番外編4 勇者と戦士とレベル上げ
アークアにて水の魔石を手に入れた後。
勇者一行は、一路ウィンディへと向かっていた。
「良くない! 非常に良くない!」
「む? いきなりどうしたのだ少年よ」
「はぁ・・・はぁ・・・そうだぞ?」
いやいやいや。
良くないよこの状況。実に良くない。
何回良くないって言えば気が済むんだとか思うかもしれないけれども、何かしら良くない!
ウィンディへと向かう道の中。
元気な俺とマッスルさんとは対照的に、最早瀕死の勇者様。
ステータス画面、一人だけ黄色だよ。まっ黄色だよ。
顔色なんか既に末期色ですよ。
「はぁ・・・はぁ・・・、何の・・・この程度・・・」
薬草を食べて回復するミア。
何個目だよそれ。
そもそも。そもそもだよ?
ウィンディに行くまで、結構な街あったよ?
でもね? 勇者様の一声で全部素通りですよ。
普通はレベルを徐々に上げながら進む道を駆け足で進んじゃったもんだからもう。
そりゃ魔物も強くなるわ。
「確かに、言うとおりだな少年」
「・・・ゴクン。イズミの言っている事は分かった」
元気になったか。それは何より。
「と、言う事で!」
「言う事で?」
「今からレベル上げをしようと思います!」
「で、具体的に何をするのだ少年」
む、いい質問だねマッスル君。
「まず、レベルを上げるには何をしたらいいと思う?」
「はい!」
はいミア君。元気があってよろしい。
「頑張る!」
何をだよ、漠然とし過ぎだよ!
「違うぞ勇者よ。答えは魔物と戦う事だ」
「その通り!」
そう。魔物と戦えば、戦った人達は経験値が貰える。
その経験値が溜まれば、魔物と戦う事で得た経験を自分の物に出来る。
俗に言うレベルアップである。
結局はスポーツとかと一緒だ。経験が多ければ多いほど、自分の力量も上がる。
しかも、最後に魔物に止めを刺せばそれが自信になって得られる経験値も増えるわけだ。
つまり!
「今から魔物と出来るだけ戦う! しかも、止めは全部ミアが刺すんだ!」
「む? 我はどうすれば良いのだ?」
いやいや、マッスルさんはもう十分レベル高いって。
「む、魔物だ!」
あれから、魔物を求めて彷徨った俺達。
出てきたのは、鳥の魔物・ガルーダだ。
火山で会ったのよりレベルが高い。多分、50位だろう。
「しかも、群れで来たぞ!?」
ちょっとビビってるミア。
確かに、5匹は居るな。
しかし、魔法使いはうろたえない。
「とりあえず、適当に戦え。マッスルさんはミアのサポートお願い」
「分かった!」
「ふははは! 任されよう!」
剣を抜いてガルーダに躍り掛かる二人。
「とりゃあっ!」
おー、頑張ってるなー。
さて、じゃあミアが頑張っているその隙に俺は準備を進めよう。
手っ取り早くレベルを上げないとな。
「はあぁぁぁっ!」
右手、その五本指に魔力を込める。
くっ・・・。右目が疼く・・・。俺の中の獣が、魔力と一緒に殻を破って・・・って違う違う。
あぶねぇ。厨二的な何かが思わず溢れ出しそうだった。
静まれ前世の黒歴史。精神年齢オッサンの俺がソレやったら大火傷じゃ済まないってばよ。
む? でも、呪文の詠唱も若干厨二病的な・・・。
えぇい、それは仕方の無い事なんだ! 俺は厨二病じゃないんだからねっ!
「フ・レ・ア・ボ・ム!」
魔力が渦を巻き、五本指それぞれに現れる炎の塊。
これは、ダイの大○険を元に俺が作り上げた、この世界では俺のオリジナル魔法・・・!
「少し避けてろ、二人共!」
俺の言葉に、バッと散開するミアとマッスルさん。
魔力を込めた右手をしっかりと握り込む。
さぁ、行くぞ!
「フレアボム! フレアボム! フレアボム! フレアボム! フレアボム!」
・・・そうして、俺は親指から順番に魔法を放った。
え? フィンガーフ○アボムズだと思ったって?
いやいや。オリジナルって言ったじゃん。
それに、絶対アレ単発で連射した方が強かったって。
メラ○ーマ5連発。考えただけでも恐ろしい。
そう。これが、俺の考えたオリジナル魔法。5連発魔法。
ふははは! アタイってばさいきょーねっ!
ちなみに、ガルーダには熱風しか当ててない為瀕死状態である。
直撃させたら死んじゃうしね。
「さー、止めを刺せー」
わーわー言いながら止めを刺していくミア。楽しそうだ。
ん? 鬼畜? 何とでも言うがいいさ!
それから2時間ほど。
「どうだ? 強くなっただろうイズミ!」
嬉しそうに笑いながら駆け寄ってくるミア。
何と言う事でしょう。
先程までレベル36程度だった勇者が、あっと言う間にレベル62の猛者に早代わり。
まさに劇的ビフォーアフター。
「ここまで強くなれるなんて・・・。私の為に何時間も付き合ってくれて・・・。ありがとうイズミ!」
何かしこたま感謝された。
「むぅ。我も戦ったのだが・・・」
マッスルさんが不憫過ぎる。
ちなみに、マッスルさんもレベル72まで上がった。
もう魔王倒せるんじゃね?
「よし! これでもう安心だな!」
「うむ! では、先に進むとしようではないか!」
・・・えっ? もう出発するの?
レベル上げも終わったし、少し休憩・・・。
「さぁ、行こうイズミ!」
あっ、ちょ、ミアさん、何か握力強くなってませんか?
パラメーターオーバーフローしてませんかぁっ!?
という訳で、今更ながら経験値についてのお話でした。
ちなみに、書いてあるのは作者の思う経験値論な訳であって、実際の人物、団体とは何の(ry