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第26枚 DBNを振りかえってみよう。

 そこは妖怪サティスファクション都の屋敷。からほど近い位置。もっと言えば門から少し出た辺りである。そこに、どえらい音を立てて、妖怪のニシワタリと人間の城茂美が出てきていた。どちらもやや煤けているのは、結界の影響を無理やり突破したからである。

「というかだね、もうちょっと穏やかな選択肢は無かったのかと!」

 茂美がそう訴えるが、ニシワタリはどこ吹く風である。

「バカデスネエ、城。あったらそれを優先的に使ってるに決まっているデショウ」

「そりゃそうだが!」

 という間に、ニシワタリは走り出す。

「ちょっと!」

「言ってる暇はないデスヨ! 結界突破にちょっと時間がかかり過ぎマシタシネ!」

「ああもう、ままならない!」

 茂美も、ニシワタリの後を追う。美咲の姿はもうかなり小さくなっている。


 何故二人が美咲を追うことになったか、というのに若干の補足が必要だろう。

 と言ってもそれ程理解に面倒なことは無い。

 妖怪拷問吏アンロが、サティスファクション都とニシワタリ、そして城茂美を足止めしようとして、ニシワタリが結界と言ったそれを張ったのを、ニシワタリと茂美が強引に突破した、というだけのことだ。だが、サティスファクション都は出てきていない。

(てっきり一緒に来ていると思っていマシタガ)

 その辺りはニシワタリのあてが外れたところだ。あるいは、アンロとあの男の妖怪が二人して足止めを、と考えるべきだろうか。

(どっちにしろ、美咲さんを止めるのは私と城の仕事、ということデスカ)

 そう思考しながら走るニシワタリに、茂美が問う。

「にしても、美咲あんなに足速かったか?」

 腐っても退魔師の一族である茂美は、妖怪の足にもついてくる。だが、確かに美咲は普通の女子学生だ。匹敵するものがあるはずがない。通常ならば。

「その点に関しては、同級生の城の方が詳しいのではないデスカネ?」

「分かっているから言ってるんだよ! あれは、何か妖力である程度ブーストされていると見るね!」

「そういう接触が、本日ありマシタカ?」

「今日は美咲が一足先に行っちゃたから、その辺は分からない! でも、怪しいとみるべきだ!」

「面倒くせえデスネエ……」

 疾駆する二者。幸いなことに、美咲の姿はまだ視認できる。つまり脇に曲がらずまっすぐ走っている。

 そして、徐々に美咲の姿が大きくなっている。つまり速度的にはこっちが上だ。このままいけば、捕まえられる。

(そう、このままいけば、デスガ)

 懸念を思うニシワタリに、茂美が問いかけてきた。

「というかニシワタリ君! いつもの胡散臭いテレポーテーションはどうした!」

「胡散臭くて悪いデスネエ! あれは、今は使えないんデスヨ!」

「どうして!」

「分かりマセン! むしろこっちがどうしてって聞きたいくらいデスヨ!」

 というのは嘘である。大まかな理由は分かる。だが手の内を明かす訳にはいかないので、誤魔化したのだ。壁に耳あり障子に目ありである。路上だが。

(誰かが、ワタシを監視している、ということデスガ、そこまでワタシの能力の弱点は知れ渡ってはいないはず。となると、あの男と一緒にいた女辺りが怪しいデスナ)

 監視者がどこかにいる。ということはこの美咲の行動は予め計算されたものだった、ということになる。そして、ここでニシワタリが出てくる可能性があることも。

(中々ヤバい相手かもしれマセンネ、こいつは)

 そうやっている間にも、距離は詰まっている。その上、美咲は何を思ったか袋小路に繋がる道へと進んでいる。

「待て、美咲!」

 美咲が袋小路に入る。それを、茂美が猛追する。そしてニシワタリがそこに入ろうとしたその時。

 そこに門が現れた。

「ぶべらっ!」

 無様な声を出して、門にぶつかったニシワタリは地面にひっくり返る。すぐに起き上がるも、その門はそこにある。

「……、これはどういう事デスカネ」

 自問、ではない。詰問だ。それに答えるのは、背後の者だ。

「単純なブービートラップだよ。本当なら、君が入るはずだったんだがね」

 その姿に、ニシワタリは見覚えがある。先ほど予想した、自分を捕まえた時にいた、女の妖怪だ。

「どういう仕組みで?」

「教えると思うかな?」

「デスヨネ。じゃあやりましょうか」

 そう言って、ニシワタリは好戦的な笑みを浮かべ、女の妖怪と対峙した。


(美咲。美咲)

「うーん」

(起きろって、美咲!)

「うーん、もうちょっと寝かせてあと五十分」

「全然もうちょっとじゃねえよ、その時間は!」

「ふわ!」

 犬飼美咲が目を覚ました。目の前には親友である城茂美。いつもポニーテールが揺れていた。

 次いで、場所を見る。ベッドの上だ。茂美が美咲の上に覆いかぶさるように。

「どういうこと!?」

「それはこっちが聞きたいよ、ってなんか誤解してないか、美咲?」

「茂美ちゃんとは、そりゃあ親友だけど、でもそれ以上というのは」

「誤解しているな、美咲。別に僕がこの状態にした訳じゃないからな? いつの間にかこの部屋に居て、君がベッドに寝ていたから、起こそうとしただけだからな? そりゃあ、確かに据え膳だったけど」

 最後がちょっと聞き取れなかったが、とりあえず変なことをするつもりだった訳ではないと分かった美咲は、更に状況を見定める。

 ここは部屋、だろうか、天井はあり、壁はあり、床もある。外ではないのは確かだ。

 というより、そもそも。

「なんであたし、部屋の中に? 都ちゃんちに向かってたから、道にいたはずなんだけど」

「やっぱりそういう感じなんだな。都君のとこで、色々あったの、覚えてない? いきなり走り出したりしたのとか」

「全く覚えがないよ」

「そうかー」

 そう言うと、茂美は覆いかぶさる姿勢を止め、ベッドの縁に座りなおした。

「となると、ここについても分からない、と見ていいか?」

「そもそもここはどこなの?」

 うーん、と茂美は難しい顔をする。これは頼りにならない、と悟った美咲は、部屋を見定める。

 とはいえ、只の部屋としか言いようがない場所だ。ベッド以外は何もなく、のっぺりとした空間である。色調も暗く、唯一色が濃いのが扉だが、そこは固く閉ざされている。

「あそこから、出られないの?」

 美咲の指摘に、茂美が堪える。

「ああ、あれは開かないんだ。全く動かない」

「開かないんなら切ればいいんじゃない?」

 茂美は眉間にしわを寄せて、困ったと言わんばかり。

「思考が物騒になっているのは都君たちのせいかな」

「いやでも、ぶった切っちゃえば」

「試したよ。無理だった」

「……無理って、これ只の扉じゃない訳だ」

 美咲の言葉に、茂美は頷く。

「僕の思念刀は鉄くらいなら楽に切れるが、これはそう言うのじゃないみたいだ。強力な妖力的な力を感じる。僕が切れないんだから、並の物じゃあないね」

 茂美の言葉に、美咲は成程、と理解を示す。そして、となると、と言うと、

「どうすれば出れるタイプなのかな?」

 と質問した。

「それはよく分からないね。何の例示もないし」

 と。

 するっ、と垂れ幕が扉の横に降りてきた。

 そこにはこう書いてある。

『シャドウバース<起源の光、終焉の闇>の収穫カードについて述べるまで、出られない部屋』


 垂れ幕をしばし呆然と眺めていた美咲と茂美だったが、美咲から口を出す。

「どう思う、茂美ちゃん」

「どう思うも何も、冗談だと思う」

「だよね」

「どっかに何か、他の条件みたいなのが」

「無い」

「「うおわっ!」」

 突如の声に、美咲と茂美は同時に戦き声を出す。いつの間にか、ベッドの脇に人影が立っていたのだ。

 それは、確かに何者かだが、何者かよく分からなかった。姿に靄がかかっていて、全体像が朧気にしか分からないからだ。あるいは、その靄がある程度固まったのが、姿なのかもしれない、と茂美は類推する。

 その何者かが、言う。

「単に時間稼ぎだ。とはいえ、予定していた相手ではないのがネックだ。大勢に響かなければいいが」

「あなた」

「とにかく」

 と美咲が問いかけようとするのを、何者かは無理やり言葉をのせて逸らす。

「DBNでの収穫、つまりこれはこのレア度では優秀だ、というの挙げていけ。基本的に優秀なレジェンドは無しだ。そしてそうしなければ、いつまで経っても出られないから、餓死るぞ」

「食べ物は?」

「その前に、“渡せ”」

「あ、うん」

 言われるがままに、美咲は持っていた水晶玉をその靄に渡す。

「美咲!?」

「ん、あれ?」

「では、俺は行く」

 そうやって言うだけ言ってやるだけやって、何者かは靄のように消え失せた。

 あまりに一方的な話だったが、そういう無茶にはサティスファクション都と付き合ってから慣れっこなので、たぶんさっきの何物かの言葉も真実なんだろうなあ、と美咲は思った。この思考自体がかなり無茶だが、それはさておき。

「どうしようか」

「いやその前に、なんであれ渡しちゃうんだよ!」

「あれって?」

「水晶玉だよ、水晶玉! あれは渡しちゃまずいんだよ!」

「いや、なんか渡すのが当然な気がして」

 靄はもう見えない。あるのは、殺風景な部屋と、扉のみだ。

「これは、追いかけないとまずい案件なのかな?」

「だが、出るにはさっきのが言ってた条件をクリアしないとっぽいな」

「する?」

「しかたない。信じていいのか分からんが、とにかくやってみよう」

 そう言うことになった。


 よく見ると、扉には9枚の、カードを模した意匠があった。それには、<シャドウバース>のクラスのエンブレムと同じものがある。きっちり意匠の数と同じの9種類。

「ということは、クラスごとにってことか」

 一応の納得をする茂美に、美咲が追加の問いをする。

「でも、これそもそも正解あるのかな?」

「確かに、人によるもんなあ、収穫ってやつは。だが、ぼんやりしていても仕方ないし、とりあえずやってみるべきだろう」

 そう言うと、茂美はまずと切り出す。

「ドラゴンでは<斬竜剣士・ロイ>」

「理由は?」

「自身もコスト軽めで、その上に使える2コストスペルをチェイス出来るのは大きいな。PPブースト<活竜剣>も3点ダメージの<殺竜剣>も、腐りにくいのが要点だな」

「でも、PPのブーストは終盤だと腐らない?」

「その場合はそっちじゃなく<殺竜剣>を選べばいいし、PPブーストはドラゴンにとっては必需品だ。これを選ばない理由が無いくらいにね」

 と、そこでキャバーン! と音がした。ドラゴンのエンブレムが描かれている場所が、点灯したのだ。

「どういう判定なんだろうな、これ」

「そこは教えてもらえなかったけど、両方共が収穫と認識したら、とかなんじゃない?」

「そもそも論で誰がそれを認定しているかの方が気になるとこだが、まあ一枚開いたから、この調子だな。で、次だが……」

 思案にふけりそうになる茂美を後目に、美咲が言った。

「じゃあ、次はネメシス。どうかな?」

「……適当に選んだだろ」

「どこから選んでも、結局最後には全部のクラスするんだから、一緒だよ」

「……それもそうか。じゃあ、ネメシスの収穫は何か、考えようか」


 二人は扉の前で車座である。立っているのが面倒になったというのもあるが。

「さておき、ネメシスのカードで収穫って言えるのは、簡単だと思うがな」

「そうだね、<歴史を知る者>だね」

「いや、<造られし命・ミリアム>だろ」

「っと、対立だね!」

 サムズアップする美咲に、茂美はうんざりとする。

「早く出た方がいいんだがな、これ」

「だったら速攻論破だよ! <歴史を知る者>は倒してもまた帰ってくる<プライムアーティファクト>がデッキに埋まる上に、自身の進化でそれを引っ張ってくる可能性もある、自己完結具合がいいフォロワーだよ!」

 いやいや、と茂美は首を振る。

「なら<造られし命・ミリアム>の方が上手だろう。共鳴時という縛りがあるが、一方のチョイスで<プライムアーティファクト>と<レディアントアーティファクト>をデッキに埋められるし、もう一方なら進化権無しでアーティファクトカードを手札に持ってこれる。プライム狙いにしたい時以外でも使えるから、断然ミリアムが収穫だと思うね」

「でも、共鳴時限定なのが微妙だと思う。使えないタイミングが無い<歴史を知る者>の方が、局面を選ばなくて強いと思うよ?」

「言っても、2ターンに一回は共鳴になるんだ。大体5回は出せるチャンスはある。そしてアーティファクトを引っ張ってこれるのはネメシスにとっては大きいこと。それが2コスト且つ進化権無しで出来るのはやっぱり強いと思うね」

「むむ……」

「だから、<造られし命・ミリアム>が、DBNネメシスの収穫だね」

 と。

 キャバーン! ネメシスの場所が点灯する。

「全体的にこの調子で行かないとなのか、これ。面倒くさいなあ」

「すぐ一致するのもあるかもしれないじゃない」

「あればいいんだが……」


「じゃあ、次はロイヤルでどうかな?」

「ロイヤル。となるとワルツだな」

「そうだね、ワルツさんだね」

 しかし、意見は一致しているのに音も点灯もしない。

「壊れたのかな?」

「理由とかを、きっちり言わないといけないのかもな」

「でもワルツさんは問答無用だと思うよ? チョイスで出せる<浄化の聖弾>と<必殺の魔弾>の使い勝手がとにかくいいし」

「浄化の方が5コストでフォロワー1体あるいはアミュレット1つを消滅、魔弾の方が1コストで体力3以下を破壊。どちらもとにかく使える上に、スタッツ2の2のフォロワーも出せていた訳だから、そりゃナーフされて2の1になるのも当然か」

「コストが上がるんじゃなくて体力が1に減った、という辺りが運営の人たちのあくまで今までの使い方が正道だ、っていう意志を感じたよね」

「4コスト以上で使うなら今の状態でも十分価値があるんだもんな。これ以上の収穫があろうはずがないよ」

 と。

 キャバーン! ロイヤルの場所が点灯する。

「本当に説明が必要みたいだね、これ」

「本当に面倒くさいなあ」


 まだ光は三か所にしか灯っていない。残りは六つ。

「お次は、面倒なヴァンパイアでいい?」

「ヴァンプかー。確かに面倒だ。優秀なのがレジェンドに偏っているからなあ」

「それでも、となると私は<血統の王>だと思う」

「僕は<激情の悪魔>かと思う」

 意見が分かれたことに、美咲はさもありなん、と頷く。

「レジェンド入れていいならヴァンピィちゃんなんだけどなあ」

「明確に禁じられたから、それは駄目なんだろう。で、<血統の王>は確かにかなり収穫ではある」

「だよね!」

「だが」と茂美は注釈を入れる。

「<血統の王>はデッキのコンセプトを堅めにし過ぎてしまうきらいがある。<フォレストバット>が出るたびに攻撃+1に疾走が付与される、というのが<血統の王>の能力な訳だが、これに関してはエルフにも似たカードがあるよな」

「<フェアリー>に攻+1と疾走を付与する<妖精の使役者>だね」

「そうだ」と茂美は美咲の言に頷く。

「あれと基本的には同じ能力ではある」

 しかし、と茂美はまた注釈を入れる。

「エルフはプレイ数で性能が上がる、というのとセットに出来る。だが、ヴァンプはそれが無い。バットをもりもり展開するデッキは、自ずと<血統の王>中心に収斂してしまう」

「それはそれで収穫としてはありだと思うよ? それに<激情の悪魔>は攻撃時に相手フォロワーに1点ダメージなのは殲滅力は高いけど、それ単体で完結しちゃっているって感じるなあ」

「いや、しかし」

 言い淀む茂美に、美咲は更に告げる。

「というか、デッキの形を決定づける、というだけで十分に収穫として見る事が可能だと、私は思うよ」

「む、むむ」

 キャバーン! ヴァンパイアの印に光が灯る。

「くそう、なんだか負けた気分になる!」

「そう? まあこっちもなんか勝った気分になるけど」

「ええい! 次だ次!」


 残り5つ。

「次も面倒なのから行こうよ」

「じゃあ、ネクロマンサー」

「ネクロは、うーん。<ビックソウルハンター>?」

「収穫にするには微妙な線だろう。ネクロマンス消費で攻撃力5以上のフォロワーを破壊出来るのは、<破魂の少女>の代わりに見えるが、ナーフされるレベルだった<破魂の少女>程猛威ではない」

「なら<悪戯な霊魂>?」

「1コストとしては悪くない性能だが、収穫って程使える訳でもないしなあ。減った1コストの埋め草、という面が強い。後1点、という時にはネクロマンスを消費するけどそれで<ゴースト>出せるのは有難いが、そうそうある局面でもないしなあ」

「<巨腕のスケルトン>」

「あれが収穫だったらほとんどのカードが収穫だよ! 基本8コストのチョイスで使うフォロワーだが、それを加味しても収穫とは言えない。もうちょいコスト低めでチョイスできればなあ。てか、これはかなり微妙ラインだろ!」

「数撃てば当たるかなあ、って」

「当たってない。でも、難しいなあ、収穫って」

「茂美ちゃんからは何かないの?」

 問われた茂美は打てば響くとばかりに答えを返す。

「ここは<常闇の梟>だと思うな」

「その心は」

「葬送すると回復する、というのは補助的だから置いておくが、葬送した時にフォロワーを引っ張てこれるのは葬送という能力と相性がいいから、それだけでかなり優秀だと言えるね」

 それと、と茂美は付言する。

「BOS環境になって葬送したいフォロワーが出来たから、葬送がある時点でわりと優秀だと言えるようになっている。そう言う意味でも、DBN期の遅咲きの収穫といえるだろう」

 キャバーン! ネクロマンサーの印に光が灯る。

「後4つだね」


「次は、うーん、これは安定だと思うがビショップだな」

「となると?」

「となると」

 せーの、で声をそろえて二人は言った。

「「<天狐の社>!」」

 キャバーン! ビショップの印に光が灯る。

「これは問題なく、意見が合うか」

「BOSでターン回復を付与するフォロワーが追加されたから、回復時2点打撃がフォロワーやリーダーに、が途端に強くなったもんね」

「ナーフされてもまだまだ使われているしな。回復ってほぼ体力アップと変わらないとこあるから、それに打撃がつけられるのは強いよ。というかなんでコスト4だったんだろうな、あれ」

 さておき、と茂美は区切り、続ける。

「次に行こう」


「エルフは、まだ言ってなかったっけ?」

 そう問う茂美に、美咲は頷く。

「だね。点灯してないし。でも、これもかなり難しいんじゃないかな?」

「そうか? 僕は<バッタの指揮者>辺りが収穫だと思う」

「どうして?」

「プレイ回数、カードを使った回数とデッキのフォロワーの攻撃力を参照するタイプのドローソースな訳だけど、上手く攻撃力の値を絞れば、確定サーチも可能なのが強みになる」

「結構それをするのが難しい気がするけど? 攻撃力縛りが難しそうだし」

「だが、アンリミテッドなら<リノセウス>確定サーチは捗る。こいつを出しただけで引っ張ってこれるし。それに単純にドローソース自体が少なくなっているエルフにはその存在だけでありがたいまである」

「成程ねー」

「美咲は何かないのか?」

 そう問われ、美咲はぐにょりぐにょりとする。

「ないのか?」

「うーん、オ」

 キャバーン! エルフの札が点灯する。

「心折れるの速すぎるだろ、美咲」

「だってさあ、エルフのこれってやつ本当に少ないじゃん! レジェンドはいいんだけど、レジェンドは駄目なんだしい!」

「まあなあ。それはさておき、どっちだったんだ?」

「……何が?」

「オ、って言いかけてたじゃないか。<オウルマン>なのか<オシャレ女王・ネルシャ>なのか」

「……次行こうか」

 秘してこそ花。と言いたげで実際は今更言うのが恥ずかしい美咲であった。


「あと二つ。どっちにする?」

 茂美が言うと、美咲はうーんと。

「ウィッチかなあ。ニュートラルはシメって気がするし」

「成程。きっちりリーダーのいるクラスをまず終わらせる、か」

「だね」

 と頷いた後、美咲と茂美はうーんと。その思考から先に脱したのは美咲であった。

「私は<キングスノーマン>だと思う」

「……根拠は?」

「スペルブーストが必要だけど、それは比較的少なく済むし、7コストで強めの2コストを横展開、というのは強いよ。ロイヤルのアーサーさんより、いい場合すらあるし。で、茂美ちゃんは?」

 問いに、茂美は真面目に答える。

「<マナリアの竜術士>だな。こっちはコスト7でチョイスが出来るフォロワーだが、黒竜でも白竜でも、標準以上の性能だ。特に黒竜だとマナリアスペルに1点ダメージが付加されるのがデカい」

「<マナリアの魔弾>がフォロワー3点に顔1点、の上にまた1点になるんだっけ」

「マナリア様を一回出せば、<マナリアの魔弾>一つで顔に4点だ。そう言う意味では夢のあるフォロワーと言える」

「うーん。どっちも7コストで使うけど、場合によっては2コストで使える竜術士の方がいいかもなあ。その点がキングスノにはない利点だし」

 キャバーン! ウィッチの印に点灯した。


 最後に残ったニュートラルの枠で、美咲と茂美は頭を悩ませる。

「参った」

「まさかどれも取りたいやつばかりだったとはね」

 スマホの画面でDBNのカードの情報を見ている二人。その情報を鑑みての発言である。

「しかし、このままじゃあ埒が明かない。消去法で行こう」

「だね。じゃあ<混沌のヴァルキリー>」

「ニュートラルでは貴重な突進持ちだが、それがランダム要素なのが微妙だ。バツ」

「<タルトマン>」

「破壊じゃなく手札に戻す、というのがどうか、だな。進化権使ってすることではないかもしれない。バツ」

「<神罰>」

「確かにいいかもしれない。攻撃力最大の相手フォロワーに、というのは大体そう言う相手にぶち込むのが確定除去だから問題ないしな。とりあえずマル」

「<天使の泉>」

「悪くはない。ターン中攻撃力プラスの1に、ラストワードで1ドロー。細かい場面で使える。でも収穫って程ではないか。バツ」

「<天界の尖兵>」

「ゴールドだがいい線来た感じだな。進化時に体力1点の相手フォロワーを消滅は、応用範囲が広い。マルか?」

「<オケアノス>」

「おっと、これは」

 キャバーン! ニュートラルの印が点灯する。

「言う前に点くやつがあるか!」

「言っても誰にも通じないと思う。でも、<オケアノス>は実際使えるフォロワーだしね」

「回復か除去か、チョイスでスペルを選べるのは大きいしな。ってそうではなくて!」

 茂美は美咲に扉に注目するよう促す。扉のエンブレムが、一瞬光を強め、そして消えていく。と同時に、扉が開いていく。

「開いたな」

「開いたね」

 そして茂美と美咲は共に頷くと、その扉をくぐっていった。

「というか、やっぱりなんだよこれ! 訳分からん!」

 最後に、茂美の声が部屋に響いた。

話をどう畳むかが全然展望が見えないのでどうしたものか。いい感じで〆れるといいんだけど。

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