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第21枚 新カードパック<時空転生>について 前編

 とある県のとある街。その住宅街にひっそりとたたずみすぎて存在感がまるでない屋敷に、その妖怪は住んでいた。

「どうも、サティスファクション都です。誰の家が存在感ないだってえ!?」

 謎の猛りを見せるその妖怪、サティスファクション都。ぱっと見で妖しい雰囲気である。

 いつもの和室(ゲーム部屋)にあるちゃぶ台のいい位置に陣取り、あらぬ方向にそういうサティスファクション都に問いかけるものがある。友人である犬飼美咲である。ぱっと見で愛くるしいというタイプである。

 美咲は言う。

「どこを向いて怒っているの?」

「彼方よ!」

「そうはっきり言われると、うん、って頷くしかないんだけど」

「じゃなくてだな、都君。わざわざ対戦を中断させておいて、どうしたんだってことの方がだよ」

 そう言うのはこれまた友人枠に一応入る城茂美。ぱっと見でシャープなイメージである。

 サティスファクション都はしばらく自身の言った彼方を見つめて牽制しつつ、口を開く。

「そろそろ新カードパックの時なのよ!」

「ああ、そういう。確かにもうそろそろだね」

「何を落ち着いているの、美咲。浮足立ちなさい。ここで浮足立たなかったらどこで浮足立つというの?」

「浮足立つって基本、そう言う使い方ではないだろ」

「だとしたら、どういう言葉がいいっていうの、城。ここはキリキリ答えてもらいましょうか!」

「普通に楽しみでワクワクするね、くらいでいいんだよ」

 その言葉にサティスファクション都は何やら妙な衝撃を受けたらしく、ヨヨヨ、とちゃぶ台にしなだれかかる。

「城に、そんなまともな台詞を言われるなんて……」

「なんだか君の頭の中の僕は、だいぶ変な奴みたいだな」

「事実変でしょ、あなた」

「んなことはない! よな、美咲」

「たぶん、どんぐりの背比べだよ」

「誰と!?」

 驚愕する茂美をするっと無視して、美咲は続ける。

「それより、何の話だったっけ?」

「新カードパック、<時空転生>の話よ」

「……」

 答えるサティスファクション都に対して、不服そうな茂美。そちらは無視して、サティスファクション都は続ける。

「今回はローテーションルールも導入されての初カードパック! ということで今後の展望も含めつつ、レジェンド一枚、ゴールド一枚、そしてシルバーかブロンズの一枚の計三枚を上げていくわよ!」

 そう言うと、いつものホワイトボードが音を立ててサティスファクション都の隣に出現した。

 その前に立ち、サティスファクション都は続ける。

「まずは<エルフ>から言ってみるわよ!」


 <エルフ>と記帳して、サティスファクション都は言う。

「<エルフ>のレジェンドで見るべきは、0コスフォロワートークンを出す<導きの妖精姫・アリア>ね」

 キュッキュッとホワイトボードに板書する、その背中に美咲が問いかける。

「<エルフプリンセスメイジ>みたいに0コストのフェアリーを出すの?」

「そこは違うわね。新しいフォロワートークンの<フェアリーウィスプ>よ」

「それと、妖精姫って言い方を変えれば<フェアリープリンセス>だよね?」

「いい所に気が付くわね、美咲。その通り。ローテーションルールで脱落する<フェアリープリンセス>の再録なのが、この<導きの妖精姫・アリア>なの。だから、エンハンス9、つまり9コスト支払うと手札が満ちるまで<フェアリー>を補充することが出来るわ。まあ、手札に<フェアリー>満載しても使えるかというと微妙だから、基本は<フェアリーウィスプ>の為の一枚ね」

「<フェアリーウィスプ>の能力は? 普通に<フェアリー>と同じなのか?」

 不貞腐れから回復した茂美の発言に、サティスファクション都は首を横に。

「<フェアリー>と違って、<フェアリーウィスプ>以外で2枚出していると、出したら消滅しちゃうわ。一応プレイ数は稼げるみたいだけどね」

「0コスト<フェアリー>より扱いに繊細さがいるんだね」

「<フェアリーウィスプ>を先にプレイしておけば消えないから、そこさえ分かっていればかなり使えると思うけどね」

 <導きの妖精姫・アリア>と書いて、4コスト3の3。進化後5の5。そしてファンファーレと進化後に0コストフォロワー<フェアリーウィスプ>を出す能力、と続けて記載する。

「次はゴールド。こっちは結構目移りするところがあるけど、より処理能力が高い<エルフの鍛冶師・レーネ>ね」

 <エルフの鍛冶師・レーネ>とホワイトボードに書き、その能力などをつらつらと書いていく

 コスト2の2の2。進化後4の4。進化時能力として、3枚プレイしていたなら自分以外のフォロワーは+1/+0して、突進を持ち、ターン終了までそのフォロワーへのダメージは0になる。と。

「スタッツは2コスト標準だけど、進化時能力はかなりの除去能力を誇るわ。突進+攻撃バフ+ダメージ0だから、一方的に相手フォロワーを駆逐出来るからね」

「だが、進化必須で更に3枚プレイだろ? 狙いにくいんじゃないか?」

 茂美の当然と言える問いに、サティスファクション都はむぅ、と唸りつつ反論する。

「自身を含めてもいいし、このカード自体のコストも低いから、割と狙える局面はあると思うわよ? それに、やっぱり一方的に倒してしまえるのは強いわ」

「それより、<フェアリーセイバー>の方が即効性があっていい気もするが」

 サティスファクション都は肩をすくめる。そして言う。

「その辺はもう憶測の範囲ね。実際使ってみてどっちが有用か、試すしかないわよ」

 そう言って、次に、と書くのはブロンズレアの<リーフマン>。

「シルバーかブロンズの枠はこいつね。2コストでスタッツは2の2。進化後も4の4で標準的ね。で、このフォロワーの真価はエンハンス5、つまり5コストで出すと使った次の相手ターン終了まで攻撃力+1と能力ダメージ無効になるところね」

「リザだね」

「リザだな」

「そう、リザよね。攻撃力バフがあるリザ、と考えると5コストでは若干微妙な線だけど」

「さっき話題に上がった<フェアリーセイバー>が6コスト、だと考えると順当か少し悪いか、くらいだな」

「でも、相手ターン終了時までだし、それなら1ターン我慢すればいいじゃないの?」

「あら、1ターンが勝敗を分けるものよ? そう考えると、案外アグロ的な使い道の方が向いたカードかもしれないわね」

 さてと、と言ってサティスファクション都は<エルフの展望>と書いてひとまとめに入る。

「<エルフ>の追加カードはかなり攻撃力バフが多いのが今回の弾での一つの特徴ね」

「新カードの3割程度に、攻撃力を上げる能力があるんだな」

 携帯で新カードの情報を見ながら、茂美が言う。その言葉に、サティスファクション都は頷いた。

「バフ時に効果を出す能力もあるし、それを使えという運営の提示なのかもしれないわね」

 で、とサティスファクション都は更に続ける。

「今回の弾では<リノセウス>の後釜的なのは入らなかったから、ローテーションルールではOTKはなく、つまりバフして戦うのが主流になりそうな雰囲気ね」

 そこでひとまとめとして、サティスファクション都は言う。

「次は<ロイヤル>よ!」


 <ロイヤル>と記帳される。

「<ロイヤル>! 今回のレジェンドは2枚とも灰汁が強いわよ!」

「その中で、どっちだ?」

「<ダークセイバー・メリッサ>ね!」

 言うと、サティスファクション都はそのステータスを書いていく。

 6コストの攻撃6の体力4。進化で8の6。

「ステータスの方は攻撃寄りだけどそこそこだね」

「能力の方が癖があるわよ」

 と言いながら、その能力を書いていく。

 まず、<守護>。

「6コスト守護にしては体力低い気がするけど、次があるんだね?」

「そう言うこと」

 次を書く。<場の自フォロワー分、攻-1>と<場の相手フォロワー分、体+1>。

「つまり、相手がアグロとかみたいなワラワラ出すのだと、防御力がてきめんに上がる訳なんだな」

「こっちがわらわらだと攻撃力下がるのが難点だけどね。体の方は最大で9までいくから、そうなれば相当強い守護フォロワーになるわ」

「でも、確定除去に弱いんでしょ?」

 美咲の言葉に、サティスファクション都は大きく「ナイン!」と。

「もう一つ能力があるのよ、このカードには」

 と言って書いたのが<相手の能力で選択できない>。

「おお、相手からすると面倒この上ないやつだね」

「そう。それとこのカード、絵の感じからも分かるように、オーレリアの再録みたいなところのやつね。でも、明らかに上位互換な気がするわ」

 茂美がえーと、と振り返る。

「オーレリアは相手に三体以上いると選択無効が付く、だから素で持っているのと比べるとやっぱり見劣りはあるかもな」

「その分、ステータスと能力の噛み合いで劣る場合もあるでしょうけれどね。次はゴールドの一枚」

「これはどれなの?」

「ここは<嵐の槍使い>を上げたいわね」

 そう言って<嵐の槍使い>と板書すると、ステータスを書いていく。

 3コストの攻3の体2。進化時5の4。

 突進持ち。

「ステータス的には<ブリッツランサー>の代替わりって感じだね」

「ええそうね、でももう一つ、エンハンス能力があるわ」

 すらすらと書く。エンハンス7:攻撃時相手フォロワーすべてに2ダメージ。

「全体除去として使える訳か」

「突進持ちだから、出してすぐ殴れて、全体除去、という形が出来るわね」

「でも、これも7コスト使って全体2点をどう取るかだよね?」

 美咲の言に、サティスファクション都はそうねえ、と思案顔。

「格好としては、5点の相手も取れつつ全体にもダメージだから、その強みはあるかしら。あるいは体2の相手を無傷で取って、且つ全体2点。どっちにしろ7コスト時でも腐らない、が一番いい理由かもだけどね。次行くわよ」

 と、話題を移すサティスファクション都。すらすらと語りだす。

「最後の一枠、ブロンズかシルバーは、ブロンズのスペル<暗殺術>!」

「効果は、体力5以下のフォロワー1体を破壊する、ねえ。破壊効果とはいえ、<漆黒の法典>並の事が出来るわけだしな」

「<漆黒の法典>? 何その雑魚」

「なんで君が増上慢なんだよ、都君。ビショップ得意じゃないだろ、君」

 あはは、とサティスファクション都は笑い、妖しの黒髪をひらめかして言う。

「それは冗談として、でも体力5以下よ? 3コスト+破壊という点に目をつぶっても、相当使い道があるスペルになると思うわね。法典がビショップに必須レベルなように、今後のロイヤル3コストの必須になるかもしれないわ」

 <暗殺術>。3コストスペル。体力5以下のフォロワー1体を破壊する。と書かれたところで、サティスファクション都はまとめにはいる。<ロイヤルの展望>と。

「<ロイヤル>は全体的に微妙な弾かもしれないわね」

「根拠は?」

「アグロ用なのが少ないのよお!」

 悲痛な叫びをあげるサティスファクション都をまるっと無視して、茂美は携帯の画面に出ているカード群を見る。

「確かに1コストフォロワーのフォローが甘いか」

「<狼牙の剣士>は結構微妙だしね」

「この辺、アグロばかりするのを止めろという運営の意図かもな」

「でも、そうなると新カードパックでアグロ出来るクラスが相対的に強くなるような」

「痛し痒しだなあ」

「ということで、<ロイヤル>はアグロ微妙だけど他はいけるかも? って感じね」

「立ち直るの早いなあ」

「まだ先は長いからね」

 ということで、と一置きして、サティスファクション都は言う。

「お次は<ウィッチ>!」


 <ウィッチ>と記載される。

「<ウィッチ>のレジェンド枠は<魔術の始祖・マナリア>! 今回の弾から始まるマナリアシリーズの始祖! ってんで中々上がるものがあるわ」

「5コスト4の4で進化後も標準の上昇。ファンファーレ能力でスペルダメージ+1。これは、強い、のかな?」

 美咲のはてなに、サティスファクション都は妖しく髪をひらめかせてから言う。

「結構大きいわよ? この弾で入ったマナリアシリーズの攻撃部門、<マナリアの魔弾>ならフォロワー3点のリーダー1点が、フォロワー4点のリーダー2点よ」

「地味だね」

「……、でも累積するのよ? 三体これが出せれば、+3点よ? <レオニダスの遺志>クラスの強化よ?」

「三体も出す暇あったら他のことした方がいいと思う」

「なんで美咲はここでこんなに話の腰を折るのかしらね?」

「ツッコミ所だからだろう」

 茂美の言葉に、「そうなの?」とたわんだ顔になるサティスファクション都。あまりに人外の顔だったので、周りの二人は噴出した。

「なんて顔しているんだ、都君」

 笑いながら言う茂美に、サティスファクション都は抗弁する。

「だって、スペルのダメージに+1よ? 絶対ぶっ飛んでるわよ?」

「その辺は意見の相違だな。実際使ってみて証明するしかないだろう」

 むう、と納得尾のいかない顔をするサティスファクション都だったが、すぐに次へと話を切り替える。

「えー、続きましてゴールドはスペル<大召喚>ね」

 すらすらと書かれる。

 <大召喚>。6コストスペル。<ガーディアンゴーレム>、<クレイゴーレム>、<ジャンクゴーレム>それぞれ1体を出す。

 土の秘術でフォロワーを出した後、場の自フォロワー全て攻+1。

「土の秘術でバフされると強そうだけど、これじゃなくてもいいんじゃない?」

「いやでも、これ結構壊れ性能かもしれなくてね。ぶっちゃけ、フォロワー出過ぎじゃないかしら?」

「<ガーディアンゴーレム>が大体コスト2、<クレイゴーレム>がコスト2、<ジャンクゴーレム>がコスト1くらい相当だから、むしろ高いんじゃないか?」

「6コストならね。でもオズはスペルのコストを1にするじゃない? あれと絡むと無茶苦茶お得なんだけど」

「オズが絡むと大体どのスペルもお得だから、警戒し過ぎな感があるぞ」

「いやでも、これは、これは……」

 呻くサティスファクション都に、美咲がぴしゃりと言った。

「まあ、それも蓋を開けてみてのお楽しみだね」

「……今日の美咲はなんか妙に理知的ね」

「褒めても何も出ないよ」

「いや、あれはちょっとけなし入ってる」

「さておき!」

 とサティスファクション都は話を誘導にかかる。

「シルバーとブロンズ枠からは、<マナリアの知識>、と見せかけて<精神の締め出し>よ!」

 <精神の締め出し>。7コストスペル。相手フォロワーを破壊。カードを1枚引く。スペルブーストで引くカード+1。

「……また微妙なスペルだな」

「7コストで単体除去って、勿体ないにもほどがあると思う」

「散々! でもこれのいい所は単体除去という点だけではないわよ!」

「だから単体除去ではコスト高すぎるだろって言ってんだよ」

 無視して続けるサティスファクション都。

「いい? このスペルにはスペルブースト分カードを引ける能力がついているのよ?」

「だから?」

「バトル終盤の手札枯渇時期に、単体除去とドローが両立するの! しかもブーストしてたら大量に! これで終盤でも<呼び覚まされし禁忌>の解禁が出来るようになるわ!」

「夢みたいな話だね」

「でしょ?」

「それ、若干けなし入ってるからな」

 さておき。とまたサティスファクション都はまた無視して続ける。<ウィッチの展望>と書いて。

「<ウィッチ>は新タイプマナリアが入って、それがどうなるか、という感じね」

「予想は?」

「<マナリアの秘術>をどれだけうまく手に入れれるかが勝敗の分かれ目って感じね。なのでそこまで強くないかも」

「そうなの?」

「今の所、バーンと守護を同時に出来る<マナリアの秘術>が<マナリアの生徒会長・ハンナ>からしか手に入らないのよ。それは大層強いけどねえ。だから<マナリアの魔弾>と<魔術の始祖・マナリア>は結構必要になるかもしれないわね。他は秘術に新たなフィニッシャーが出たくらいね」

「あれもあれでデカ物系だけど、使えるのかねえ」

「次行くわよ! <ドラゴン>!」


 <ドラゴン>と板書される。

「<ドラゴン>はレジェンドは、誰もが待ち望んだ新フィニッシャーの<アジ・ダハーカ>! 疾走持ちなのは勿論のこと、10コストながら手札にあって自分の他のフォロワーが進化したらコスト-1! 8コスト辺りになればステータスが攻6の体8でも十二分な活躍が出来るはず!」

「手札的に重いのを、進化でコストが減る、でフォローしているのはクレーバーなデザインだな」

「むしろ手札に居てくれ、というのは確かに冴えているわね。でも、進化させたいけど進化権残すより使う方がいいかも、というジレンマもありそうだわ」

「能力自体は単純だけど、それを面白くする仕組みって感じだね」

「ステータス的にはちょっと丸い感じだけどね」

 さくさく行きましょう、とサティスファクション都は告げて、ゴールドのカードを提示する。

「ここは<狂えるドレイク>ね」

 さらさらと書く。

 9コスト攻7の体7。進化で9の9。

 ファンファーレで 自分及び相手フォロワー全てに手札のドラゴン・カードの枚数と同じダメージ。

「尖ったの来たなあ」

「ぶっちゃけると<バハムート>でいいよね」

「いやいや、ダメージを上手く抑えれば、味方は生きて相手は倒れる、が出来る点が<バハムート>との相違点よ?」

「上手く使えそうにないんだが、その辺はプレイングか」

「上手く使えれば何でも上手く使えるからね」

「そりゃそうだ」

 落ちが付いたところで次に向かうサティスファクション都。シルバーかブロンズの枠の話だ。

「ここは<竜の集結>ね」

 1コストスペル。効果は<大嵐のドラゴン>を1枚手札に加える。そしてエンハンス3でもう一枚<大嵐のドラゴン>を。

「かなりコストより上のスペックがあるスペルだな」

「その場で出さないけど、<大嵐のドラゴン>は覚醒時に疾走を持つ、だから手札から出てくれた方がいいフォロワー。それが1コストで一枚、3コストで二枚だから、お得なスペルよね」

「序盤展開から終盤の詰めでも使える優秀さ、と言ったところかな?」

 そうそれ! とサティスファクション都と茂美が同時に言う。

「上手いこと言うようになったじゃない、美咲」

「だいぶ分かってきた、かな?」

「あはは、言うじゃない」

 で、まとめ。<ドラゴンの展望>と。

「尖っているのもあるし、新フィニッシャーもいるけれど、全体では色んな要素を上手く詰め込んだ、て感じで派手さは無いわね」

「確かに、環境にまるっとはまって強いぞこれ、って感じじゃあないか」

「<竜の炎・ジルニトラ>辺りは怪しいけど、どうなることかだしな」

「体+1は地味に効果があるからねえ。でも<原初の竜使い>レベルではないと思うけど」

「あれは初見で見抜くには分からないけどいつの間にか流行ったりだったけど、今回はそこまでのは無い、でいいのかな?」

「そうね」

 とそこに。

「へい、カップうどんお待ち」

 カーン! と障子戸とは思えない音を立てて、開いたところから銀髪の妖怪、ニシワタリがお盆を持ってやってきた。

「遅いわよ、ニシワタリ」

「テメエがいきなりカップうどん食いたいって言うカラ、買ってきテ、お湯沸かしテ、入れテ、持ってきたんデスヨ。まず労をねぎらいナサイ」

「はいはい、お疲れお疲れ」

 ニシワタリは呆れ顔をする。

「少しは謝意くらいみせナサイ。まあ、そういうのがあなたではありマスガ」

「分かっているならいいでしょ? で、お湯を入れてから何分?」

「4分と20秒ってとこデスネ」

「絶妙ね。いただきましょうか」

 言うと、サティスファクション都はそばまで来たニシワタリからカップうどんを受けとると、即座に食べ始めた。

「ズズズーッ! ズズズーッ!」

「勢いよくかっこみ過ぎデスヨ。はしたない」

「ズズズーッ! ズズズーッ!」

 勢い緩めず食べるサティスファクション都に、ニシワタリはまた呆れ顔だ。

 しかし、それ以上に二人、美咲と茂美は呆れ顔になっている。その理由は、カップうどんにあった。

 その理由を、茂美が口にする。

「でかいな……」

 そう、でかいのである。普通のビックサイズなど比較にならない。大きい虎が一頭丸まったぐらい、という表現を美咲は考え付くが、それで正答になるのか、というくらいにでかかったのである。

「……これ、食べきるまで時間かかりそうだね」

「だな」

「ナニヤラ、話途中だったみたいデスネ」

 ならば、とニシワタリは言った。

「続きはワタクシが承りましょう」

(第22枚につづく)

思ったより紙幅を取る感じになったので、前後編の形に。出来るだけ素早くあげられたらいいなあ。

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