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第5話

 次の日ギニーンがエレオノーラに言った。


「おまえが来てくれたんで、あいつの言った条件が整った。 

 娘を迎えに行きたい。付き合ってくれるか?」


「?」


アッパの港町から少し離れたところに修道院があり、

そこにギニーンが死に別れた妻との間にできた18歳の娘がいるそうだ。

ギニーンが傭兵になったとき、まだ6歳だった娘をそこへ置いて来たそうで、

ギニーンは回復職のいないボロボ傭兵隊に娘を神官として参加させたいらしい。

神官としての修行は一通り終わっているのだが、


「女性がいないなら、ボロボ傭兵隊にははいらない!」と言われて、

1年前に「父親を手伝ってくれ」と誘ったギニーンの誘いを断ったそうだ。


「戦場に娘を引きずり出したいあんたの気がしれないわ」

とエレオノーラは言った。

ギニーンは黙ったまま、黙々と馬を進める。

じきに修道院についた。

そこは低い塀に囲まれた美しい古い建物だった。


入り口にいた男性の僧侶に話すと、じきに呼んでくれた。


「また来たの?パパもしつこいわね。」


清楚な可愛い女の子がふくれっ面しながら現れた。

清楚などこにでも見かける修道女のローブとフードをかぶった小柄な美しい少女だった。


「あら、素敵な女の子ね。その子がさっき早馬でくれた手紙に

 書いてあった女戦士さんなの?」


「ああそうだ。どうだ?うちへ来てくれないか?お前が必要なんだ」


「……約束だから仕方ないわね」


「ギニーン、戦場ってこの世における地獄よ。

 そんなとこに愛する娘を連れだそうって

 あなた、どうかしてるわ」

エレオノーラは率直にその場で自分の考えをギニーンに言った。


「こいつの母親も女戦士だったのさ」


「戦場でパパをかばって死んだんだよね」と娘が言った。


「この修道院には親が傭兵で預けられてる子供が私以外にも4人ほどいるのよ」


「ますます気がしれないわね。ギニーン」


ギニーン「……」


「気にしないで。私はハルナ。よろしくね。女戦士さん」


「私はエレよ。……どうして他に居場所があるのに

 傭兵なんかになるの? ハルナ」


「血ね……それとしか答えようがない。

 つぎの戦いで死ぬとしてもね。」


「少しまっててね。荷物はもうまとめてある。着替えてくるわ。」

しばらくして、ハルナは着替えて現れた。


「ありがとう。パパこの装備私に丁度いいわ」


ハルナは高価な、女性用の銀の魔法の鎖帷子セットを着ていた。

これ全部で金貨35枚はするだろう。

白魔法のバフと聖なる守護魔法がかかった高級品だ。

エレオノーラにはとても買えない。


敵の攻撃が何%かで当たらなくなる魔法と、

敵のヘイトを受けにくくなる魔法と、

敵の攻撃が何%かダメージが緩和される魔法がかかっている高価な防具だ。

少し微光を発している淡いピンクの細かな銀の鎖でできた鎖帷子に、

魔力アップの宝石のついた銀の鎖の帽子、

銀の魔力アップの彫刻のはいった皮の手袋。

小さな魔法の宝石のついた皮のスカートに

銀の魔法をこめた彫刻板のついた皮のハイカット靴。

どれも美しい装備だった。

下には可愛い木綿の薄い黄色のズボンと花柄の木綿のシャツを着ている。

ハルナはその上に修道女が外出で被る粗末な灰色の麻のフード付きの

ガウンを深々と被った。

(そして神官のだれもが持つ神の杖カドウケウスを持った。

 これは銀製だったがこれは神官の地位によって違うのだが、

 銀製は僧正だ。彼女は僧正?この年で?)


エレオノーラは不愛想に言った。

「どれだけ良い防具をつけてても、

 敵にタゲられたら一撃で殺されることもあるのよ。

 それを承知でギニーン、あなたはこの子を戦場に連れ出すのね?」


ホントのところ、エレオノーラ自身、まだ13歳の子供なのだ。

(年を17歳と偽っている)

彼女は自分の危うさ儚さを覚悟していた。この子はどうなのか?


エレオノーラの心を無視するようにギニーンは

馬に娘を乗せて、エレオノーラだけ歩きで、港町を目指した。


ーーもし次の戦いでこの子が死んだら、

 この男はいったい?男ってバカ?----







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