第十六話 道が見えたと思ったら落とし穴が掘られていた件
「つまり、どういう事なんですか? 依頼書には、詳細は会ってからって書いてますけど」
あれから場所を移動して、ここは最初にミーティングをした酒場。
俺達は、ベルさんを加えて再度ミーティングをしていた。
しかし、どういう事なんですか? か・・・。こういった説明はミアの方が得意だな。
よし、任せた。
「実は、私は勇者なんだ!」
「な、何ですってー!」
ババーンと驚くベルさん。
そこまで驚くか?
「それで、かくかくしかじか・・・」
「なるほどー。だから、踊り子を探していたんですねー」
何だかんだで納得するベルさん。
いや、やっぱミアってば便利だわ。今までのあらすじは、とりあえずミアに説明させれば何とかなる。
決して作者が面倒臭がっている訳じゃないぞ? ホントだよ?
「そういう訳なのだ。手助けを願えないか?」
キリッとした顔でマッスルさんがお願いをする。
だが如何せん。若干鼻の下が伸びている。台無しだ。
そろそろベルさんの服装にも慣れようよ。
「あの剛剣のマッスルさんが、私にお願いしてる・・・。分かりました! どこまで力になれるか分かりませんが、お手伝いします!」
キラキラした瞳でマッスルさんを見つめるベルさん。
見つめられて照れる憧れの人=マッスルさん。
まぁ何にしてもこれで話は纏まった。
いやー、良かった良かった。
「それで、ベルさんはどれだけ踊りが上手なんだ?」
はっはっはと談笑する中。
我らが勇者様の一言で、ベルさんが固まった。
ん? 一体どうしたのか。下痢か?
「・・・実は、私は踊りがそんなに上手くなくて・・・」
「・・・え?」
申し訳なさそうなベルさんに、凍りつくミア。
「で、でもやる気は誰にも負けません! 今回の舞踏大会だって、やる気で何とかなるかなって思って登録しました!」
「何だ。やる気が負けてないなら大丈夫だな。ビックリした。はっはっは!」
「ふははは! やる気さえあれば、大抵の事はどうにかなるからな!」
「で、ですよね!? あはははは!」
駄目だー!
大丈夫じゃねぇよ、こいつ等駄目だ!
ど、どうする!? 考えろ俺!
このまま風の魔石が手に入らない→魔王を封印か退治か何か知らんけど、それが出来ない→刻印が消えない→ヤマに帰ったとしても、勇者からは逃げられない!!!
良くない! 非常に良くない!
えぇい、ライフカードを! ライフカードを出せ!
1.優勝者を襲って魔石を手に入れる。
2.審査員に賄賂を贈る。
3.出場者を闇討ちして回る。
駄目だ、碌な選択肢が無い。
いい感じでテンパる俺。
「どんな踊りが得意なの?」
今は情報を集めるんだ。主に俺が帰る為に!
「えっと、不思議な踊りですね」
駄目だった。
こうなったら仕方無い。
「えぇい! 練習だ練習! 街の外出るぞ!」
何とかして、ベルさんを優勝させなければ!
街の外に出て、練習を始めるベルさんと見守る俺達。
「えっと、当日はウィンディを象徴する風車のように踊ろうかと思ってるんですよ」
そんな事を言いつつ、踊り始めるベルさん。
どう見ても、腕を振り回すキチ○イにしか見えない。
「ど、どうでしたか!?」
「何だ、綺麗な踊りじゃないか!」
「大したものだな、踊り子よ!」
パチパチと拍手するミアとマッスルさん。
えへへと照れるベルさん。
・・・こいつ等に感想を任せたら駄目だ。
「どうでしたか、イズミさん!」
褒められて調子に乗ったのか、ドヤ顔のベルさん。
「駄目。全然駄目。美しさの欠片も無い」
あ、座っていじけ出した。
「我は嫌いではないのだが・・・。大丈夫か踊り子よ」
優しさ爆発のマッスルさん。
しかし、俺は甘くない。何せ、これからの人生が掛かっているんだからな。
と、そんな感じで練習が続く中。
―キシャアアアアア!
「む、魔物だ! イズミ!」
突然のエンカウント。ベルさんの踊りが魔物でも呼んだか?
出てきたのは、鳥と人が合体したような魔物・ハーピィだった。
-シャアアア!
叫びながら、エア・カッターを放ってくる。
こいつは魔法主体で攻撃してくる。逆に言えば、打ち止めになれば何も出来ない。
でも俺には関係無いんだけどね。適当にファイア・ストームでも撃ってご退場願おう。
今はハーピィより練習である。
「ここは任せて下さい!」
魔法の詠唱を始めようと思っていた矢先。
何を思ったのか、短剣を握って躍り出るベルさん。
威嚇するハーピィ。
ベルさんは、不思議な踊りを踊った!
ハーピィの魔力が30減った。
俺の魔力が10減った。
ミアの魔力が20減った。
マッスルさんが鼻血を噴いて倒れた。
「マッスルさーん!」
確かにセクシーな踊りだったけれども!
つーか敵味方関係無しかよ!
「後は任せろ! はああああっ!」
ハーピィを切り裂くミア。
まさか一撃とは。
ベルさん踊る必要無かったんじゃね?
「大丈夫ですか!?」
「ぐふぅ。何、我はこの程度でやられはせん・・・」
ベルさんに介抱され、ヨロヨロと立ち上がるマッスルさん。
どこから突っ込めばいいのやら。
しかし、コレはコレでいけるかもしれない。
「ベルさん。当日は不思議な踊りでいこう。そうしよう、うん」
「でも、風車のような踊りが・・・」
あー、もういいよ。それは俺が何とかするから。
「何か秘策があるのか?」
「んー・・・」
「どうするのだ、少年」
さて。どーしようか。
・・・酒でも飲みながら考えるか。うん。
次で風の魔石編は終わりです。
魔王まであと少し。さて、この先に何が待ってるんでしょうか。
あと、20,000PV超えました。ビックリです。
思わず二度見してしまいました。
これからも、宜しくお願いします。