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勇者のお供  作者: 御影
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第十四話 風の谷ウィンディ

 アークアを出発して、山を越え谷を越え。


 途中レベル上げもしつつ、辿り着いたのは一つの谷。


「ここが、風の谷か」


「むぅ、確かに風が強いな」


「風車があるぞ?」


 谷に数多く設置されている風車にテンションが上がるミア。


「よし、ウィンディはこの先だな?」


 ズンズンと進むミアと、それに続くマッスルさん。


 はぁ~、頑張るね~。


 この先、風はどんどん強くなっていくだろうに。


「イズミ~!」


「何をしているのだ? 少年!」


 先を行く二人が俺を呼ぶ。


 確かに、俺は二人を追いかけるべきだろう。


 しかし。しかしだよ?


 俺のモットーは『楽して生きよう』だ。


 鳴かぬなら 鳴くやつ連れて来いよ ホトトギス。


 面倒な事は無しにしよう。


「舞い上がれ、フライ」


 足元に魔力を集め、身体を浮き上がらせる。


 いやぁ、空を飛ぶって良い事だ!


『なっ、ズルイぞイズミ!』


 ぶわははは! 何を言っても、もう遅いわ!


 貴様等は虫の様に地べたを這って進むがいい!


 む、横風・・・。


「ん? んん?」


 あれ? 何だか身体が流されていくぞ?


 ビュウウゥゥゥッ!


「ぬおおぉぉぉ!」


 嘘ぉっ!


 やっべ、バカにしてた! ここの風、完全にバカにしてた!


『何だ少年。楽しそうではないか』


 楽しく無いわ!






「まったく。こんな場所であんな事をするなんて。駄目じゃないか!」


「はい・・・」


「もう少しで死ぬかもしれなかったんだぞ? それに・・・クドクド」


「仰るとおりで・・・」


 あの後。


 風に押し流されて上空へ巻き上げられた俺は、何とかミアに助けられた。


 どうやら、勇者の刻印を使ったらしい。


 ブラフじゃなかったんだね。


「まぁまぁ。少年にも悪気があった訳ではないのだ」


 おぉ。マッスルさんは味方か!


 しかし肩を組むんじゃない。まだ疑いが晴れた訳じゃないんだからな。


「むぅ。反省してるか?」


「はい。MAX反省してます」


「まっくす? よく分からないけど、反省しているならいい」


 やれやれと首を振りながら、先を歩くミア。


 屈辱である。


「おっ、あれがウィンディの入り口ではないか?」


 そうして歩き続ける事しばし。


 マッスルさんが指差す先には、確かに街の入り口が。


「こんにちわ~!」


 走りながら門番に近付くミア。


 こいつは疲れる事を知らんのか。


 そんな元気一杯なバカに続いて、街に近付く俺とマッスルさん。


 ん? 何か、門番の様子がおかしいな。


「やべぇよ・・・やっぱ今日風つえぇよ・・・マジないわ・・・」


 何だこの門番、滅茶苦茶テンション低いよ!


「うわぁ、洗濯物絶対やべぇよ・・・。何で俺こんな街に生まれたんだよ・・・」


 洗濯物如きでどんだけ後悔してんの!


 頭を抱えながら後悔を続ける門番をスルーして、街の中へ。


 確かに風が強いな。裾がバタバタ言ってるよ。


「・・・・・・・・・・・!」


 強い向かい風の中、力強く言うミア。


 ・・・ごめん、何言ってるか聞こえなかった。


「うむ。そうだな」


 頷くマッスルさん。すげぇな聞こえたんだ。


「何か知らんけどその前に、宿に入ろう! ね? 一回宿に入ろう!」


 やる気一杯なのはいいけど、聞こえなければ意味が無い。


 別に休憩したいからとかじゃ無いよ? 本当だよ?






「で、どうやって魔石を探すのだ?」


 宿屋の角にあった酒場でミーティングを行う俺達。


「やっぱり、聞き込みからじゃね?」


 何も情報が無い中で大事なのは、やっぱり聞き込みだろう。


 逆転○判でもそう言っていた気がする。


 気のせいだって? ノリで喋ってもいいじゃない。


「聞き込みか。では、街に出るか?」


 いやいや甘いよマッスルさん。


 我らが勇者を見てみなさい。


「すみませ~ん。風の魔石を知りませんか~?」


 デジャブだよデジャブ。


 聞き込みの『き』の時点で既に行動に入ってる。


 もう職業:アグレッシブでいいよ。


「ふははは! 流石は勇者だ! 最後まで聞いていた我が馬鹿みたいではないか!」


 感心しながら頷くマッスルさん。


 今更だけど、多分この人も種族:人の話を聞かない奴だ。


 そんなに長い台詞でも無かったろうに。


「買ってきたぞ、風の魔石!」


 えぇー。


 何? 魔石って買える物なの?


 嬉々としてミアが手に持つ魔石。


 どう考えても、緑に塗られた石ころにしか見えない。


「買ったって、どこで?」


「さっき酒場の人に聞いたら、宿屋の入り口に並んでるって」


 どれどれ?


 いそいそと入り口へ。


「ってコレ、完全にお土産じゃねーか!」


 ずらりと並ぶ魔石っぽい石ころ。


「でも、ちゃんと立て札に『ウィンディ名物風の魔石』って書いてるじゃないか」


 勝ち誇るんじゃありません。


 ちゃんと括弧書きで『模造品です』って書いてあるじゃないか。


「しかし、ここに模造品があるという事は、本物があるという事ではないか?」


 む、マッスルさん賢い。


 模造品があるなら、元になった本物も確かにあるだろうなぁ。


「すみませ~ん。本物ってどこにありますか~?」


 そして光るミアの行動力。


 石ころ持って受付に迫るな。若干引いてるじゃんよ。


「風の魔石でしたら、丁度今年開催される舞踏大会の優勝商品になってますが」


 舞踏大会とな?


「はい。4年毎に開催されるウィンディ名物です」


「それはいつやるんだ?」


「明日ですね」


 明日か。何にせよ、風の魔石を手に入れる為には舞踏大会に出て優勝するしかない訳だ。


 ん? ミアさん?


 ・・・何でこっちを見て笑うんでしょう?

風の魔石編開始。


勇者一行は舞踏大会をどう乗り越えるのか。


イズミ君の運命や如何に。

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