第四話 旅は道連れ世は情け
「あのねミアさん?」
「ん?」
「俺はこれから田舎に帰る所でね?」
「うん」
「つまり、その魔王とやらを封印する旅には着いていけない訳で・・・」
「何をバカな事を言ってるんだ!!」
・・・怒られました。
「魔王を放っておいたら、世界は滅亡するんだぞ!?」
ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・。
声が大きいです勇者様。ホラ、周りの人達ビックリしちゃってるよ。
「いや、そうしない為にミアは旅してるんでしょ?」
「うん」
「魔法使いだって一杯居るわけだし」
「うん」
「俺より強い奴なんて一杯居るわけで」
「うん」
あ、そこ頷いちゃうんだ?
「だから、俺としてはその旅に参加するのは勘弁願いたいな~なんて・・・」
「何をバカな(ry!!」
怒られました。もう何なの!?
どうやって逃げようかなぁ・・・。
ここはいっそ、「これをこうして・・・」無理矢理にでも振り切って「ここでこうやって・・・」ヤマに帰るか。
うん。そうだ、それが良い。
そうと決まれば・・・。
「良し、これで完成だ!!」
何がですか?
「うん? ちょっと、親睦の印しに勇者の刻印を・・・」
はい? と、右手を見れば手の甲になにやら変な模様が。
ははは、輝いておられるよ。
ピッカピカでござる! ピッカピカでござる!
「これで、イズミは私の仲間だな」
はい?
いやいやいや、何を言っておられるのやら。
いと可笑し。
「これは何でしょう?」
「ああ、勇者の刻印と言ってな。遠く離れた場所に居ても、私の近くに一瞬で転移する事が出来る・・・」
「待てぃっ!!」
何してんのこの子!?
アレですか? もう逃がさないぞ☆ とでも言ってるんですか!?
「ちなみに、魔王を封印するまで消えないからな。安心だな!!」
「何がだぁっ!!」
やべーよ。完全に詰んだよコレ。
完全に勇者の仲間その1じゃん。
ドラ○エだってもっとマシな誘い方するっつーの。
・・・いや、実はル○ーダの酒場で集められる仲間達もこんな感じだったのか?
という事はアレか? 奴らは何だかんだで世界救っちゃったのか?
いや、考えすぎだ俺。
でも待てよ?
いやいや。
いやいやいや。
いやいやいやいや。
もう気分はメダパニ掛けられたスライム。
「さて、それじゃあ次の目的地に向かうとしよう」
俺の手を掴んで立ち上がるミア。かつて、これ程まで強引な勇者が居ただろうか?
「あの~、ミアさん?」
「ん?」
「このまま田舎に帰してくれるっていうのは・・・」
「却下だ」
ズイズイと進むミア。
ゴミのように引き摺られる俺。
『頑張れよ勇者!!』
『世界を頼んだぜ!!』
話を盗み聞きしていた奴らが、やんややんやと声を掛けてくる。
あぁ、奴ら死んだ魚の目をしてやがる・・・。
しかしここで終わる俺じゃない。
「ミアさんや」
「うん?」
「俺の他に、誰かもう一人くらい仲間にしません?」
ピタリと止まり、周りを見渡す勇者ミア。
『バッカてめぇ!! 何て事を!!』
『大人しく引き摺られてれば良かったものを!!』
は~っはっはっは!! 何とでも言うがいい!!
「魔王倒すんだし、二人だけじゃ・・・ねぇ?」
俺の言葉に、ゆっくりと周りを見て。
ワクワク。
ゆっくりと首を振るミア。
何でっ!?
「駄目だ。こいつら弱そうだもん」
おぉぅ~い!!
『良かった~・・・』
『あっぶねぇ』
いいのかお前ら!? サラッとすげぇ事言われたぞ!?
「さぁ、行こう!!」
「嫌でござる! 絶対に嫌でござる!!」
「もぅ。そんな我が侭を言うと、こうだっ☆!」
鳩尾にグーされました。
てめぇ・・・本当に勇者か・・・?
・・・拝啓 お父様、お母様。
最近如何お過ごしでしょうか?
旅に出て早10年。人生とは厳しいものだと痛感しております。
さてこの度、魔王を封印する旅に出る事になりました。
勇者様とは多少強引な所があるのですね。ビックリです。勇者という職業がある事にもビックリです。
何でも大陸の人にとってはポピュラーな職業だそうで。軽いカルチャーショックを受けました。
そんな私の立場ですか?
勇者のお供です、ハイ。
おまけ
とある酒場で。
「ふ~。やっと行ったぜあいつら」
「あぶねぇよな。あいつが何か言い出した時には、もう終わったなって思ったけど」
「勇者だってよ、勇者」
「アレだろ? 魔王倒しに行くんだろ?」
「マジかよ」
「魔王ってアレだろ? 一夜で世界滅ぼせるんだろ?」
「おっかねぇな」
「すげぇよな、あの女の子」
「何がすげぇって、あそこまで人の話を聞かないのがすげぇよ」
「巻き込まれなくて良かったぁ」
「まぁ、何にせよアレだよな」
「あぁ」
「「「「あの魔法使い、可哀想に・・・」」」」
勇者は魔法使いを仲間にした!
魔法使いはルーラを唱えた。
回り込まれてしまった。
勇者からは逃げられない!
・・・大体こんな感じのお話です。