第12話
ジメがギルドの備品売り場で地図を購入し
副王都から3人は馬車でパメリヤへ向かった。
レッサム街道を南西へ、途中で石畳の道は終わり、
荒野の中、道の痕跡がなくなった。
太陽で南を知り、地図に従って進む。
岩だらけの道なき道もようやく、
車のわだちが通れる位の平らな場所を探し進む。
1日目はギルドの外の店で買った弁当をみんなで食べた。
快調で敵も出てこなかった。
2日目、買ってきたパンはあるが乾燥地なのでかなり固くなっている。
馬の健康も考えて、途中の岩山にきれいな泉があったので、
少し早いが昼ごはんにする。
皮の水筒に水をたっぷり入れ、水が見つからない場合に備える。
二人の乙女はジメに
「水浴びしたいからこっちへこないでね」
と言ってから、見えない所で裸になって水浴びをした。
必ず、おっぱいへの水の掛け合いが始まる。
「キャハハハ」「アハハハハ」
楽しそう
ジメは裕福な商人の息子なのに料理も上手だった。
二人が水浴びをしている間に
ジメはちゃっちゃと火をおこし、鍋に水を入れ、
薄く切った干し肉と豆を入れ塩を少しいれ小麦の粉を入れて美味しいスープを作った。
パンは食べやすいように薄く切り、オレンジを1個づつ
「お姉さんたち、ご飯の用意ができましたよ~!」
本当はエレオノーラの方が13歳で年下なのだがジメは年上だと思っている
あとパンの代わりにビスケット。とお茶を入れてくれた。
「これで行程の半分くらいかな?」とハルナ
ジメが「まだ3分の一くらいですね」
夜は、昼間はジメが御者をしなければならないので
ハルナとエレオノーラで交代の見張り。
「たき火を絶やさないようにしてね」
「OK」
途中に敵の襲撃もなく、馬車は5日の早朝、パメリヤの港町についた。
「船でくれば早かったのにね。」
港の砂浜の方から町に入ることにした。
パメリヤの町に入るととても静かで、波の音だけが聞こえる。
ジメが言う
「嘘のように静かで何事もありませんでしたね。
とりあえず、父の店へ行きましょう」
「ちょっとまって、何かおかしい」とエレオノーラが言った。
ハルナも気が付いた「本当だ、生きてる人間の気配がない」
「えっ?!どういう意味?」
エレオノーラは大剣を構えた。
ハルナはカドウケウスを構えた。
「父の店が心配なのでついてきてもらえますか?」
「店はどこにあるの?」
「港のすぐ入ったとこです。すぐそこです」
「行ってみるか」
二人は最悪の事態に備え、身構えながらジメのしんがりを固めてついていく。
ジメは訳が分からず、自分の父の店にとりあえず、案内することにした。
ほんとうに、港の入ったところに、大きな豪華な商館があった。
「ここが父の店です。おとうさーん、ジメでーす!
例の木彫りの像をもってきましたよー!」
豪華な商館には人影はなく返事もない。
「建物に入っちゃだめだ!」とエレオノーラ
「まがまがしい気配だね」「そうだね、そろそろ来るね」「はいな!」
ハルナがエレオノーラの剣に神聖魔法をかけて、
3人に聖なる守護の魔法をかけると、
悪霊を成仏させる聖なる祝福の呪文を詠唱始めた。
なんの前触れもなく、生暖かい風が吹いたかと思うと、
一斉に地面からアンデッドが何十体となく表れた。
「ぎゃぁぁぁぁぁーー!!」ジメはすさまじい叫び声をあげた。
「すべての神の創りたまいし魂たちよ。
守護天使にいだかれ天国へこの祝福によって旅立たん。
神の慈悲と祝福をもって神の御名のもとに天国へ逝かれよ!」
ハルナの最も得意とする敵である。
アンデッドは攻撃する暇もなく現れるなりどんどん消滅し
昇天させられていく。
エレオノーラはジメの手を引っ張ってさっさと
パメリヤの町の外へと連れ出そうとした、そのとき
「あっ、おとうさーーん!!」ジメは悲痛な声を上げた。
アンデッドの中にジメの父親がいた。
エレオノーラが攻撃しようとするのを、
ジメが父親の姿をしたアンデッドの前に
立ちはだかりわが身で防いだ。
「ヤバいよ!ジメくん、そこどきな!」
ジメの背後から、父親の姿のアンデッドがジメの
心臓を狙い爪で一撃で貫こうとした。
エレオノーラはジメを飛び越えると、神聖魔法のかかっている大剣で
ジメの父親そっくりのアンデッドを一撃で切り裂いた。
「ぐはっ!」
アンデッドは光に包まれ細かい光の粒になって消えていった。
向こうから、
「はーい、町中のアンデッドは昇天させたわよ。
これで町は安全になったわよ」
とハルナがにこやかに走ってきた。
しかし、ジメはアンデッドが光の粉になって消え去った
場所につっぷして泣きじゃくり動かなかった。
ひとしきり泣き疲れるまでジメは泣いていたが、ようやく顔をあげると、ハルナに聞いた。
「大僧正さま、このネクロマンシーに使う邪神の像というものをどうやって処分すればいいですか?」
「売ればいいよ。それなら呪術の素材屋で金貨200枚には売れるよ」
「それって、また他の誰かがネクロマンシーに使うんでしょ?」
「そうだね」
「燃やせば、使えなくなりますか?」
「いや、燃やして灰にして使うんだけど、その像は」
「じゃあ、粉々にしたら使えなくなりますか?」
「粉々にしたら、使えないね」
「女剣士さん、これを粉々にできますか?」
「できるけど……それであなたの気が済むのね?」
「はい……お手数ですが、お願いします」
「じゃあ、それを持って動かずに立ってて」
「は、はい?」
ジメは邪神の像を両手で持ち、動かなかった。
エレオノーラは大剣を斜めに持ち、暫く、あさっての方向を向いて呼吸を整えていた。
と、大剣をゆらりと動かしたかとおもうと、見えないほどの速さで数回動かした。
ジメが手に持っていた木彫りの邪神像は、その瞬間に粉々になっていた。
「はい、これでいい?」
とエレオノーラはジメに聞いた。
「ありがとうございました」
そのとき何もしらない船が港に入港してきた。
「おーい、桟橋にいつもの係留ロープを投げてくれる
人夫がいないんだが、どうかしたのか?」
と船の船長らしき人物がジメたちに大声でたずねた。
「ジメくん、これにサインしてもらえるかな」
ハルナがギルド依頼の終了書とペンを出してジメにたのんだ。
犯人もなぜ町中の人間がアンデッドにされたかも
理由はわからなかったがジメがサインして、
二人の仕事は終わった。