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第45話

 ハルモニア王国は内陸部分で三つの国に国境を接している。

 ハルモニア王国はガウス王の父王の時代からそのどの国王とも個人的に仲が良く、それぞれに不可侵中立条約を結んでいる。

 南で国境を接するサマルニア王国は大国で代々魔法使いの女王の王国で中々の強国である。

 その中で一番好戦的なラリア王国の野心的なベズール王が三千人の大部隊を、なんと無許可でハルモニア王国の草原を通り、北の隣国のシズルニア王国に進軍させた。

 ラリア王国とシズルニア王国は仲は良くもなく悪くもない。しかし常々自国の領土拡張を狙っている戦争好きのベズール王のラリア王国軍がいきなり領土拡張のために、三千メートルの山々で接している険しい国境を通らずに、中立のハルモニア王国の草原を通り、ずんずん進んで行く。

 侵略戦争のための三千人の軍隊が草原を進軍中である知らせは、三つ子の誕生で、大忙しのクリスタル新将軍に報告された。

 クリスタルは、アナスタシアが気づかない様にそろりと町中の新しい邸宅の馬小屋から、馬丁によらず自分で馬を引き出し鞍と鐙を付ける。

 母が新しく作った水晶の鎧を装備して、白馬に跨り、草原まで馬を走らせて、単身でその三千人の軍を指揮するべロリス将軍の前に立ちはだかった。

「ここを通りたくば、べロリス将軍、俺と勝負しろ!」と叫んだ。

三千人の侵略軍を率いるべロリス将軍の行く手に単騎で立ち塞がるクリスタルの水晶の鎧が太陽の光を受けて眩しく輝く。

ーーうわさにたがわぬ無鉄砲な男だーーとべロリスは思う。

「不可侵中立条約があるから、貴様とは戦わんっ!」と言い返されて、三千人の軍はクリスタルを無視して、進軍を続ける。

 クリスタルの後ろに、魔法陣が現れ、マダム・ブラスターが現れた。

「ああ、おふくろ。仕掛けてくれたかい?」「ああ、仕掛けといたよ」とマダム・ブラスター

 草原の真ん中に三千人の軍が差し掛かった時、マダム・ブラスターが杖で地面をトン!と叩いた。

 巨大な魔法陣が白く浮かび上がり、三千人の軍はまるごと、海の上に転送され、海の中に放り出された。

 その海はヴィルガルドのま反対側の西にある陸の見える浅い近海である。


 クリスタル将軍の後を追って、千人のハルモニア軍が追いついた。

 しかし、そこにはもう、ラリア王国軍の姿はなかった。

「あれ!? 将軍っ! 誤報だったのでありますか?」と将軍補佐の兵士が問うが「いや、解決したのさ」とクリスタルはほくそ笑む。





 ハルモニア王国のギルド酒場のマスターはもう高齢で、引退したがっていたが後任が見つからなかった。それにギニーンが応募したが、後任に選ばれたのはリンダだった。

 クリスタルが久しぶりに、一人で酒場ギルドに顔を出した。

「あら、こんにちは。クリスタル。その新しい鎧、素敵ね」とリンダの声。

 ハルモニア町の酒場ギルドの新しいマスターはリンダになっていた。奥の酒場にバーテン姿のギニーンが作り笑顔で手巾でコツプを拭いている。

「やあ、リンダ、ギニーン、ハンターは辞めたのかい」

ギニーンはカウンターまで走り出てくると「無期限休業中さ♪」と笑顔で答えた。

 ーー幸せそうにリンダにバックハグして密着してリンダの右肩上からにやけた顔を「でへへへへ♪」と覗かせて妻のお尻を念入りに撫でるーークリスタルは将軍として巡回中パトロールなので、視線を逸らすが、クリスタルの左肩に乗っているパピヨンゴブリン姿のリユが面白そうに言うーー

「アナスタシアにあなたががあんなことやったら即ぶっ殺されるわね♪」「……」

「ハンター協会に声かけられて、ここの新しいマスターにあたしが就職したのさ。あの人も控えで酒場のバーテンダーさ」とリンダ。

 ギニーンは暇さえあればカウンターに来てマスターのリンダに身体を密着させてお尻を触っている。リンダは苦笑しているが。

「あたしの夫は、でかいワンコみたいなもんでね」

 ギニーンが妻の尻を撫でながらも真顔で答えた「俺たち夫婦は永住の地をハルモニア王国に決めたのさ。ハンターは手荒い仕事だから死ぬ危険があるからな。俺はもう二度とリンダを失わない」ときっぱり言う、「あたしだって同じだよ」とリンダがカウンターに頬杖をついて笑顔で言う。

 リンダとギニーンはハルモニア王国の城下町であるこの町に初めて家を買った。

 マダム・ブラスターが王室錬金術師をしていたとき、住んでいた古い一軒家だ。

 ーーその家はレテ河の畔に在り、その遥か上流にブラスター師の古い屋敷があり、かってこの屋敷に、ブラスター師の次女で16歳のアルテミシアと結婚しジョー・デウスが暫く住んでいた。昔、父ブラスター師の弟子ジョー・デウスと折り合いの悪かった若いマダム・ブラスターは妹と彼の結婚を機に育った父の家を出たのだったーー

 その裏にある古い壊れた教会の地下には今でも、マダム・ブラスターの第二アトリエが在るのだけれど。


 エレオノーラとハルナは王様の依頼で何処かに遠征中だ。


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