第六話 盗賊退治・前編
何やかんだすったもんだありまして、火山の麓まで来ております。
分かりますでしょうかこの暑さ。尋常じゃありません。
まだ麓です。
先はまだまだ遠いとです。
「暑い・・・」
汗を拭いながらも、山道を進むミア。
上り始めた頃の元気は既に無くなっている。
「来るんじゃ無かったかなぁ・・・。でも魔石がなぁ・・・」
後悔を始める勇者様。
もう三回目ですよ。
「イズミ~。何とかしてくれ~」
振り返り、助けを求めてくる。
お~お~。髪の毛ベットリだよ。
「何でイズミは涼しそうなんだ・・・?」
俺?
俺はホラ。風で熱気を吹き飛ばしてるから。
周りに扇風機がある感じ。
魔法って便利だね~。
「いいな~・・・」
はははは、羨ましかろうて。
ミアは口を尖がらせて、悔しがっている。
ん? 何で自分一人そんな事するのかって?
ミアは勇者様だからね。
魔王倒すって言うのに、この位でへこたれてどーするの。
これは試練だよ、試練。ふははは!!
「・・・周り・・・風・・・涼しい・・・」
何か、ブツブツ呟くミア。
何だ? 暑さでバグったか?
「はっ!?」
閃くミア。きっと、頭の上には豆電球があるはず。
スススっと近付いてくるミア。
「何故隣に来るのでしょう?」
「やっぱりイズミの周りは涼しいな」
フフンと笑うミア。
バカめ。ならば範囲を狭めるだけさ!
「む・・・」
ギュウギュウと詰めて来るミア。
暑い暑い!
「ふんふんふふ~ん♪」
ご機嫌な様子で山道を登るミア。
あの後、あまりにもしつこかったからミアにも魔法を掛けてやった。
今ではすっかり元気である。
「もう少しじゃないか!?」
すっかり回復したミア。
「あ~。どうだろーねー」
ガリガリ魔力が削られていく俺。
これからは「呪文を使うな」でいこう。節約せねば。
転がる岩を避け、崖の脇を進み、時々出てくる魔物を倒しながら中腹にある盗賊のアジトを目指す俺達。
結構面倒臭い所にアジトを構えてるな~。
『うおおぉっ!!』
ん?
何だ、この暑苦しい声。
「大変だ!! 誰か襲われているのかもしれない!!」
走り出す。
何か嫌な予感しかしない。
ミアと旅をしていて、悪い予感がしなかった事が無い。
「はああぁっ!」
剣を構えて、声のする方へ走っていくミア。
着いて行くと、鳥の魔物・ガルーダとトカゲの魔物・サラマンダー。
そして、剣を振る誰か。
鎧から見える身体は、かなりムキムキだ。
・・・ん?
「でやあぁっ!」
「む? 手助けか? 感謝するぞ少女!!」
戦い始める二人。
ミアはサラマンダーに攻撃した。
サラマンダーに32のダメージ。
ムキムキの誰かはガルーダに攻撃した。
ガルーダは身をかわした。
ガルーダは様子を伺っている。
サラマンダーの攻撃。
ムキムキの誰かに100のダメージ。
「嘘ぉ!?」
薄っ! 防御薄っ!
「ふははは! やるではないか!」
ムキムキの誰かはガルーダに攻撃した。
ガルーダに200のダメージ。
ガルーダを倒した。
・・・攻撃力と防御力のバランスおかしくね?
「イズミ! 今だ!」
見れば、ミアはサラマンダーを羽交い絞めにしていた。
魔物を羽交い絞めにする勇者。
勇者ってすげぇのな。
きっと、作戦は「ガンガンいこうぜ」固定だと思う。
しかし今の俺は「呪文を使うな」。魔法使いの俺に素手で倒せってか?
勇者ってひでぇのな。
「よくやった、少女!」
仕方なく魔法を使おうとした時。
何を考えたのか、サラマンダーに斬りかかるムキムキの誰か。
サラマンダーは尻尾を振った。
ムキムキの誰かに120のダメージ。
「ぐっ、油断した!」
こいつらは「いのちをだいじに」を知らないらしい。
「貫け、弾けろ。アクアジェット!」
埒が明かないので、水の弾丸でサラマンダーを倒す。
「むぅ、濡れたじゃないか」
ぶーぶー文句を言うミア。
余波で濡れたらしい。知らんよ。
「助かった。礼を言うぞ青年に少女!」
剣を収めて、こちらを向くムキムキの誰か。
「ん?」
「むむ?」
目が合う。
「もしや、あの時の少年か!?」
俺を見て驚いた顔になり、そして笑顔になるムキムキの誰か。
「あの~? どちら様で?」
「我を覚えてないと言うのか!?」
グイグイ近付いてくる。
近い近い。
・・・ん? この特徴的な喋り方は・・・。
金髪にムキムキボディに精悍な顔立ち。
「あの日、共にトロールと戦ったではないか!?」
・・・マッスルさんだった。
マッスルさん再登場。
攻撃力が高いです。体力も高いです。
でも防御は紙です。