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トランスジェンダー  作者: 葵 春
5/5

きょり

長内の言葉も、心のもどかしさも

混ざって、混ざって、灰色になった。


夕焼けは何故霞んで見えないのか?



帰る途中、三階から降りていく階段の踊り場の壁に一枚のポスターが貼られていた。


『優翔祭20×× ステージ出し物募集!!』


優翔祭。もうそんな季節かぁ。

文化祭の季節になると一段と高校生らしい日常が始まる。

去年美月のクラスは模擬店でクレープ屋。

もちろん、作る側ではなく、集客担当。

得意( だったはずの )笑顔を振り撒いて、数名の男子生徒と一緒に学校中を歩いて回ったのが印象的だった。

舞とも一緒にまわったりして…


(今年は、何やるんだろ…)


わくわくの中にちくりと刺さるものがあった。



「まーいーーーー!」


その声は階段の窓から見える外の景色から。

舞が中庭に立っていた。

どうやら放課後の部活。

大声で舞を呼び止めたのは女子生徒、よく舞と話しているのを見たことがある。


声の持ち主が駆け寄ると、舞は振り返った。

長く伸びた髪がゆらりと靡いた。


遠くてガラス越しには会話は聞こえてこなかった。

なんだか楽しそうに話しているのは理解出来た。


改めて遠くから舞の笑顔を見た。

この笑顔が、いつもは自分にも向けられているのか。



そう思うと俺は熱くなった。


(ばか……かわい…)


無邪気だけどどこか優しさがある。

この笑顔が、離さないんだ。


惹かれるんだ。



好きだと思う気持ちは、

止めることが出来るのに、

消えることは無い。


恋愛じゃない。

その瞬間には思えても、次に思うのは

『君が俺を愛してくれたら。』



(踊り場から隠れ見るなんて俺、きもっ…笑)


ふっと息を漏らすと、俺は中庭の舞から目を逸らした。

近いようで声の届かない、遠くにいる舞から。



(誰を好きになったって、自由…か)


長内の言葉が再度、俺の頭を二周した。


家に帰ろう。




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