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第27枚 <十禍絶傑>をランキングしてみよう。

 ここはとある県庁所在地にある、山の方。いつものサティスファクション都邸からは山越えしないならだが、相当時間がかかる場所である。

 そこに二者がいる。

 一者は膝をつき、頭を垂れている。だがその存在感が酷く希薄で、見た目も靄に隠れて上手くとらえられない。かろうじてへりくだっているのが分かる有様だ。

 もう一者は地蔵の上に座って、つまらなそうな表情をしている。見た目は中性的で、どちらともつかない。そもそも、妖怪なので性別は人間のそれに比べて自由度が高いが。

 そう、この場所にいるのはどちらも妖怪である。その妖怪の、座っている方が言う。

「して」

 その言葉には圧があった。実際に重みがあるかのようである。それに、靄を纏った妖怪が答える。

「お望みの品、確かに」

 恭しく、靄を纏った妖怪は水晶を取り出した。

「ふむ」

 座っている妖怪はそれを手に取る。

「ふむ」

 眺める。

「ふむ」

 投げ捨てる。

「あっ」

 靄を纏った妖怪が、声を漏らす。それに対して、座る妖怪はつまらなそうに声を出す。

「謀られたな」

「謀られた?」

「あれは紛うことなき贋作」

「まさか!」

 靄を纏った妖怪が驚くが、座る妖怪は特に無気力そうな表情を変えない。

「とはいえ、あの妖気の満ち方は、真作を知っていないと見抜けぬものではある。謀られて当然。というよりは、この件、露見していたか?」

「それこそまさかです、主」

「で、あるな。ことを知っているのはわしと貴様のみ」

 だが、と座る妖怪は続ける。

「あれを何が何でも求めることはバレた。その核心は露見はしていまいが、一つ面倒になったのは確かだ。それにあの三体が使えなくなった」

 はあ、と座る妖怪は息を出す。

「新たな尻尾を探すのが面倒であるな」

「その辺りは、私めに」

「頼りにしている」

 つまらなそうにそう言う座る妖怪に、靄を纏った妖怪は恭しく頭を垂れる。

「お任せください」

 そう言うと、その妖怪は靄が消えるままに存在感を消して、そしていなくなった。

 座る妖怪は、独り言ちる。

「さて、お嬢様方はどこまで分かっているやら」

 座る男は、影に染み入るように、消えていった。


「でだ」

 ここはある県庁所在地の住宅街の一角。というか端っこ。ゲーマー妖怪の住む妖怪屋敷である。そこで、ゲーマー妖怪のサティスファクション都が、詰問を受けていた。

 詰問しているのは、ポニーテールガールの城茂美と、サティスファクション都の遣いである妖怪のニシワタリだ。ちなみに犬飼美咲が脇にぽつんと座っている。

 さておき。

「詰まる所、あれは偽物であったと」

「うん」

「どうして、それを追わせたんデスカネ?」

 サティスファクション都の視線が宙を舞う。

「えーと、迫真性よ。ガチで調べれば、あれが偽物だとばれてしまう可能性があったの。でもすぐに追えば、その暇はない。それに、そんなだとすぐにでもボス格に持って行くでしょうしね。それに」

「それに?」

「敵を欺くにはまず味方から」

 真顔で言いきるサティスファクション都に対し、ニシワタリは詰める。

「敵を欺く以上に味方を欺きたかったの間違いデハ?」

 視線がかち合う。すぐにサティスファクション都のそれは下にそらされる。そして。

「……ちょっと」

 茂美とニシワタリ、一発ずつのゲンコツが飛んだ。


「いやあ、へマしたな!」

 サティスファクション都邸の一角。座敷牢に入れられてそう言うのは、男の妖怪。隣で寝そべるのは女の妖怪。そして更に隣に体育座りの妖怪拷問吏アンロ。

 外でその悔恨を聞くのは、サティスファクション都と同格とされるゲーマー妖怪のパッション郷だ。一緒にいるのはお付きのシシデバルだ。

 アンロはあくまで軽い感じの男の妖怪に、苦言を呈する。

「あなたね、ヘマじゃすまないですよ、これは。こっちが必死にお膳立てしたというのに」

「いやでもな、これは俺たちに非は少なくないか? あれが偽物なのを持って行った奴が気付かなかったって案件なんだし」

 男の言に、女が同意する。

「まあ、そうだねえ。こっちは出来ることは全部したはずだしねえ。こっち自体には何の落ち度もないくらいきっちりしてたよねえ」

「なら、先の情報収集が今一だったのが敗因とも言えます」

 アンロの言に、男は不思議そうな顔で答える。

「あのなあ、今更点数稼ぎみたいなことしてどうするんだよ。もう依頼主から切られてるに違いないんだぞ?」

「そうだよ。今は少しでも向こうに恩を売って量刑下げてもらうくらいしかすることないよ」

「……」

 男と女の正論にアンロが黙ったところで、パッション郷が口を開く。

「あなた達の処遇は私に一任されています。この意味が分かりますね?」

「機嫌を損ねるないようにチャキチャキ情報を吐けって言うんだろ? 分かってるよ。だが」

「それ程知っていることはない?」

「そっちも分かっているじゃないか」

 女の妖怪はそう言って続ける。

「依頼主についてもほとんど知らないぞ。大体連絡も数分で終わったしな。分かっているのは靄のかかった謎の妖怪だってこと。それと、その上に更にいそうだな、ってことくらいしか分からん」

「右に同じ」

 男の妖怪もそう追従する。そこから「ただ」と続ける。

「あの水晶の本物に対する執心は相当のものだと思うがね。ここまで七面倒くさい奪取計画を練るくらいだ。まだ一つ二つ、ネタがある可能性は否定できないね。俺らは知らんが」

「アンロはどうです?」

「……」

「あんちゃん、喋った方が身のためだぞ? あんたは特にだ。スパイだった訳だしな」

「そうそう。どうせこっから助けに来る可能性は低いしね。それに、こっちよりは沢山知っていることあろうんだろうし、言った方がいいって」

「……」

 しかし押し黙るアンロに対して、パッション郷は何も言わない。特に表情も変えない。

 そして言う。

「シシデバル。サティスファクション都を呼んできなさい」

「はいー、おひい様ー」

 シシデバルが、言われてサティスファクション都たちの居る部屋へと向かっていった。それを確認して、パッション郷は一言。

「さて、これでいい」

 その瞳が妖しく光った。


「おひい様、何をなさるおつもりだろうか」

 座敷牢からの移動中に、シシデバルはそう独り言ちる。お付きとなったのは京に都があった頃だ。それから長い年月仕えている。知らないことは無いと強弁できる関係だ。だが、それでも稀にこういう、遠ざけることをする。その後のことは大体。

「……ここで血生臭いことはなさらないとは思いますが」

 同じくらい付き合いの長い相手の屋敷で、そういうのはないだろう。保証はないが、シシデバルはそう思うことにした。

 そう考えている内に、ゲーム部屋となっている和室に到着する。何やら騒がしい。

「失礼しますよー。サティスファクション都さ」

 言いきらぬうちに声が飛んでくる。

「だーかーらー、そいつは絶対10位! 最高でも9位!」

「んなわけねーデショ! 絶対覇権取りマスヨ! 壊れ!」

「かー! 壊れてるわけないでしょうが! むしろ毎度腐ることすらあるわよ!」

「十分デスー。きっちり局面を変える可能性はありマスー」

「ねーよ! そんなもん!」

「あーりーマースー!」

 サティスファクション都とニシワタリが喧々諤々だ。その脇で、美咲と茂美がキャッキャウフフしている。茂美の方が一方そうしているけど、美咲の方は気づいてない感じではあるが。

 そちらの方が組み易しと見て、シシデバルは美咲と茂美にへらへらと声をかける。

「この騒ぎー、何ですかー?」

 茂美が明らかに邪魔するなという怒りの雰囲気を出しているが、それは無視。美咲に照準を合わせる。その視線に、美咲は答える。

「えーとね、そろそろ次の弾じゃない?」

「次の弾ー? 『シャドウバース』の、ですかー?」

「そうだよ。次の、<十禍絶傑>だけど、その出てくる十禍絶傑の10人の優劣をつけてみよう、って話になったの」

「でー、白熱しているとー」

「昨日のことで鬱憤溜まっているっているのもあるけどな」

 如何にもこっちも鬱憤溜まってますアピールをしている茂美を余裕で無視して、シシデバルはへらへらと。

「えーとー、サティスファクション様を呼ぶように言われているのですがー」

「うーん、ちょっと難しいかなあ」

「ですよねー。ちょっとヒートアップしている感じですー」

 と。そこでシシデバルがいるのに、サティスファクション都が気付いた。

「あっ、シシデバル。いいとこ! ちょっとこっち来なさい」

「えー、あのー」

「いいから!」

 有無を言わせない雰囲気だったので、シシデバルは仕方なしに付き合うことにした。

「えーとー、これは何の集いなのかは聞いてますがー」

「なら話は早い。じゃああなたに決めてもらいマショウカ! <十禍絶傑ランキング>を!」

 そう言うと、ホワイトボードが突如現れ、そこにサティスファクション都がスラァと文字を書く。


<十禍絶傑ランキング>

 と。


 わりと時間がかかりそうだと、シシデバルは腹をくくる。おそらく、あまり早く連れて行ってもいけないだろうとは察しているので、ここはこの騒ぎに乗って時間を作ることにした。


 シシデバルが十禍絶傑を一通り確認し終わったのを確認すると、サティスファクション都が問いかけた。

「いいかしら、シシデバル」

「ええー、まあー」

「じゃあ、10位から言ってみマショウカ。どれだと思いマスカネ?」

 非常に興味津々で、且つこっちの意にそぐわないと酷いぞコラという暗の圧力多めで迫ってくるサティスファクション都とニシワタリ。どこをどうしても針のむしろなのは確定的である。

 なので、シシデバルはその辺をすっぱり諦めた。角が立つなら立てだ。

「10位はー」

「「10位は」」

「<唯我の絶傑・マゼルベイン>ですねー」

 サティスファクション都とニシワタリは、しばし沈黙を溜める。先に口を開くのはサティスファクション都だ。

「理由を聞きましょうか」

 わざとらしく重い口調である。面倒な状態に入ったなあ、と思いつつ、シシデバルは言の葉を紡ぐ。

「単純に、自身以外のカードを一枚制限にしたデッキじゃないと能力を発現出来ないのが今一判定ですねー。付属する能力は美味しいですがー、構築が難しいでしょー」

 うんうん、とニシワタリ。対してサティスファクション都は表情が険しい。

 その口が開く。

「あなた」

「はいー」

「ハイランダーを増強してくれる運営の気持ちが分からないの? 鈍感にも程があるわよ?」

「知らねーにも程がありますよー」

「サティスファクションはそいつを結構かっていたんデスヨ、8位くらいでしたっけ?」

「4位よ! あんたは同じく10位だったわよねえ!?」

 そうですよ、とニシワタリ。続ける。

「特殊なレジェンドは、いつもなら強い構築が生まれれば、デスガ、ハイランダーは一枚制限というその性質上、構築しても運が強く求められマスカラネ。上の方にはいかないデスヨ」

 今にも取っ組み合いになりそうな空気だが、それはサラっと無視し、シシデバルは言う。

「あー、次に行っていいでしょうかー」

「「……」」

 喧嘩の空気を削がれて消化不良を見せつつも、サティスファクション都とニシワタリは、シシデバルの言葉を傾聴する姿勢を見せた。

 それを確認して、シシデバルは続けることにする。


「第9位ですがー、ここは<安息の絶傑・マーウィン>ですねー」

「「……」」

 また沈黙を溜めだした。重々しさでも出そうとしているのだろうか。その辺はどうでもいいシシデバルは理由を語る。

「とりあえずー、PP、カウントダウン、回復、ドローの4つの効果はいいんですがー、これは相手も同じように恩恵を、なのがですねー」

 サティスファクション都は得心のいった顔で頷く。

「PPブーストは美味しいけど、でも相手もだしねえ」

 ニシワタリも得心のいった顔で頷く。

「アミュレットのカウントダウンを1つ進める、というのはかなり使えると思いマスガ、相手もでスシネエ」

「ここは仲がいいですねー」

「私も、ニシワタリも、あなたと似たり寄ったりだからね」

「ほんの少し高いくらいデス」

「へえー、わちきより少しとは言え、高めの判定なんですねー」

 サティスファクション都はこくこくと。

「こっちの待ち受け態勢次第で、かなり使える可能性はあるからね。その分の幅、って感じかしら」

 対するニシワタリは冷笑する。

「サティスファクションは単に難しいネタがあると飛びつくだけデスカラ。単なる偏屈デスヨ」

「……ふふーん?」

 余裕ぶっている雰囲気を出しているが、図星なのだろうなあ、とシシデバル。

「さてー、次に行きましょうー」


「8位ね」

「8位デスネ」

 また圧。でもシシデバルは動じない。

「8位はー、<沈黙の絶傑・ルルナイ>でしょうかねー」

「ナンデ!?」

 大きく声を出したのはニシワタリである。先ほどの冷笑の様から打って変わって、動揺の色を隠せていない。

「ナンデ……、ルルナイ8位ナンデ……」

「なんか悪いことしましたか、わちき」

 流石に変な動揺を見せるニシワタリに、シシデバルは混乱する。サティスファクション都がフォローを入れる。

「ニシワタリはルルナイを1位だと言って聞かなかったからねえ」

「サティスファクション都様は?」

「10位よ? ファンファーレ能力が効くか効かないか分からないなんて論外よ」

 そういうサティスファクション都に、ニシワタリが卑屈な顔で訴えかける。

「確かに、相手ターン終了時まで相手のスペルのコスト+3は、相手の手札状況に左右され過ぎマス。デスガ、局面さえ読めていれば、かなり刺さる能力なんデスヨ!?」

「場合によってはね? でもスペルがなかったらネクロマンスが無駄になるのが、どうにもねえ」

「それはちょっと否定できないデスガ、3コスト3の3という恵まれたステータスと、3コストゆえにアーカスネクロに加入しても使えるという利点もありマスヨ!」

「私、アーカスネクロ嫌いだし」

「好き嫌いで理屈を捻じ曲げマスカ!?」

 また喧々諤々になってきたので、シシデバルはそれを無視して次に移ることにした。

「7位、行きますよー?」


 シシデバルは言う。

「はいー、7位ですー。<真実の絶傑・ライオ>」

「「ナンデ!?」」

 おおっと、二人ともか。とシシデバルはのけぞる。圧も強くなるが、とりあえずここは、と理由を述べる。

「デッキにあるカードのスぺブを9増やすー、確かに中々強力というかー、今までのデッキ構築をサラっと見直すレベルではありますー」

「なのに7位!?」

「落ち着いてくださいー、サティスファクション都様ー。この理由はー、コストが7と若干以上に重いということですー」

「「うぐっ」」

 図星が刺さった模様である。それをしっかりと確認しつつ、シシデバルは話を続ける。

「コスト7までならー、普通にスぺブしても結構いけますー。そしてー、ライオ以降に上手くスぺブしたカードを引けない限りー、その効果を上手く使えないのが微妙なんですー」

「……一応、スぺブカードをドローする能力持ちがいるけど」

「そこまでのお膳立てが必要なのはー、それはそれで難しいかと思います―」

「むぐ……」

「トイウカ、シシデバルの基準というのは、わりとそれ単体で成り立つ、みたいなところがありマスネ」

「十禍絶傑はー、どれも単体より組み合わせですけどねー。出来るだけそれだけで強いのがいいですねー」

 では、とシシデバルは次に向かうと宣言する。

「6位です」


「6位」

 サティスファクション都が続けるように言うと、それに乗るように、シシデバルは言う。

「6位は<不殺の絶傑・エズディア>ですねー」

「「成程」」

「揃いましたねー」

「私も、ニシワタリも同じくらいの位置だからね」

 うんうん、とサティスファクション都とニシワタリ。

「ファンファーレ能力は、相手リーダー体力を強制的に6までにするデシタカ。強力と言ったら確かに強力デスガ、エズディアのコストが10なのが微妙なところデス」

「そこなんですよねー。単体で中々強力な効果、ではありますが、組み合わせの結果で効果をより発揮するタイプーですー」

「素早く相手に6点を与える方法さえあれば確実に強いんだけど、今の所どう頑張っても勝利が最速11ターンなのが難、と言った所かしら?」

 サティスファクション都の言を肯定しつつ、続けるシシデバル。

「アンリミならもっと早く出来そうですねー。その辺は今後の研究次第でしょうかー」

「次に行きまショウ」

 ニシワタリが先を促した。


「5位ですー」

「折り返しね」

「ですねー。5位は<破壊の絶傑・リーシェナ>」

「いいターンね」

「意味不明な賛辞ありがとうございます」

 謎の賛辞に対し謎の返礼をするシシデバルを、ニシワタリがせっつく。

「やはり、単体での完結度は確かに高いやつデスネ」

「こいつくらいになるとー、むしろ他の能力を有効に活用出来る、ってなってますねー」

「自分のとこのを破壊すると効果が出る能力に、、出すアミュレットがうってつけなのよね」

「破壊効果は発動して、能力の効果は受けるけど、それは破壊されナイ、デシタカ」

「そうらしいわね。ついでにリーシェナ自体も破壊耐性があるから同じように出来る、と。私も高評価だわ」

 ですよねー、とシシデバルは受けると、弱点を補足する。

「本体のステータスがコスト帯にしては弱めな点だけが残念ですねー。次に行きましょうー」


「第4位、はー、個人的には二体いますねー」

 シシデバルの発言に、サティスファクション都はほんのり色めき立つ。

「同率3位ってわけね? ここであえてぶっこんでくるの、好きよ?」

 知らんがなと心中思いながら、おくびにも出さずにシシデバルは言う。

「同率3位は、<簒奪の絶傑・オクトリス>と<飢餓の絶傑・ギルネリーゼ>ですねー」

「理由を述べてもらっていいかしら?」

 シシデバルは頷く。

「まずオクトリスー。相手フォロワーのラストワードを簒奪するー、というレアな能力はハマれば強力でしょうがー、そっちよりもー、エンハンス8で攻と体+2に無料進化権とPP回復ー、そして進化すれば黄金シリーズを二枚手札に加えるという盛り盛りなとこがいいですねー」

「自己で完結している、を少し超えるくらいなのがいいのね?」

「そうですねー。8コスト6の7突進に黄金シリーズスペルを二つ使う余地もありー。それだけでも完成度が高いといえるでしょうー」

「もう一体、ギルネリーゼは?」

「フォロワーに攻+2のバフが大きいですねー。ぶっちゃけ簡易ヘクター将軍なのにニュートラルですからー、並べる系デッキにはぶち込まれるのが目に見えます」

「こっちは自己完結具合は弱めに見えるけど?」

「潜伏とドレインは評価対象ですよー? ほぼ確実に一発殴って回復も出来る。雑に強いですよー? 後、相手にもですけどドロソでもありますしー」

「成程ね。で、次まで同率?」

「なわけないですよー。ということで第2位の発表ですー」


 一人ダカダカ言い出すシシデバル。一通り盛り上がった後に、サティスファクション都が効く。

「で、第2位は?」

「突然ノリ悪くなりましたねー」

「ああん?」

 失言失言。シシデバルは下手に出る。

「ええとー、<姦淫の絶傑・ヴァーナレク>なんですねー」

「その辺が順当デスヨネ」

「1位ルルナイの奴が言うな」

「んだと!? ルルナイ一位ありマスヨ馬鹿にすんな!?」

 またぞろ揉め出すのを無視して、シシデバルは言う。

「ファンファーレの方の性能が高いのがポイントですねー。相手のフォロワーを1体破壊しー、攻体ともに+1して疾走を持つー。ついでに自傷ダメージがあるたびにー、ターン移ってからとはいえ+1。自傷ヴァンプでの採用はほぼ確定的な一枚ですー」

「自傷7回じゃないとファンファーレが、なのが今一つだと思うだけどねえ」

「明確に強いタイプは、すぐに敬遠するのがサティスファクションの悪い癖デスヨネ」

「るさい!」

 おーこわ。とシシデバルは自分に被雷しないように気を付けて発言する

「その分ー、自己完結度合いは高いですねー。自傷ヴァンプに特化している点だけがー、ですがー」

「その辺りが1位に成れなかった要因な訳ね」

「ええー、そうですー」

 それじゃあ、とサティスファクション都は告げる。

「で、1位は?」


「ここまでくれば言わずともわかるでしょうが敢えて言うとー、<侮蔑の絶傑・ガルミーユ>が1位ですー」

「納得」

「納得」

 同じ言葉を、若干ニュアンス違いで言うサティスファクション都とニシワタリ。前者は苦々しげに、後者は嬉々としている。その辺はどうでもいい。として、シシデバルは続ける。

「ガルミーユは侮蔑軸というのがきっちり打ち出せる強さなのがいいですねー。進化してから盤面と顔に同時にダメージが出る能力を持つのが破格ですがー、自身の能力で自傷から進化出来るのも完結具合がいいですー。削れる体力が4点までなのが難点ですがー、それでも上手くやれば顔に9点くらいと引き換え、も可能ですー」

「侮蔑軸は、他の十禍絶傑に比べてすることが明確且つ防ぎにくく、そして強い。けっ、大したことだわよ」

「本当に明確なパワーカード嫌いデスネエ」

「性分だからね! へん!」

 妙な方向にへそを曲げている感じのサティスファクション都。ちょっと触れたら危ないかもだが、それでは主の命に背くことになる。それに、そろそろだろう。

 なので、シシデバルは覚悟を決めてサティスファクション都に向き合った。

「サティスファクション都様」

「あん?」

 相手は予想以上に柄が悪くなっている。が、そこはどうでもいい。話をするだけだ。

「パッション様が、座敷牢の方にご足労願いたいと」

「……何か分かったの?」

「あるいは、今分かろうとしているのかと」

「あー」

 サティスファクション都はすぐさまに察したらしく、不機嫌さが倍増していく。

 不穏に言う。

「ここ、私の家」

「はい、理解しております」

「あいつは、理解してないんじゃないの?」

「そのようなことは」

 ずい、サティスファクション都はシシデバルの顔にぶつかる勢いで接近する。妖気の圧が強くなっている。遠くで見ていた美咲と茂美がぎょっとするくらいに。

 だが、シシデバルは冷静である。並の胆力では、パッション郷に仕えることなどできないのだ。

 そして言う。

「そのようなことは、有ろうはずがございません」

「……あんたの豪胆さに免じて、喧嘩しないであげるわ」

「ありがとうございます」

「そうよ、感謝することね」

 そう言うと、サティスファクション都は座敷牢のある方向へと歩き出した。そして扉の前で言う。

「予め言っておくけど、しばらくこっちには来ない方がいいわよ。シシデバルでもね」

「ということは、ワタクシは凡人を止めておく役デスカ」

「そういうこと。どうせ暇だろうから、美咲たちにも<十禍絶傑ランキング>やっておくといいわ」

 それだけ言うと、サティスファクション都は扉の向こうへと歩き去った。

この話、どう閉じたものやら。不定期にも不定期だし、フェードアウトでもいいんだけど、やっぱりケッチャコ……、はつけないとねえ。

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