美少女が弟子入り志願してきた
主人公と美少女達のラブコメです。
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「ごめんなさい……」
放課後の屋上。
俺の目の前に立つ女子学生はそう言って深々と頭を下げると、逃げるように屋上の出入り口の方へと駆けて行った。
俺、柄木田二郎はそんな彼女の後ろ姿を眺めながら立ち尽くすことしかできなかった。
俺、たった今、失恋した。
好きだった同級生に告白をして断られたのだ。
あ~やっちまったよ……。
明日からどんな顔をして彼女と顔を合わせればいいんだよ……。
まあ、クラスが違うのが唯一の救いと言えば救いだが……。
大きなため息を吐くと女子生徒が出て行った屋上唯一の出入り口へとゆっくりと歩き出した。
が、
「凄い……」
少し歩いたところで背後から突然、そんな声が聞こえた。
え?
屋上には俺しかいないと思っていたから、そんな声が心底驚いた。
足を止めて振り返ると、一人の女子生徒が立っていた。
見覚えのない少女だった。
そして、その女子生徒はとびっきりの美少女だった。
女子生徒はじっと俺のことを見つめている。
「きみは?」
「わ、私、一年の紗々木澄花って言います……」
紗々木澄花?
聞き覚えのない名前だった。
「一つ聞いてもいいですか?」
紗々木澄花は俺を見つめたままそう尋ねた。
「いいけど……なんだよ?」
「も、もしかして今のってその……失恋ですか?」
「はあ!?」
何言ってんだこいつ……。
そのあまりにも不躾な質問に俺が何も答えられずに黙っていると、紗々木澄花は一歩近寄って再び質問をする。
「あなたは今、あの女子生徒にフラれたんですか?」
「俺のことからかってんのか?」
「わっ!? す、すみません。もしかして今、私なにか失礼なこと言いましたか?」
「いや、失礼なことしか言ってないですけど」
なんなんだこいつは……。
俺がそう言い返すと、紗々木澄花は何度も「すみません」と言ってぺこぺこと俺に頭を下げた。
そんな彼女に俺は何も答えずに背を向けて歩き出す。
が、
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!」
紗々木澄花はすぐに俺を呼び止めた。
「なんなんだよ……」
「あの……あなたに頼みたいことがあるんです……」
「はあ? 俺に何を頼むんだよ……」
呆れたようにそう言うと少女は俺の真ん前まで駆け寄って来た。
そして、俺の顔を真剣な眼差しで見つめたまま口を開く。
「私を弟子にして欲しいんです」
「弟子? 何の話だよ。どうして俺はお前を弟子にしなきゃなんない……」
「私、あなたみたいに失恋がしてみたいんです……」
「おい、マジで殺すぞっ!!」
「私、本気なんですっ!!」
「いや、本気って言われてもだな……」
そう言うと紗々木澄花は深々と頭を下げる。
「お願いしますっ!! 私に失恋のやり方を教えてくださいっ!!」
茜色に染まった屋上に秋を告げる少し肌寒い風邪がひゅーっと駆け抜けた。