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その1 一日め それは朝一番の電話から始まった

今日はゴールデン・ウィーク後半の初日。


桜は異様に早く咲き、季節外れの暖気と寒気に翻弄された春先は、それでも着実に初夏へとバトンを渡していた。


絶好の行楽日和の朝、出かける仕度をしている最中に電話は来た。


電話の主は父である実家の父、尾上政。


受けた先は彼の娘のゆう


書道家として還暦をとうに過ぎた今も精力的に活動している政は、祝日はいろいろとイベントの予定があり、本人も忙しい。とはいえせっかくのゴールデン・ウィーク。四連休初日に家族・一族郎党で集まろうということになり、今日がその当日だったのだが。


「裕か?」


電話の向こう側の声は沈んでいた。


「何、お父さん」


ダイニングで娘と夫が朝ごはんの仕度をしている様子を横目で見ながら、受話器を顎で支え、裕は言う。



「ご飯食べ終わったらそっちに行くから。そうね、お昼前頃にはつけるかしら」


「うん……」


ほう、と父親は大きくため息をつく。


「今日の予定、キャンセルできないかな」


「どうしたの、何か変ね」


「あのな、母さんがな」


「母さん?」


ワンオクターブ上がった声に、食卓の夫と娘は裕のほうを見る。


「母さんが、どうかしたの」

「倒れた」


「ええ?」


母、加奈江は政の糟糠の妻だ。見た目はなよっとしているが、大変強壮な人で、滅多なことで風邪すらひかない健康体を誇る。健康診断の評価は常にオールA。年齢より若く見える上に体内年齢もすこぶる若い。しょっちゅう熱を出し、寝込み、うんうん唸る夫を看病し、背負って近所の病院なら余裕でかけつけられるくらいの元気の良さから推し量るに、成人病のかけらも見られない人ではあるのだが。


これは、鬼の霍乱だ。


「大丈夫??」


「わからない」


「いや、母さんより、父さんの方!」


はあー、と大変重く沈んだ声はベソをかいていた。


「大丈夫じゃない」


母の方も心配だが、どうしようーと言う父の沈み込み具合は受話器を通しても伝わってくる。


これは大事だわ。


夫と娘の視線を受けつつ、裕は眉間に皺を寄せた。



◇ ◇ ◇



「今日の集まりはキャンセルさせて!」の連絡を叔父夫婦の携帯電話宛にそれぞれメールで入れて、裕は実家へ向かう準備に大わらわだ。


服は……いい、近所だし。動きやすい服装の方がいいわ。


化粧は……いいわ、それどころじゃない。けど、すっぴんというわけにもいかず、軽く口紅はひいておしろいをはたき、髪を手癖でなでつけた。


「おばあちゃん、平気なの、お見舞い、行かなくていいの」


娘・愛美は眉をハの字にして母にまとわりつく。


「おじいちゃんの電話だけじゃわからないから、とりあえず行って様子見てくるわ、だからその後にどうするか考えましょう」


「ねえねえ、私も一緒に行くよう」


「今はここで待ってて。大丈夫そうなら連絡するから」


「うん……」


母の後を金魚のフンのごとくつきまとった娘はうつむいた。


「親父さん、相当きてるんだろ」


夫は妻に言う。


「うん、すごーく落ち込んでる」


娘には甘く、孫娘にはさらに甘く、そして婿には冷たい、予想通りの反応をしてくれる舅がしおれている姿は、普段なら意地悪く見てみたいと思う裕の夫も、姑に頼り切ってる人のこと、困っているどころではないはずだ、という気遣いは働く。


「いつでも出れるように用意してるから。何かあったら連絡してくれ。なくても一報入れてくれ」


「うん、ありがとう」


「気をつけて」


いつものように、夫と出掛けのキスをして、裕は自宅を飛び出した。



◇ ◇ ◇



裕の実家は青山にある。


彼女の住まいからは徒歩三十分圏内。あっという間、地下鉄にして数駅で実家の最寄り駅に着いてしまう。


都内の一等地に平屋建てという大変贅沢な作りの家に彼女が住んでいた期間は嫁ぐ前のほんの数年間。


生家は奥多摩の一軒家だった。戦前の農家の趣を残し、すすけた梁を持ち、今でも父は書を書く時に籠もる場として使っている。政は『我が家の武相荘』と洒落て言ってくれているが、そこまで洗練された家屋ではない。


何故、父の生家が青山にありつつ、奥多摩で過ごす年月の方が長かったのか、理由を改めて聞いたことはないけれど、自分が子供の頃は奥多摩で、長じてからは青山で暮らせるようになった内的事情が両親にあったというわけだ。自分も家庭を持つようになって容易に語れない物語が人には存在するのだということがわかるようになった。


その、門構えが見事な青山の家に着いてみると。


確かに母が倒れた証しがありありと現れていた。


玄関先に箒で掃除された跡がない。


ここは父が毎朝、石庭のような箒の目をきちんと入れて掃き掃除する。


新聞も新聞受けにささったまま。


これも父が毎朝抜き取る。


父不在時は母が引き継いでいるわけなので、放置はそもそもあり得ない。


どちらもする気になれないくらい落ち込んでいる証拠だ。


朝刊を新聞受けから抜き取って、からりと引き戸を開けて家に入ると、飼い猫・コムギが猫らしからぬ声を上げて裕の足元にまとわりついてきた。


ごはん下さい、と訴えかけている。


ホント、父さんは母さんがいないとダメな人だわ。


猫を抱き上げて裕は居間に向かう。そこには。


「……裕か?」


一気に老け込んだように見える父、政が肩を落として座っていた。


「うん、おはよう」


「うん……」


「母さんは?」


「うん……」


「寝込んでるの?」


「いや、寝てはいないんだが」


「ちょっとお父さん、しっかりしてよ!」


「本当に。大袈裟なんだから」


台所側から声がする。


のれんをまくりながら入ってくる、母、加奈江の声だ。


「母さん???」


「裕、いらっしゃい」


面長の顔を少し傾けて加奈江は娘に声をかける。


何だ、普段とかわりないじゃない。


裕はちょっと拍子抜けして、「う、うん」とうなずく。


「お父さんが何か大騒ぎしたんですって?」


「そうよ、倒れたって言うから。叔父さんにもメールしちゃったんだけど。大丈夫なの」


「そうね、あまり、大丈夫じゃないわ」


よっこいしょと言いながら座って、「お父さん、お茶」と言いつつ加奈江はお盆から茶托を渡す。


具合悪いって言ってる人に茶の仕度させるの? お父さんってば、何やってるの!


老け込んで見えたのは、大騒ぎして私に電話したことを母さんに叱られたから?


それとも心配で気落ちしてるの?


わかりにくいわーっ!!


頭を振りつつ、裕は母に問う。


「何があったの、って聞いてもいい?」


「ちょっとね、病気にかかってしまって」


「はあ?」


「帯状疱疹っていうの。知ってる?」


「知ってる!」


子供の頃に罹るのが水疱瘡。大概はその際に免疫ができ、再発することはない。しかしウイルスは体内に残り続け、それが中高年に入ると悪さをすることがある。痛みを伴う帯状の皮膚炎が身体の片側にでき、完治に時間がかかると神経痛に移行する。そうなるとやっかいとされる病気だ。


発症の原因の大半は、ストレスに起因するとされている。


ストレスの元は……父さんじゃないの???


娘は口にしそうになり、母に目でたしなめられた。


おそらく病院でも同様の指摘を受けたようで、妻の発症に驚いた父には耳が痛いことこの上なかったようだ。


「知り合いでも罹ってる人が何人かいたけど、話に聞くところによると相当痛むらしいよ。どうなの?」


「早期だったからね。きちんとお薬はもらっているわ。今のところは平気。でも完治するまで時間がかかるんですって」


やっかいねえ、痛いのはいやだわ、苦手だもの、とため息をつく母は、ゆるゆると茶を飲んでいる。


「静かにしていればさほどでもないけど、ちょっとね、しんどいから。だからね、せっかくだけど今日の集まりはなしにさせてもらいたくて父さんに連絡頼んだのだけど」


尾鰭端鰭ついてしまったようね、と口には出さず、母は父の方を見やる。


父の口ぶりから、今すぐどうにかなってしまいそうな様子だったから慌てたのだが。思えば父は母のこととなると何事も大袈裟に捉えてしまう。


盛大に褒め、喜ぶのだから、逆の場合もしかり。


数週間の間、父はしおれて母の様子を気遣い、看病をするのだろうか。


ま、たまにはいいわよね。


何から何まで母さんに頼りっきりの父さんなんだもの。


良い機会だわ。母さん孝行だと思ってがんばってもらいましょう。


肩から力を抜いて、裕は言う。


「ご飯の仕度とか、お洗濯とか。できることはない? 仕事も一段落付いたところだから、時間の融通がきくの。皮膚炎が落ち着くまで手伝えることなら何でも言って」


「ありがとう」


加奈江は普段より小さな、力が入らない声で言う。


「娘がいるのってやっぱりいいわね、その点男性はいざという時に何の役にも立ちゃしません。大騒ぎするばかりでねえ」


「う」と言葉につまり、ますます小さくなって、父は言った、「すまん」と。



◇ ◇ ◇



「どうだった? お母さん。おばあちゃんは? ねえねえ、どうだった?」


開口一番、娘は母親にまとわりつきながら言った。


「大丈夫、罹り始めだったから思ったより重くなかったから。マナに心配しないで、って言ってたわよ」


でもでも、と娘は顔をしかめ、下唇を突き出す。


「お見舞い……行きたいって言ってもいい?」


「それは、どうかしらね」


裕は少し前の自宅での光景を思い返す。


ゆったり茶を飲んでいた母は、しばらくして「ちょっと横になりたいわ」と言い、布団の中の住人になってしまった。


大慌てで居間にごろ寝できる仕度をした父は、文字通り腫れ物を扱うように母を寝かせた。


脇腹に疱疹ができているので、触れるとやはり母は辛そうな顔をする。


自分を見下ろす夫へ向ける母のまなざしは裕が知らない種類の色が混ざっている。


幼い少女のような、あどけない頼り切った顔で父を見上げている……。


ふたりきりにしてあげよう。


裕は足音忍ばせて、静かにその場を去った。


家へ帰る地下鉄の中、母が力なく横たわる姿が始終思い浮かんだ。その様子に少なからず心にさざ波が起きて、朝の父の慌てぶりや、だるまのように母の枕元に侍る悄然とした様子を見て少しも笑えないと思った。


うーんと考え込んだ裕の様子を、夫は気遣わしげに見守る。


「とにかく、今日の予定はキャンセルしたことだし。明日から母さんの容態が安定するまで、実家の手伝いに通おうと思うんだけど、いいかしら」


「ああ、もちろん」


問う妻に、いわずもがなと言った様子で夫は返答する。


「今日はいいのか?」


「そうね……。夕ご飯の仕度か、お届けはやった方がいいと思う?」


「いいと思う」


「その時は私も行く!」


娘は両親の会話に割って入った。


「ねえ、いいでしょ。おかあさんの邪魔しないし、手伝えるし。いいよね?」


「あら、あなた、明日はテーマパークへ行くって言ってなかった?」


その通り。


開園三十周年記念に湧くテーマパークへ行く算段はすでに整えられていて、ホテルの手配もチケットもしっかり用意して、あとは当日を待つばかりだった。


「行けないよ、おばあちゃんが心配なのに、遊びに行っても楽しくない」


「マナが予定を変えたと聞いたら、おばあちゃんの方が気に病むんじゃないかな」


という父へ、


「治ったらいっくらでも遊びに行けるもん。だから、明日は行かない!」


娘は即答する。


なおも言い募ろうとした娘の繰り言は、母の携帯電話から鳴る着信音に遮られた。


「秋良からだわ」


そう言って、裕は受信ボタンを押した。


「おばさま、具合はどう?」


電話をかけてきた主は、母方の従姉で父の弟の妻である秋良あきら。彼女は開口一番、こう切り出す。朝、一斉送信したメールを受けてのことだ。


「ごめんなさい、いきなりあんなメール送りつけて」


「ううん、いいのよ。主人も心配してるわ。それで、叔母様のご様子はどうなの?」


「初期の帯状疱疹ですって」


「まあ……」


電話の向こう側で息を飲むのがわかった。


「両親もふたりとも罹ったのよ。慎一郎さんもね、数年前に」


「あら、そうだったっけ」


「ええ。両親の時は私がフライトで日本にいない時だったから経過はよくわからなかったのだけど、慎一郎さんのはね、ちょっと重くて。もう少しで神経痛が残るところだったのよね」


「ああ、そう言えば、以前体調がどうのって言ってたけど、あれのこと?」


「そうそう。やっぱりね、抵抗力が落ちてくる年齢になると発症しやすいのですって。あの人も若くないってことなのよね」


秋良と叔父は十歳以上離れている年の差婚だ。彼女は初恋の人を追い続け、恋を成就させた。ふたりは基本的に夫婦仲が良い。けれど時々、こちらがひやりとすることを従姉は言ってのける。叔父はひたすら苦笑しているが、何か弱みを握られているのだろうか、と思える程だ。


電話向こうの様子が気になる。叔父が聞いていないことを裕は秘かに祈った。


「冷やすより温めるほうがいいそうよ、今はインターネットであれこれ調べられるから、裕もチェックしてるかしら」


「朝連絡うけて、ついさっき帰ってきたばかりだったから調べ物も何もやってない。ありがとう、早速見ておく」


「もし、こじらせた時に診てもらえるお医者様の紹介が必要なら、慎一郎さんがかかったところをと思って。どうする?」


「そうね。念のため、教えてくれる? 父さんに伝えておくわ」


「ええ。後で連絡先をメール送るわね。じゃあ、明日のテーマパーク行きはだめそう?」


「うん、マナがね、その気になれないって。今も話してたところなの」


「彼女らしいこと」


「ごめんなさい、そういう訳で、悪いけどそちらの家族だけで行ってきてくれる?」


「ええ、気にしないで。また別の機会にご一緒しましょう」


「うん、ありがとう。じゃあね」


着信ボタンを押しながら、裕は娘に向かって「断っちゃったわよ」と言う。


「いいの。いつでも行けるところだからいいの」


うんうんと頷いて娘は軽く言ってくれるが。


ホテルのキャンセル料だなんだでかかるものがあるのだということは、子供だからわからない。特に大型連休の最中で、前日のキャンセルだ。掛かる旅費はほぼ全額戻ってこない。


……わからなくてもいいか、と裕は思い、ふと目を上げた先にいる夫と目が合う。「手配しておくよ」と言いながら苦笑している様子から彼も同感で、賛成なのだと見て取った。ありがとう、あなた、と一礼し、夫はしっかり頷いた。


「丸々二日、予定が空いてしまったけれど、どうする?」


「久々に蕎麦打ちでもするか」


「いいねえ! パパのお蕎麦、マナ、大好き!」


「じゃあ、蕎麦粉を仕入れにいかないとな。ストック切れてるから」


「うん! ねえねえ、せっかくだからみんなでお蕎麦パーティしようよ」


本当に娘は何事も気軽に言ってくれる。夫と妻は苦笑い。でも。妙案だ。蕎麦は母も好物。差し入れにもってこいだ。


あ。


だから蕎麦を打つ、って言ってくれたの?


だったらうれしい。夫のさりげない気遣いが本当にうれしい。


「そうね、秋良のところも予定が空いてしまったんだから、声かけましょうか」


「じゃ、メッセージ送るね!」


はい、送信、と手元のスマートフォンで手早くLINEを操作する隣で、何人前打てばいいんだ? と夫は思案顔で腕組みをした。


「言い出しっぺはあなたなんですから。諦めて」


「まあな」


「早くお買い物を済ませてしまいましょう」


「だな」


「愛美、お出かけするけど、ついてくる?」


スマートフォンにかじりついている娘に声を掛けると、彼女はそれにかまわず通話の最中だった。


「……うん、来てね。大丈夫、大丈夫、お父さんもいいって言ってるし」


「誰と話してるの?」


ん? と問う母を見ながら、娘は手短に言った、「麗ちゃん」と。


え? と夫は眉間に大変深い皺を作る。


「誰も、いいと、言って、ない!!!」


一言一言を歯切れ良く区切って、完全拒否の意志を示す。が。


「いいわよ、麗。待ってるから、来てねー」


娘の携帯を引き継いで、裕はちゃらっと答えてしまった。


「ん? ええ、もちろん。彼もいいって言ってるわよ。だから手ぶらでいらしてね。何も持ってこなくていいわあ」


「こらーっ! 誰がただで食わせるかあ!」


電話の向こうの友人に聞こえるように大きな声を上げたつもりの夫の咆吼は、相手には届かなかった。早々と妻によって電話は切られていたからだ。


「裕、お前ね」


「あなた、似てきたわね」


「誰が? 誰に!」


「お父さんに」


お父さんとはつまり、裕の父で彼にとっては義父であり舅である政を指す。


勘弁してくれよ、と夫は肩を落とした。


「ねえねえ、パパ。多めにお蕎麦作って。おじいちゃんとおばあちゃんの所にも届けようよ。ね??」


本当にこの娘は何事も気軽に宣ってくれる。


親子三人同じことを考えてるのね。


「お父さんがんばって!」


妻と娘は無責任にエールを送った。


結局この日。裕の夫は蕎麦打ちに忙殺された。


義両親の分と蕎麦パーティの分。休みなしだった。


自分達家族で三人。嫁の実家はふたり。従姉の家族は五人。そして友人がひとり。


しかも秋良のところは食べ盛りの男の子ばかり三人兄弟。彼らはまったく遠慮なく舌鼓を打ち、「おじさん、おかわり!」とお椀を差し出す。


うちはわんこ蕎麦屋じゃないんだぞ! と夫は内心で愚痴りながらもトントンと規則正しく蕎麦を切る包丁と蕎麦をざっざっとザルに上げる音はしばらく続いた。


愛美をやきもきさせた、榛色の瞳と灰色に近い褐色の髪を持つクォーターの友人・柴田麗は少し遅れてやってきた。


愛美は驚喜して彼を迎え入れ、従兄弟の若干名はその様子を見てぶつぶつ文句を言う。愛美の父である友人と恩師の子息の、なんとも面白くなさそうな顔を見比べ、麗はやれやれという表情を浮かべ、その他の大人たちと目配せし合った。


「手ぶらでどうぞ」と言われてそのまま手ぶらでは来ない彼の手には、「限りなく手ぶらに近いだろうが!」と夫が毒づく大きさの、上質な山葵と鮫皮のおろし台が握られていた。


山葵が苦手な子供たち以外の大人、もちろん婚家の義両親に好評を博したのは言うまでもない。


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