番外編1 とある依頼の中で
大陸に渡って早5年。
8歳だった俺も13歳になった。時の流れは早いもんだね。
「ふはははっ!! 依頼にあった泉はあそこだな!? 行くぞ皆の者!! 我に着いて来い!!」
そんなピッチピチな少年に育った俺は、今とある森の中。
右には剣を背負ったヒョロヒョロの青年。左には杖を持った小太り青年。
そして、目の前にはこれまた剣を腰に差したムキムキの青年。
イズミ・ユウキ13歳男、しっかりと周りを固められております。
「だ、だだ、大丈夫だよ、イズミ君。もも、もう少しで依頼は終わるからね」
ヒョロい兄ちゃんに、何かすっげぇ気遣われてる俺。
鼻息荒く、周囲を警戒する小太り。
何でこんな事になったのか。それは数時間前に遡る・・・。
「お~。ここがノマルって街か~」
旅を続ける途中に立ち寄った街。そろそろ路銀も尽きる頃に、行商人に聞いた街に辿り着いた俺。
何でも、何もかもが普通で特に面白い事は無い街だそうで。
いいじゃないか普通。ビバ☆ノーマル!!
ウキウキと街の入り口に向かう。おや? あれは門番かな?
直立不動で、ご苦労な事だろう。よし、元気に挨拶しよう。
不法滞在者だが、何、臆することは無い。何事もキョドるから駄目なんだ。
「・・・む?」
「こ、こんにちわ~」
ものっ凄い下手に出る俺を誰が責められようか。ぶっちゃけ怖かったんだ!
「ここは、ノマルの街です」
おお、丁寧に街の名前を言ったぞ。今まで旅してきて始めてだ。
「ここって、どこか名物とかあるの?」
「ここは、ノマルの街です」
ん?
「俺、旅しててさ」
「ここは、ノマルの街です」
んん?
何だ? バグったか? NPCか?
まぁいっか。とりあえず無視してギルドに行こう。
「こんにちわ~」
む?
声に振り返ると、俺と同じような旅人が門番に挨拶してる。
ふふふ、馬鹿め。奴はNPCだ。同じ言葉しか喋らん。
一人、謎の優越感に浸る。
「ああ、こんにちわ。旅人かい? 疲れただろう」
!!
しゃ、喋った!! あ奴、喋りおった!!
街に入る旅人。笑顔で手を振る門番。
ダッシュで戻る俺。無表情な門番。
「あの~・・・」
「ここは、ノマルの街です」
俺が何をしたっていうんだい・・・。
「ここは、ノマルの街ででででで」
ヤバイ。完全にバグった。
逃げるように街に戻る。
「こんにちわ!」
「ああ、こんにちわ」
聞こえない。俺には何も聞こえないぞ。
「はい。イズミ様ですね。では、こちらが斡旋可能な依頼となります」
冒険者ギルドで、依頼書を眺める。
どうやらここにはNPCは居ないらしい。・・・よかった。
「う~ん」
さて、今日はどの依頼をこなそうか。時刻は昼過ぎ。頑張って大きな依頼でもやるか。
それとも、小さい依頼を数こなすか。悩み所だ・・・。
「む、むむむ?」
背後から特徴的な唸り声。まさかの川○登場か?
ってか背後から声聞こえ過ぎるだろう。どれだけ隙だらけなんだ俺。
「おい、そこの少年」
庭の草むしりで小遣い稼ぎか、ゴブリン倒して今日は終わりか・・・。むむむ。
「無視か少年。ふむ、中々の胆力だ」
「ええぃ五月蝿い!!」
何だって言うんだい!!
勢い良く振り返る。
「む」
振り返った先に顔。近い近い。
「何でしょう?」
「いや、君みたいな少年がギルドで仕事など。いくら実力主義の職場とはいえ、理由があるのだろう」
少し離れて、腕を組みうんうんと頷く○平。
短く切った金髪に精悍な顔立ち。鎧を着てても分かるほどのマッスルぼでー。
・・・掘られるっ!
ゆっくりと尻を隠す。間違いなく懸命な判断だと思う。
「そこで、我が手伝ってやろう。光栄に思うがいい」
ふはははと笑うオッサン(青年?)。
うわぁ・・・。何か変なのに絡まれた・・・。
どうしてこうなった・・・orz。
書いてて長くなったので前後編に分けます。
次回こそ魔法の説明ががが。