第55話
リオナがデリラに聞く。「あの、ひょっとすると,私、天才なんでしょうか?」
デリラがニヤニヤ笑いながら言う「あのね、マダム・ブラスターの作った大技物の魔法の武器はね、あの方がご自分の魂の小さな小さな欠片を素材に入れてるのですわ。あの人の製作した魔法の武器は自分の意思を持ってるのですわ。だから初心者の場合は武器が自分で考えて、あなたの身体を逆に操って、戦うのですわ」
デリラは面白そうに言う。
「ふつうの錬金術師が作った武器は、心なんてないから、錬金術ギルドに加盟してるふつうの錬金術師はギルド規定で、製作者の錬金術師が未熟な人が使ったら、その武器で被害が出ない様に使用者がその武器を使いこなせるレベルにならないと装備できない縛りが付けられてるのですわ。マダム・ブラスターは錬金術ギルドには加盟してない人ですわ。あの人の作った武器や防具をふつう、販売してないのですわ」
リオナは少しがっかり。
デリラはさらにリオナに諭すように言う「あなたが使ってるその氷の鞭は最高クラスの武器で、金貨1000枚でも買えない武器ですわ。そういうことで、あの方の武器は最高クラスでも初心者でも使えるのですわ。あの方も変わり者でいらっしゃるけれどね」
デリラは宣言するように指を向けて「リオナさん、あなたは運が良かった、のですわ。エレオノーラさんに出会えて。 冒険者と言うものは普通他の人たちはレベル1からスタートして何年もかけて、お金を貯めて少しづつ良い装備に買い替えていくのですわ」
リオナは同意した。「やっぱり、そうよね……」
エルゲドス島に到着。
8日間もの船旅で、三つ編み海賊団の魔道帆船はようやく朝5時にドワーフの島エルゲドスに着いた。
朝食を済ませて
上陸にあたって学者のアイオラがドワーフに関しての事前知識をみんなに入れる。
「あの~。ドワーフは効率主義の要件人間なのでぇ、街にはサービス業はありません。この島はエルゲドス鉱山という一つの鉱山町ですがぁ、ここのドワーフたちは鉱山の従業員寮で寝泊まりして食事も弁当もそこから持ってきますぅ。自宅のあるドワーフはみんな家に帰って食事をとりますぅ」
「宿屋もレストランも、店もほぼありません。なので宿泊と食事は船に帰って取りますぅ。これから町で、二人づつ組んでもらいますぅ。エレオノーラさんはアチキとリオナさんと組んでくださいぃ。では、ワンダーという女魔法使いに関する情報集めを、よろしくお願いしますぅ。12時の昼食にはこの船にお帰り下さ~い」とアイオラ。
「ドワーフは無駄話するのを嫌うし、何か聞けば必ずお金よこせ!ってなるですわ。何も知ってなくても、知ってるふりしてお金を取るから、油断ならないのですわ」とデリラ。
アイオラとメーア。デリラとジレッタ。フレデリカとハルナ。エレオノーラとアチキとリオナでそれぞれに上陸。みんな各自、水筒を持って行く。水すら手に入らないそうだ。
大勢の男女のドワーフたちはツルハシやスコップを持ってガヤガヤ喋りながら坑道の入り口に向かっている。そこからトロッコに乗って坑道の奥へと出勤して行く。全員、手に弁当と水筒を下げている。
ーーどのドワーフも見るからに強欲そうな顔していて、情報を引き出せる気がしないーー
デリラとジレッタは、この鉱山の親方連中を訪ねるそうだ。
アイオラとメーアは山の上の方。
フレデリカとハルナは町の中から海岸。エレオノーラたちは島の奥を目指す。
町の奥にはドワーフたちの自宅があった。若い連中が坑道に出かけた後、子供達を連れた年寄りのドワーフたちがいる。ドワーフの爺婆に話しかけるがそっけない。子供に話しかけると「お金ちょうだい!」としか言わない。
「ごうつくばりだな、ドワーフは」と素っ気なくドワーフに「どんな情報でも金貨1枚だべ!」と馬鹿にされたリオナが言う。
しかしエレオノーラたちは、ウロウロするうちに、鉱山の坑道のなかに紛れ込んでしまった。
どうにもならない迷路である。
どこかでドワーフに出会わないと、出口すらわからない。
真っ暗な坑道に、明々と油を流した灯りが燈る。
黙々と、迷った三人は迷路の坑道を二人で歩く。アチキはエレオノーラの左肩に乗っている。
途中の坑道には誰も居ない。上に行く道順も分からないので、仕方ないから下を目指す。
誰かいるだろう、と思いながら下を目指して歩いて行く。
「カキン!、カキン!、カキン!」とどこかでツルハシの音がする。
三組の夫婦の六人のドワーフの坑夫たちだった。
背は低いが骨太のがっしりした肉付きの良い身体で人間より力は強い。
抜け目の無さそうな小さな目に大きな耳と口。
男はみんな髭が伸び放題
長靴に作業ズボンにシャツに軍手に金属のヘルメット。
エレオノーラたちは岩陰に隠れて、六人の世間話を聞く。
「親方は、時給をもう銅貨10枚増やしてくれないだべかな~」
「いんや~無理だべ~」
「ケツの穴のちいせえ~親方だもんな~」
「そうだべな~」
「あ~あ~」
「そろそろ、昼の交代時間だべ~」
「んだ。上がるとすっか~」
エレオノーラたちはドワーフたちの歩いて行く後をつけて、ようやく出口に出ることが出来た。
「ふう。明るい外の空気は格別ね」とリオナ「そうだわさ」とアチキ。
「情報が手に入らないね。ドワーフは無駄話するのを嫌うし、情報集めるのは難しいな」とエレオノーラ。
坑道を出たところは町の教会だった。
「どうかしたのかね」という声が聞こえた。
振り返ってみると、墓場の草むしりをしている人間の年配の神父がいた。
「ふう」と神父は腰をいたわりながら、額の汗を拭いた。
大変そうなので、エレオノーラとアチキとリオナも墓場の雑草抜きを手伝った。
「おかげで一日で片付いたよ」と教会で神父が嬉しそうに礼を言った。
「ドワーフは人間と尺度が違うんで、まあ、許してやってくれ」と笑顔の神父。
「あのーワンダーという女魔法使いのうわさを聞きませんか?」とエレオノーラが聞いた。
「ワンダー? ああ、二十年前にそんな女魔法使いが、この向こうのサナジェス島に来たね」
「サナジェス島?」「ああなんか。事件があって今は誰ひとり住む人間は絶えたようだが、詳しくはしらないよ」と神父。「サナジェス島には今は誰一人いないんですか?」「ああ、20年前のむかしは立派なお城があったそうじゃがね」と神父。
「ああ、良い情報をありがとうございます。神父さま」と三人は島で唯一の人間のグリナス神父に礼を言い、教会を後にした。
その時、いま出て来た教会から、グリナス神父の声「もう出てってくだされ」「うふん、わたくしはシスターなのに♪」
エレオノーラの聞き覚えのある野太い声。「あれ、ヘラクレスさんじゃないの?」
「あら、エレオノーラちゃんと氷姫の使い魔ちゃん。こんなとこでお目にかかるなんて奇遇だわ。シスターとしてここの教会に来たのに、神父さまに追い出されたのよー。もう、いやーん。泣いちゃうわ」
そこには二メートルの筋肉隆々の、シスターの僧服を着たヘラクレスが途方に暮れてしょんぼりしていた。
「女教皇さまに直接お手紙差し上げて、シスターになる許可をいただいたのに、赴任した教会の神父さまに追い出されたのよ」
リオナとアチキはドン引きで、野太い声で「うおーんうおーん」と声を上げて泣き始めたヘラクレスを遠巻きにして眺めている。「昨日の商船でこの赴任地の教会に来たのですわ♪ うふん。 だのに神父さまったら、あたしを怪物扱いして……うおーんうおーん」ヘラクレスは本格的に泣き出した。
エレオノーラはもう一度、教会に戻って扉を押したが、中からは厳重に鍵がかけられている。
カラスがカアカアと鳴いて飛んでいく。もう、夕焼けだった。
「あれ? まだ昼前じゃないの?」「あれ、ほんとだわ」「何言ってるの?エレちゃんたちたら♪ もう夕方でしょ」
エレオノーラたちは地下の坑道を彷徨っている間に、すっかり時間が経っているのに気が付かなかった。
昼ご飯も食べていない。
「うふん♪ あたしどうしたらいいの? うおーんうおーん」と泣くヘラクレス。




