第13話
ハルナはエレオノーラと共にアッパの港に船で向かった。
副王都の港にもどる。アッパの港は中継地だったせいもあるが、
父の様子を見る必要もあった。
アッパの港から古巣の聖チア修道院に帰ると、
ボロボが一人でこっそりギニーンを訪ねて来ていた。
「パパ、体の具合はどう?」
「ああ、ハルナおかえり。おかげですっかり元気になったよ。
いつでもまた傭兵稼業で稼げるぜ」
ボロボがぼそっと言った。
「その傭兵部隊はもうなくなったよ」
「えええええ!?なにがあったの?」
「ルナナの要求を呑んで、ルナナにハルナと同じ
レベルの防具を買ってやって、
新しい雇用主のミット候から、
今交戦中の泥沼化しているバナーム戦線への
援軍としての参戦を要請され、
ようやくそろった傭兵部隊に
1、ルナナが新しい副隊長になるということと、
2、ギニーンとハルナとエレオノーラが暫く抜けるということ
3、次の仕事が悲惨な戦況で知られる泥沼化した
パナーム戦線であることを話したら、
次の日の朝、起きたら、野営してたはずの途中の荒野の
キャンプ地に、誰一人、兵士が残ってなかったのさ」
ボロボは哀れさをにじませながらさらにこう付け加えた。
「また、アッパの港で傭兵を募集したが、
うわさがすっかり広がってて、誰も来なかった。
仕方がないので、ミット候に断りに行ったら、
莫大な違約金、金貨300枚を請求された」
ギニーンが勝ち誇ったように言った。
「いわんこっちゃない。俺の言った通りになったな」
ハルナ「ほんと、叔父さん、ケッサクね」
エレオノーラは黙っていた。
「ルナナがこんどは副王都で娼婦宿をやりたいと言い出したので、
傭兵部隊はやめることにした。副王都でフォグ副王の許可を
受け娼婦宿を開こうと思う。ルナナが女将をやりたいそうだ」
「それが一番あの女には向いてるだろう」
「なのでお前たちには悪いが、もう戻るボロボ傭兵部隊はない。じゃあな」
それだけ言うと、ボロボは馬に乗って肩を落として
アッパの港町の一番高価な宿に宿泊しているルナナのもとへ帰っていった。
「パパはこれからどうする?他の傭兵部隊を探して就職する?」
「いや、お前たちが冒険者で結構うまくやってるようなので、
俺も一緒にいきたい。かまわないか?」
「エレオノーラはどう?」
「私はいいよ」
「なら、決まりよ。これからパパも一緒に副王都に行こうよ。
受けてた依頼の報告も行かなきゃならないんでね」
「そうと決まったら、善は急げだ」
そこへ修道院長の70歳になられる聖チア大僧正が現れた。
賢者を表す紫のローブを纏い紫の賢者の帽子を
被っている上品な顔立ちの小柄な老人である
優しい顔立ちだが目つきは鋭く、
彼の知性の深さと心の気高さを表している目である。
「ギニーン殿、お怪我の具合はいかがですか」
「すっかりお世話になりました。
娘も一人前に育てていただき、感謝の言葉もありません。
これからは親子で暮らしていきたいと思います」
「そうですか、すべては神の御心です。
ハルナよ慈悲心を忘れずにね」
「はい、聖チア院長さま。
お世話になりました。
お元気でいらっしゃってくださいね」
アッパの港町でギニーンの妹のリナの薬屋に寄り、
ハルナは自分の出発を叔母のリナに報告し、必要な薬を分けてもらい、
副王都メジン行の船に乗った