第16話
ギニーンは2人の娘の部屋で朝方、妹の嫁ぎ先の薬屋の倉庫に預けてあった戦士であった妻リンダの装備の包みを紐解いた。
そこには女性用の白銀の鎧と小手、ブーツ、みな美しい魔法呪文の彫刻が施されている。エレオノーラが持っているのより軽いが切れ味の鋭い白銀の持ち手の鋼の大剣があった。すべて女性しか装備できない守りと神聖守護魔法がかかっていた。
「どうだい、ちょっとしたもんだろ」
「いいね、私は覚えてるわ。ママがこれを着ていた頃を」
「そんなに大事なものを、しかも無料でいただいてもいいんですか?」
「無料でしか譲れねえ!てこともあるんだぜ。着てみなよ。エレちゃん」
ギニーンの目の前で、エレオノーラは皮の鎧とその上の鎖帷子を脱ぎ、
白銀の鎧と小手とブーツを身に着けた。
「実は、私が使ってた大剣は、ひびが入ってて、
あと1回くらいで金属疲労で折れる寸前でした」
「おれもそれに気づいてたんだ。
だからリンダの装備をエレちゃんにやろうと思いついたのさ」
「いろいろ、お気遣いすいません」
「兜が無いんじゃない?」とハルナ
「ここにあるよ。」ギニーンは自分の左手につけていた銀の腕輪を外した。
「これが兜さ。これだけ女性専用装備じゃなかったんで
俺の上腕筋の腕輪にもなるデザインだったんで、
リンダの思い出に左手に嵌めてたんだよ」
カチャカチャと細かい備品をつけると、エレの頭部の防具になった。
「カッコいいね」
「うんうん。ママを思い出すな」
笑顔だがギニーンは少し涙ぐんでいる。
そのとき宿のおばちゃんがメモを持ってきた。
「使いの人がこれをギニーンさんと娘さん2人の誰かに渡してほしいと」
ギニーンがそれを読むと
《このまえはどうもです。女教皇のルチアナです。
ギルドの酒場にて待ってます。ご足労お願いします》
と書かれていた。
3人は急いでギルドへ行った。
一番奥のテーブルで8歳の女の子に見えるルチアナが待っていた。
「実は3人にお仕事をお願いしたいのですが、引き受けていただけますか?」
ハルナが言った「内容によりますね。仕事料もだけど」
女教皇ルチアナは、その可愛い顔でウィンクして言った。
「むずかしい話ですがお聞きください」
「実は、このウィルガルド大陸の西に超古代文明の遺跡があるのはご存知ですね」
ハルナが答えた「はい、知ってますよ」
「その古代遺跡において、最奥にある死んだと思われてた機械が動き始めたのです。その機械をできれば 調査して……無理ならいいです。とにかく停止させて欲しいのです。それを報告した神官を含む5人のパーティは最寄りの町で報告して再調査に向かったきり、1か月も消息不明なのです。」
「それとパメリヤ町のあの事件とどんなかかわりがあるんだ?」
「その神官の報告の内容が、『近々、町が1つクラスが全員ネクロマンシーでアンデッドになる可能性がある!』という予測だったんです。」
「女教皇庁としてはそれを防げなかったということですか」
「そうですね」
「それはこの大陸で戦乱が果てしなく続いているということとも関係があるかもしれません」
「この戦争が果てしなく続く世界が普通じゃあないの?」とエレオノーラは聞いた。
「少なくともこの世界には何か悪意ある悪魔の様な者がいて
意図的に戦争を煽ってると、私は考えてます」
「へえ、壮大な話だなあ。それが女教皇のあんたの考えかい?」とギニーンが言った。
「報酬は、金貨70枚をまず差し上げます。
その機械を止めれたらもう金貨70枚差し上げますが。
いかがでしょうか」
「破格の報酬だね。そうとうヤバイ仕事ということだな?」
「はい、そうです」
「へえ、そうなの」とエレオノーラ
「では、よろしくお願いします」
女教皇は、可愛い頭をぴょこんと下げてお辞儀すると、
「私を加えて4人ですね。あと一人はハイプリエステス市の
女教皇教会宮殿に待機してますので」
「えええええ!?あなたも同行するんですか?」
「はい、では、みなさんご一緒ねがいます。あと一人の方に会いにいきましょう」
ニコッと笑ってギルドを出て行った。
3人も渋々そのあとに従った。
ギルドの外に、女教皇庁のシンボルのカドウケウスのマークのついた6頭立ての銀の馬車が止まっていた。
ルチアナとハルナとギニーンとエレオノーラがそれに乗ると、馬車はものすごいスピードで走り出した。
副王都の東門を出た6頭立ての女教皇の馬車は街道をまっしぐらにハイプリエステス市に向かって猛進を続けた。