イチゴの重み
僕たちは今悩んでいた。遊部メンバー七人でホールケーキを食べるところまではまだよかった。しかし、三六〇度を七で割ると・・割り切れない。それはまあ部長のケーキを六〇度にすればいい。しかし、イチゴが五個しかないのだ。
うちの部活ではイチゴを切ってはいけないという良く分からないルールがあるため、最低二人は食べられないということになる。あいにくみんなイチゴが好きなので、譲り合いの精神などは生まれなかった。
「部長どうしましょう?」
部長に尋ねる。
「喧嘩にならねえようにアタシが全部食べてやろう。」
その言葉に腹を立てた僕は、部長に平手打ちする。
「おかしいでしょう。ケーキ六十度食べれるんですから部長はなしです。」
「ちっ。今回は見逃してやろう。で、もう一人は誰なんだ?アタシより格下は?」
確かにもう一人は、イチゴがなければケーキも五十度。確かに格下だ。
「とりあえず、じゃんけんします?」
「おまえ、こんなに重要なことをじゃんけんで決めるのか?」
「いいじゃないですか。早くしないとケーキの味落ちちゃいますよ?」
「仕方ない。じゃあ、じゃんけんしろ。」
じゃんけんの結果、最後まで残ってしまったのは、僕と楓さんだった。楓さんは無口なほうであんまり喋らない。
「じゃあ、楓さん。じゃんけんしよっか。」
「・・・いちご、食べたい。」
楓さんが少し上目遣いでこっちを見てくる。まるで、イチゴを諦めてくれと言わんばかりに。
迷った末に決断した。
「分かりました。イチゴは楓さんにあげます。」
「・・・ありがとう。」
そういって首をかしげながら笑う彼女は、子供のようだった。正直譲り合いがない時点で、全員子どものようなものなんだが。
今日の部活はケーキを食べることでしたとさ。
今回の自遊部規則 いちごは切ってはいけない。