女は用心深い目元で歩いてきて、殺し屋を見上げた。

「あなた、妙な副業でも始めたのかしら」

「どうだろうな。どちらが副業かは分からないが、一つの固体は太陽で同じ光を発するとは言えない事だ」

王女は庭を見渡すと、溜息をつき首を横に振った。

「あなたが旦那を殺したのね?父はあたしを王家から除外させると言ったわ。ザリも連れて行く。フランスの田舎の貴族と婚姻を結ばせるってね。それ以外にあたしまで殺されない道は無いから。これから、今までのようには好き勝手派手に出来なくなりそうよ」

「それはいい情報だ。本当に除外されるならな」

まだ銃口は向けられたままだった。

「あなたの事を言う人間はこの世にはいはしないわ。行きなさい」

そう落ち着いた眼差しで言い、殺し屋は銃口を下げると1度デイズを見下ろしてから王女に首をしゃくり屋敷の中へ入らせた。

「殺すつもり?」

「いいや?死んでもらっては面白くない相手だからな」

賭けの進行もある。

王女は背後の様子を窺いながら屋敷の中に入っていき、1度しっかり振り向くと……殺し屋は消えていた。

「……」

王女はボディーガードを呼びに行き、デイズを引き起こさせた。

見事に気絶させられていた。彼は小さな事から毒慣れする為になんでも口に入れてきて胃が弱かったから元の体も兄とは違ってスレンダーだった。鍛えはしたが、強烈に有り得ない力で攻撃されると気絶する事が分かった。

デイズを運ばせてから王女は闇を見渡した。

闇の中へ消えて行った彼は完全に影をひそめた。小さく溜息をつき、引き返した。




NO8 オークション


ガイは上層から指令を受け、本部に帰ることになった。

ディスクの虫食い部分を手に入れたようだ。そうした人物はやはり、組織内秘守義務で知らされることは無かった。

ディスクを奪ったぐらいではデスタントは動きを止めないが、ロガスターの存在を身に分からせて改定内容を変えるだろう。その気も無いのなら反逆ギャングとして再び大きくデスタントに痛手を負わせるまでだ。


ダイランはAに肩を叩かれ目を覚ますと伸びをした。物資の運び出しが始まっている。

ダイランも寝ぼけたままそれを体が続けた。

「向こう街の様子はどうだった。警官が張ってたんじゃねえのか?」

「ああ。豪く警戒線が張られてたぜ。マンモス街との間にあるからな。かいくぐったが、どうやらアゾールが一斉取締りを受け始めていたぜ」

どちらにしろ、カルゾラとデズタントファミリーが関わっていたデータはネックレス内の情報と共に持ち去られていて、デスタントまで手は伸びなかった。

オークション会場の地下に運んでいき、算出書類を闇オークションオーナーに渡すと一時契約金を受け取った。二次契約金はオークションの済んだ後だ。

ダイラン達はスラックスにシャツ、スカーフを嵌めジャケットを着込むとオークション会場へ向った。

ボックスの座席に座り、既に闇美術品目的の富豪達が溢れている。

豪華なシャンデリアは怪しく暖色に存在を誇示し、絢爛な天井に構えている。

他のボックス、会場を挟んだ迎え側だ。

「やっべ、」

ダイランはサングラスを嵌めてビロードのカーテン横の座席に移動した。

Aはダイランを見てから首をかしげた。

リカーは秘書のミランダからドンペリグラスを受け取り舞台に目を転じた。

あのばばあに見つかったら一気に怪しまれる。ダイランはビロード横の壁に後頭部を付け、ウィスキーグラスを受け取ると、ちらりとカーテンを指で退けてエメラルドを覗かせてからまた戻した。

横の男に、あの女が競り落とす美術品の額を上げさせるようにオーナーに言う様に言ってからまた後頭部を付けた。

あのばばあから大金をふんだくってマンションの部屋代に当てるつもりだ。

悪魔ばばあリカーはダイランに気づくことも無くオークション開催までを、ミランダと話し合い、次期季節のメイキャップコスメの仕事をノートパソコン上続けては話し合っていた。

美術品は良いように競り落とされていく。

夜の闇は深くなっていき、大金が巨額の単位で富豪達の手に落ちて行った。

リカーは5品のサインを済ませると、その後のパーティー会場へ向うためのリムジンに乗り込みオークション会場を後にして走らせて行った。

ダイラン達は第二契約金を手にすると共にZe−n金庫へ入れさせてから街を離れる。

A達はNYへ帰って行き、ダイランは少し置いて自分も付いて行った。

「デイズ=デスタントを囮に?」

Aは両眉を上げさせてダイランを見た。

「ああ。あの野郎は俺を散々こけにしている最中だ。ディアンの野郎もな」

「そのディアンは今何やってる」

「しらねえよ。また何食わぬ顔してどっかの国のバーで玉ついてやがるんだろう」

「まあ、あいつの事だから何かがばれれば1ヶ月くらいコロンビア辺りで女といるだろうぜ」

「今度見かけたら逮捕してやるあの悪徳野郎」

Aはおかしそうに笑って煙を吐き出した。




NO9 NYの夜


デイズは目を覚ますと、案の定あの殺し屋を呪った。

ディスクを奪われた。

キースに連絡を送るが、彼も同様に目を回した。

仕方が無い。いくらでも改正案は練りなおせる。

王女はデイズがナイトテーブルに受話器を置いたのを横に座り、彼の肩を宥めた。

「あの野郎は何者だ。あの男が噂のMMだったなんて、怪しい存在で謎が多かったわけだな」

「彼を叱らないで上げて欲しいのよデイズ」

「ハッ、たいした貴公子様だな」

王女は小さくはにかみ、彼の肩を撫でた。

「幾らでも進めるわ。敵にさえ回さなければね」

デイズはあきれ返って立ち上がった。

「俺は街に帰る。処理に忙しいからな」

「そうね」

王女は彼を見上げ、彼の背に言った。

「一度だけ、ザリのところに行ってあげて。もう会う事はなくなるだろうから……」

彼は振り返り、彼女の所まで来た。

「要求をのんだのか」

「……。ええ。あの子を守る為よ」

「俺も影から支援する」

「ありがとう」

彼女は微笑み、両腕を掲げてデイズは彼女の耳元にキスをしてから背を伸ばし、寝室から出て行った。

ザリは他の寝室で眠っていて、その扉を静かに開けると彼女の所まで行き、ベッドに腰を降ろして彼女の髪を撫でた。利口そうな顔をして安眠していた。

しっかりした考えを自分で持った子だ。新しい環境でもうまくやって行く器量はある。大丈夫だろう。

彼女の肩にシーツをしっかり掛けてやり、頬を撫でてから寝室を後にした。

屋敷主人と婦人に一言言ってから屋敷を出た。

夜を見回し、その中を歩いて行った。

彼は視線を上げ、屋敷の塀に寄りかかるダイランを見た。

「よう。お守り金だ」

デイズはそこまで行き、溜息を吐き出してから闇からダイランの顔を見下ろして封筒を受け取った。

「お前、帰るのか?」

「ああ。FBIの人間にまたたかられる前にな。男前な俺は男にまでたかられてばかりだぜ」

「ったく、よく言うぜ」

歩き出し、ダイランは前方を見たまま言った。

「ディアンの野郎には注意しておけよ」

それだけ言い、あとは口を閉ざした。LOGASTARに関与しているらしいことはデイズには言わなかった。

デイズも警察に様子を窺われているMMの正体についてをダイランには言わなかった。



NO10 エリッサ署


朝も明けるとダイランはオーズッドに乗り込む。

「あら。おはよう」

BMWバイクからユリが降り立ち、ダイランに手を振って車体横に来た。

「あれ……」

ダイランは首を傾げ彼女の手首を見た。

オークションで競り落とされた16世紀王朝の王女がつけていたというパリュールとセットのブレスレットが朝の光に反射した。

「綺麗な物つけてるな」

「ああ、これ?良いものでしょう。彼にもらったの」

ダイランはドガーンと思って頷いた。男がいたのか。会場にいた位なら富豪だ。ダイランはユリの顔を見上げてから目をくるんとさせた。

多少はいぶかしんだが、放っておいた。彼女に曇りは無い。

「平気か」

「平気?」

同時に顔を上げそう言い、ユリは微笑んでからダイランを促した。

「俺側はもう問題無い。お前は何か幻覚見ていた様だが」

「平気よ。きっと引越しで疲れていたのね。妙な事言っていたけど、もう大丈夫みたい」

「そうか。それは良かった」

「ええ。ミスターガルドも落ち着いたなら良かった。ねえ……」

「何だ?」

「お葬式、開くんでしょう?ヘドロさんの……」

ダイランは1度路地に目を移してから数度頷いた。まだ警察側に行ったままだ。マンモス街だった。

「お前を巻き込ませて悪かったな。あいつにも悪いことしたんだ」

「ねえガルド。人ってね、最高なときに終わらせることが出来たら……その後の10年にも20年にも匹敵する。そう思ってみて。そう思うのよ」

ダイランは俯き頷いてから、彼女が彼の頬に優しくキスをしたのを目を上げた。

「笑って」

「………」

ダイランはユリの目を見つめて、視線が流れ落ちてから首を横に振り口を噤んだ。

彼女は優しく微笑み、彼の硬い頬を擦ってから車体から離れバイクをしっかり停車させた。

「葬儀は先になると思う」

「そうね……。弔ってあげましょうね。本当に、最高なフライトだったから」

ダイランは頷いて目を閉じた。

「あいつも本望だっただろ」

目を開いて、あいつの珍しく嬉しそうな顔がいい顔だった。

「お仕事、がんばってね」

「ああ。ありがとうな」

ユリは微笑んで黄金の光を受けた手を振り、歩いて行った。

ダイランはしばらくして走らせる。

ネクタイを首に引っ掛け、ジーンストリートを走らせた。

警察官寮に到着するとフィスターはいつもの様に笑顔でダイランに挨拶をして後部座席に乗り込んだ。

「助手席に乗れよ」

「………」

フォスターは目をまちまち瞬きさせて、ダイランの後頭部のブロンドを見上げた。

頬を真っ赤に微笑んで、彼女は助手席に乗り込んだ。

「………」

やはり思った以上にダイランは緊張し、前方を見ながら言った。

「やっぱり後ろに行け」

フィスターはショックを受けダイランの横顔を見上げ、しゅんとしてまたいつもの様に後部座席に乗り込み、オーズッドは走って行った。

いつもの様に無言のままで。

エリッサ署に着くと受付嬢ロマンナに挨拶され軽く返し階段を上がっていく。

3階の部署へ上がって行くと、部長が丁度部長室のドアを開けた時だった。ダイランは回れ右しようと思ったが何食わぬ顔で自分のデスクに座った。

部長は呆れてダイランを部長室に呼び出した。

「休日の行動を報告しなさい」

「なんで」

「君にはレガントの街に帰ってからの報告義務がある」

「しらねえ」

「マンモス街での情報が流れてきたが、一時休息を見せた様だ」

「へえ」

「下手はするな。首にされたくなかったらな」

ダイランは憮然としたまま回れ右して出て行こうとしたが、向き直った。

「あのMMの野郎の事はどう繋がってる。5日前の交渉は俺にだってあんたを脅迫できるんだぜ」

部長は落ち着き払った目元でダイランを見据え、ダイランは胃がまた縮まったのを溜息を吐き出し、ドアから出て行った。

ダイランはジョスにも逆らえないが、部長にも同じ物を感じていた。

デスクに戻るとノートパソコンを開ける。

MMが勝手に渡してきやがったデスクトップ上毎の通信画面の鋭い顔と牙の漆黒の狼のドアップをクリックする。

狼は苦しそうにもがき苦しみ、そしてMMへの通信は奴はまだ眠りこめてやがるのか、不在だった。

ダイランは諦めて視線を上げ、詰まらない暇時の業務を開始した。

毒が抜けきったのか、親指付け根の痣も消えていた。

今にMMの情報も掴んで検挙してやる。

そう目を細めてペンを回した。

いつもの癖でカレンダーを目にして、しばらく見つめていた。

刑務所から消えた女達からは、一向に連絡の無いまま……。


≪END≫

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