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第36話

 フォグ副王は似合わない髭を生やした不細工なガニマタの小男だったが、白馬に跨り、白銀の鎧を全身に纏い、輝く宝剣を腰に差した姿は、まるで別人である。

カナッサ町の入り口外の草原に本陣のテントを張り、野営の準備をしている。

二千人の正規軍の軍勢が完全武装して揃う様は、まるで騎士道絵物語のタペストリーの錦絵の様である。


その本陣にカナッサ町守備隊隊長のオコーナが鉱山町ジステンの様子を、命からがら荷車で逃げて来た避難民から聞き取った詳しい情報の報告に来ていた。

オコーナはフォグ副王にうやうやしく跪き、騎士の挨拶を主君に行った。

 

フォグ副王「大儀である」


オコーナ隊長「御意にございます」


避難民の数名も同行してフォグ副王や副王の軍師の質問に答えていた。


その後、フォグ副王は全身鎧で顔の部分だけ僅かに開けた姿で白いマントをなびかせて宝剣を腰に差し、カナッサの『特上の宿』のアイロス小公子を訪ねた。


その部屋にはフォグ副王の正妻の母親のルツ皇太后とレミルナ・ルド女大公もいた。

リユがアイロス小公子の部屋でお菓子の大食い中で、天井まで届きそうなクロカンブッシュの塔の完食4個目に挑戦していて、小公子を喜ばせていた。


執事「フォグ副王様の御成りにございますっ!」


フォグ副王「これは義母上におかれましてはご機嫌よろしゅう。レミルナ姫はさらに美しゅうなられましたな……アイロス小公子よ、ジーナ姫との正式婚約が済んだら、直ぐ副王都メジンに帰り、大人しく勉強と剣の練習だけしておくようにな」

重い鎧をガチャガチャさせて自慢の髭をなでながら


フォグ副王「義母上のアステルスカス王国は勇猛で知られたジャスティス将軍がおりますから安泰でしょう」


ルツ皇太后「婿殿、元気そうでなによりじゃ。不届きなバルカニア王国軍の討伐よろしくですじゃ」


アイロス小公子「はい、おじ上にはご武運がありますように」


フォグ副王は「うむ、苦しゅうない」と言う


 そこへ執事の制止を振り切ってエレオノーラが乱入した。


「フォグ副王様、私も女兵士として鉱山町ジステンのバルカニア王国軍の討伐に連れて行ってください」


「うむ? わが軍は足りておる。 それよりババニア教団に狙われておるわが甥、アイロスの警護に専心するがいい」とすげなく言われた。


「アイロス小公子お願い。私を副王様に女兵士として紹介して!」

とエレオノーラはアイロス小公子の口利きをねだった。


 アイロスは知っていた。

ヘラクレスの情報でーーエレオノーラの部屋前でヘラクレスが立ち聞きし、母の友人がした、エレオノーラの母親の死んだ話ーーを報告にきたので。

しかし、彼女が非常に強いことを知っているので、ボディガードからいなくなるのは嫌だった。


アイロス小公子は、眼を逸らした。

……ごめんなさい。エレオノーラさんがいないのは不安です……


フォグ副王「では息災にな」


フォグ副王はそのまま、ガチャガチャ白銀の全身鎧の音をさせながら町の外の本陣へと戻っていった。



つぎの日の朝、日の出と同時にオーボエン街道を北にバルカニア王国軍を求めてフォグ副王の二千人の軍は出発した。


朝食を済ませて、すっかり元気になったアイロス小公子を乗せて、アイロス小公子一行も出発した。

さらに、もう一台のピンクのド派手なレミルナ・ルド女大公の四頭立ての馬車を真ん中に加えて、しんがりの馬車にはエレオノーラとギニーンとハルナと。

エレオノーラの胸はとても重かった。 

ハルナがエレオノーラの肩をそっと抱いて頬にキスした

ーーエレオノーラは本当に、フォグ副王軍にあの場でアイロス小公子の口利きで志願して、女兵士として故郷の鉱山町ジステンに行きたかったーー母親の死の真偽を自分の眼で確かめたかった。


先頭馬車ではカジノですっからかんのオケラにされたらしいビオルとゼネとハビンが「チーン!」と暗い……

一路、新たなチャニッカ街道を、アステルスカス王国へと四台の四頭立ての馬車はひた走る。

クリスタルとアナスタシアはルド女大公の御馬車に乗せらていた

代ってレミルナとルツ皇太后がアイロスの馬車に同乗している。他にリナとヘラクレスと執事の6人が乗っている。

アイロスの馬車の中は観光バスのような大はしゃぎで、執事がサモワールで紅茶を入れお菓子を出す。


ヘラクレス「いや~ん このお菓子おいしい~♪」


「ルツ皇太后さまはあたしより年下ね~♪」と200歳のパピヨンゴブリンのリユ


ルツ皇太后「おやまあ~ホントかい?! あっははは♪」


レミルナがみんなで食べようと出した大きな夏みかん二個をリユがいきなりヘラクレスの胸に入れた

「ヘラちゃん、爆乳!」「いや~ん♪ うふん♪ス・テ・キ」

アイロス「あははははは」

全員が腹を抱えてが大爆笑!




アイロス「レミルナお姉さまはこの前ルド公国の女君主になられたのに、なんで今頃こんなとこにいるの?」


レミルナ「おとーさまが73歳で亡くなってから母がすっかり落ち込んでね、私に大公の座を譲ったあげくに毎日わたしの婿選びだって舞踏会だ、剣技会だって、開催してうるさいのっ! 自分の花婿くらい自分で見つけるわっ!て叫んで、ルド公国を飛び出して来ちゃったのよ。 手ぶらでは帰れないからさー

あーあーどこかに良い男いないかなー」と花婿を捜す婚活旅の最中のようだ。


ルツ皇太后は不機嫌になった「お前の父親のペミロ公は私の長男だったのに婿養子にいっちまって!

嫁に手荒くされて短命だったんだよ!」


レミルナ「おばあさま……それはありえないわよ。ママとパパはいつもラブラブだったもの」


ルツ皇太后「ふん!」




アイロス小公子の馬車には幸い、この後、暗殺者が襲ってくることは無かった。



そして、三日後、ようやく、四台の四頭立ての馬車が占星術アステルスカス王国の城門に到着した。

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