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第48話

 三つ編み海賊団の魔動帆船はエルフの暮らすアイカス島に到着した。しかし様子がおかしい。

 事前の情報では外交的で商業活動も活発なエルフたちの住む島のはずだが。

 島から出てくる船がない。

 島の港に遠眼鏡で見て、人の気配がない。

 このエルフの住むアイカス島は、森に覆われた島で沢山の小動物や美しい小鳥がいて、周りの海は魚の宝庫という自然に包まれた美しい島である。この島の自然と共存するのがエルフの伝統だとハルモニアの港で聞いた。

 船も二隻が係留されたまま。

 湾に入り投錨するが、島の事前の情報が何もない。様子が分からない。

 遠眼鏡で港町の様子を見てみるが、らちが明かないので、一か八か島の港に入り全員そのまま上陸することにした。

 案の定、港に入ってはしけを下ろして上陸すると、数名の海賊の下っ端ーー何ヵ月風呂に入ってないか見当もつかない体臭の汚いシャツを着てバンダナを撒いたサンダル履きのヒゲもじゃの男たちーーが、三人の島の繊細で知的な顔立ちのエルフの子供たちにナイフを突きつけて「おい、これが見えるなら大人しくしろ。さもないとこのガキの命がないぞ!」とこちらに向かって叫んだ。

 これでもう、オンの字だ。

 エレオノーラが背中のドウルガの魔剣を抜くより早く、狼女のメーアが飛びかかり、三人の子供にナイフを突きつけていた四人の男をKOしてしまった。エレオノーラは少しがっかり「ちぇ!」


 エレオノーラがエルフの子供たちに聞いた。

 子供たちはエルフ特有の繊細な整った顔を恐怖に震わせていた。

 少し落ち着いて尖った耳を両手で撫でている最年長の子供に聞いた。

「大人はどこにいるの?」

「町の奥の教会に閉じ込められて、魔法薬を造らされてるよ」

「魔法薬ってどんな薬?」とハルナ

「その薬を飲まされると、海賊のお頭の言うとおりに動くようになる薬だよ」

「そりゃ、まずいな」

「めんどいから、問答無用で海賊全部、ぶっとばして捕まえるか」

「捕まえた後どうする?」

「海賊にその魔法薬を飲ませてやろうよ」

「ああ、それはいいね」

 ハルナとエレオノーラが笑いあう。


 そのまま、前衛のエレオノーラとメーアとジレッタが三人で子供達から教会までの道を聞き、突入した。

 小さな氷姫のアチキはエレオノーラの肩に乗ったまま突入。

 窓から中の様子を見て、そのまま窓から奇襲をかけた。

 教会の礼拝室にいた20人ほどの下っ端を素早さ一番の人狼のメーアとエレオノーラが一撃で仕留めていき、敵は歯向かう暇もなく、二人は素手で数分で20人を殴って気絶させた。

 作業させられていた30人ほどのエルフたちは、全員魔法薬を飲まされていて、海賊たちと一緒になってエレオノーラとメーアに飛びかかってきたので、めんどうなので、彼らも海賊と同じに気絶させた。

 ーー普通のエルフのおじさんおばさんたちであるが、まあいいやーー


 15分後に、三人の子供たちを連れて、残りのハルナ、フレデリカ、アイオラ、デリラが教会まで行くつもりで待機していると、物陰から残りの20人の海賊とお頭が、魔法薬を仕込んだ空気鉄砲をポン!ポン!ポン!とハルナ、フレデリカ、アイオラ、デリラに向かって撃った。

 ハルナたちは敵の意思通りに動く人形にされてしまった。


「この魔法薬って、どのくらいで効き目が覚めるもんなんだろ?」と気絶させたエルフの島人を見ながらエレオノーラ。

「わかんないナ。ハルナさんなら知ってるかナ? 魔法薬にも詳しいそうだからネ」

「どうかなガウ?」


 そこへ魔法薬で敵側の人形にされたハルナたち四人がやって来た。

 いきなり、エレオノーラとジレッタに魔法薬の玉を仕込んだ空気鉄砲を撃った。

 人狼のメーアはハルナたちから魔法薬の匂いがするので、いち早く逃げた。

 エレオノーラとジレッタも魔法薬で敵の人形にされてしまった。

 仲間内で最強のエレオノーラが敵になったら恐ろしい。

 だけど、小さな氷姫のアチキがとっさにエレオノーラに雪の結晶を撒いた。

 エレオノーラは凍り付いて氷の彫像になった。

 アチキは首から下げた白鳥のペンダントに触れると、そのペンダントは白鳥になった。

 白鳥に乗って飛びながら雪の結晶を撒き、ジレッタ、やハルナたち四人も凍らせて氷の彫像にしてしまった。

「グッドジョブ!」とメーアがアチキに喝采。

 メーアは、四つ足で走り、船に戻ると、船の居間にある魔法の鏡で、マダム・ブラスターと連絡をとった。

「エルフのアイカス島で海賊が魔法の薬を造っていてそれにエレオノーラたちがやられたガウ。なにか解毒薬はありませんガウ?」

「他人を意思通りに動かす魔法薬は何種類かあるけど、素材が分かるかい?」

「素材は作ってる場所に魚とサボテンがあったけど、他は分からないガウ」

「ああ、それだけわかれば十分だ。テトロドトキシン系の毒とサボテン麻薬のペヨーテか。それなら妖精キノコの粉末が有効だ。ハルナの薬箱に『妖精キノコ』と書いた包みがあるだろう」

「……あったガウ。でもどうやって使えばいい?」「口から飲ませる必要があるね」

「この魔法薬はどの位の期間効くのガウ?」「2,3か月だねえ」「……げっ……」

「アチキが、氷像の口に入れてくるだわさ」と小さな氷姫。

「おーけー手分けしてやるガウ」

 二人は島の教会へ行ったが、海賊たちはどこかへ氷像を片付けてしまっていた。

 メーアは物陰から素早く、匂いをたどり、背中にアチキを乗せて四つ足で走った。

 海賊船まで匂いが続き、メーアは海賊船にいた六人の海賊を瞬時でボコボコにした。

 海賊船の甲板に氷像が粉々に砕かれて魚の保存用の氷にされて箱詰めにされていた。

「ぎゃあー!!」「大丈夫。あちきが魔法を解かない限り氷は決して解けないから」「氷の欠片を集めてジグゾーハズルしなきゃなんないガウ……」「その必要はないわさ」

「氷の欠片よ! 氷像に戻れ!」

 小さな氷姫の言葉で氷の欠片は六人の氷像に戻った。

 二人はその氷像の口に妖精キノコの粉を食べさせていった。

「氷よ解けよ!」とアチキが言うと、氷が解けて六人は元の六人に戻った。

「あれ?! 何があった」とエレオノーラ。

 アチキとメーアが説明した。

「むかーつ! なにそれ?!」「わたくしに魔法薬を飲ませたですって?!」「ありえなーいワ。気分わるーイ」

 そのまま、怒りに燃えるエレオノーラとジレッタとデリラが大暴れして、海賊は全員、ボコられて魔法薬を飲まされた。エルフたちは妖精キノコの粉末を全員が口にして、正気に返った。


 エルフたちは元の繊細な優しい笑顔を取り戻し、島の港町は外交的で活発な商業町に戻った。

 町でエルフたちから尊敬を集める女司祭でエルフの長老の老聖女、マザー・リンが八人に言った「有難うございます。助かりました。嵐で難破した海賊をみんなが介抱してやったら、ぎゃくに町を乗っ取られてしまって」

 エレオノーラが聞いた「この町に魔法のワンピースを着た女魔法使いはいませんか?」

「あら、それはワンダーのことかしら? 彼女なら今はドワーフの島エルゲドスにいると思うけど」とマザー・リン

 航海士のデリラが「魔法の羅針盤で次へ行きますわっ」


 出航する前に、八人は、島の宿に一泊、泊まり、宿の食堂で、この島で採れる新鮮な魚介類で作る名物のパエリヤとブイヤベースに舌鼓を打った。

「おいしーだわさ」「さいこーネ」「上手いガウ。この料理のレシピをあとで女将さんに聞くガウ」

「わたくしの口にも合いますわね。うふふ」「あ~の、こんなおいしい料理産まれて初めてですぅ」

「文句なく美味しいわん」「またこの島に来たいわね」「ああーうめえなっ!」

 宿の大浴場へ入り、みんなは上機嫌。

 王女のデリラはお肌の手入れに余念がない。

 デリラの買い込んだ物を見てハルナが「思い出したわ。確かこの島の名産はエルフ・ライムの果汁入り化粧水?!」

 化粧に無関心なエレオノーラ以外のクルーは

 この島の特産の果実エルフ・ライムで作る化粧水をガッツリ買い占めた。


 食料を補給して、つぎのエルゲドス島へ出航する。


 魔法の羅針盤は、ブラスター師が昔、造った物である。

「魔法のワンピースはどこにある?」と質問すると、その存在する方向を針が示す。

「ドワーフのエルゲドス島はどこ?」という質問と同じ方向を指し示した。

 今度こそ、ワンピースはドワーフの住むエルゲドス島にあるのだろうか?


三つ編み海賊団の魔動帆船は大海原を進む



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