第15話
エレオノーラとハルナはフォグ副王の王宮へ行った。
王宮は贅の限りを尽くした宮殿で、
あらゆるところが黄金でできていた。
階段のタイルは高価な美しい磁器だった。
フォグ副王は不細工な小男だった。
似合わない大きな顎髭と口ひげを生やし、
ふんぞり返っている60位のおっさんだった。
そのおっさんのまえに可愛らしい女の子がいた。
8歳くらいの女の子だった。
ふんぞり返ってヒゲジジイのおっさんは聞いた。
「おまえら、パメリヤの港町に不浄なる死の事件が起き、
全住民がゾンビになっておったと聞いておるが相違ないか?」
ハルナ「町の人口は何人だったの?」
ヒゲジジイ「2000人くらいであるぞよ」
ハルナ「私が除霊して昇天させたゾンビはせいぜい200人位だったよ」
ヒゲジジイ「そうであるか。女教皇さま、
この下々の者はかようにもうしております」
8歳位の女の子「そうなのね。
じゃあ後の1800人はどうしちゃったんだろうね」
ハルナはびっくりして聞いた
「あなた、ヴィルガルド教主教様ご自身ですか?」
8歳位の女の子「はい、そうです。あまりにも奇怪な事件なので
私が自分で来ました」
ハルナ「だけど、女教皇さまって、
確か今年で御年56歳位じゃなかった?」
女の子「女教皇に即位して神霊が降りると年取らなくなるのよ。
寿命は変わらないけどね。
私は8歳で即位したからそれから年を取ってないのです」
ハルナ「そんなこと初めて聞いたわ」
女の子「そりゃ、別にそんなこと公表してないですもんね」
ヒゲジジイ「女教皇様は、見かけは8歳じゃが、
御年56歳であらせられるぞよ」
可愛い女の子は、国宝級のローブを着ていた。
幻獣の毛で織られた淡いピンクのローブに幻獣の皮でできた
ピュアスノーの靴。
可愛い銀の髪飾りには高価な聖霊石がはめられている。
金にダイヤを散りばめたカドウケウスを持っている
ーーので確かに女教皇さまだ!
女の子はふんぞり返ったヒゲジジイと違い、
二人に丁寧に頭を下げて頼んだ。
女の子「すいません、あまり世の中にこのことが
広がっても社会の人心の不安を招くので、
できれば内密におねがいします。
お二人は冒険者でいらっしゃるようなので、
この件でこののち、これに関する依頼をお願いする
かもしれません。
その際は、よろしくおねがいします」
ハルナ「こちらの都合もあるので、依頼を受けるかに関しては
お答えしかねますが、
パメリヤの事件の噂を広げることだけはしない様に
気を付けます。
それでいいかな?」
女の子「はい、けっこうです。
では私はこの件でフォグ副王とお話があるので、
要件は済みました。お疲れさまでした」
女の子は頭を下げると、フォグ副王とまた何か話を始めた。
フォグ副王のお付きの小姓が、
「では、お帰りはこちらです」と二人を出口へ案内した。
恐ろしいほど、広い王宮で案内が無ければさすがに、
ほとんど迷路だなと二人は思った。
二人は王宮の外へでた。
そのまま、ギルドへ帰ると、ギニーンがすでに
アッパの港町に船で行って帰ってきていた。
大事そうに帆布で包まれた大きな包みを抱えていた。
その夜の夕食は、副王都の高級レストランでギニーンのおごりで、
二人はビーフステーキ3枚づつととメロンを丸1個づつ平らげた。
娘二人の食欲にギニーンは苦笑いしていたが、
自分も同じだけ食べて満足そうだった。
出る時に、ギニーンは金貨2枚はらった。
あと、3人は中クラスの宿に泊まることになった。
ハルナはほっとした。
エレオノーラは「もったいねえの!」と不満げに言った。
ハルナとエレオノーラは二人部屋で、
ギニーンは一人部屋でゆっくり休んだ。