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勇者のお供  作者: 御影
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第十二話 勇者と精霊と

 これまでのあらすじ。


 洞窟内の湖でミアが遊んでいたら、水の精霊が出てきた。


『で、何の用なのだ人間よ』


 不機嫌そうに喋る球体。


 寝起きが悪いのかな?


 表面がぷるぷる揺れてるよ。


「私達は、ここに水の魔石があると聞いて来たんだ」


 胸に手を当てて、球体に答えるミア。


『水の・・・魔石?』


 ミアの言葉を聞いて、波打つ球体。


「おいでませ魔石の洞窟と書いてあったのだ。あるのだろう?」


 どうなんだ? ん? と球体を見上げるマッスルさん。


 お前等怖いもの知らずだな。


『・・・なる程、貴様等か!!』


 いきなり怒る精霊。何でっ!?


 球体の表面から飛んでくる多数の水の飛礫。


「盛り上がれ、アース・シールド!」


 咄嗟に地面を盛り上げて盾を作る。


 ががががっ!


 何コレ、いきなりボス戦ですか!?


「い、イズミ!」


「どう言う事なのだ少年!」


 俺の後ろでアワアワと慌てる二人。


 多分お前等の態度が気に入らなかったんだ。


 だって、相手は精霊だぞ? もうちょっと腰を低くしてだなぁ・・・。


「さては、力試しだな? そうだろう精霊!」


 ちょ、おまっ、黙れ!


 がががががががががっ!


 ヤバイヤバイ、勢いが凄い事になってる。


『我から秘宝を奪っていきながら、更に魔石まで奪おうと言うのか! 人間!!』


 え? 何の話ですか?


「このままでは埒が明かんぞ少年!」


 マッスルさん、まず立ち上がろう。


 ずっと頭抱えてブルブルしてるよ。


「待ってくれ精霊! 話を聞いてくれ!」


 剣を抜いて大地の盾から飛び出すミア。


 抜き身の剣を握って話し合いとはこれ如何に。


『白々しいな人間!』


「聞いてくれ! 私は勇者だ!」


『何が勇者だ!』


「むぅ・・・仕方無い」


 諦めんなよ!


「話を聞かないなら・・・こうだ!」


 言って、駆け出すミア。


 飛んでくる飛礫を避けながら、湖へ。


 特攻か? それとも、何か秘策が?


 これ程勇者の背中が頼もしく見えたのは初めてだ。


「とぅっ!」


 浮かび上がる球体まで跳び上がるミア。


「勇者ぁぁぁっ・・・パーンチ!!」


 殴ったー!!


 あの勇者、水の球体を殴りおった!!


『がはぁっ!』


 そのまま地面に激突する精霊。


 プヨプヨしてそうなのに弾けないのは精霊だからか。


 いいや、深く考えるのは止めよう。


「さぁ、話をしよう!」


 腕を組んで、精霊を見下ろすミア。


 肉体言語で精霊を黙らせる勇者。


 どこまでも新感覚だな、おい。


『ぐ、ぐぐぐ・・・』


 再び浮き上がろうとする精霊。


 その球体が、ビクっと震える。


 多分、ミアと目が合ったかなんかしたんだろう。


 目があるかどうかは甚だ疑問だが・・・。


「さぁ、話だ」


『ヒィ・・・!』


 ゴゴゴゴゴ。


 うわぁ、精霊怯えちゃってるよ。


「辛い戦いだったな、少年よ・・・」


 そもそも戦ってすらない筋肉が何を言うか。






「で、何で怒ったんだ?」


『いや・・・あのですね・・・』


 ものっ凄い腰が低くなってる精霊。


 きっと、初めて殴られたんだろう。


 普通は殴れないし。


 殴られた部分が若干凹んでるし。


『実はですね、4年程前に我の秘宝が盗まれまして・・・』


 ―話を要約するとこうらしい。


 ある日、いつものようにここで惰眠を貪っていると何かが湖に飛び込んできたらしい。


 まぁ、どうせ半漁人だろうと無視していたら、しばらくして声が聞こえてきたと。


『へへへっ、コレがオーブか』


『アークアの王も物好きだねぇ。精霊のオーブが欲しいなんて』


『どうせコレクションだろ?』


 どうも飛び込んできたのは盗人だったらしく、慌てて起きたが時既に遅く。


 オーブは無くなった後だった。


「どー考えてもお前の管理不足じゃね?」


『いや・・・面目ないです』


 きっと精霊が人間の姿だったら、正座して項垂れているに違いない。


「ふむ。だから怒ったのだな?」


『あれから少し警戒心を持ちまして。この湖を使う半漁人にも協力して貰って、ちょくちょく取り戻しに行って貰うのですが・・・どうも返り討ちにされてるらしいんですよね。入り口に立て札を立てて貰って、もう一回奴らが来るのを待ったりもしたんですけど』


 あの立て札は半漁人が立てたのか。


 字が書けるとか、意外と賢いのな。


「む? 精霊は行かないのか?」


「そうだぞ。自分の物なら、自分で行かないとな」


『いえいえ、だって我ってば水の精霊ですよ? 水の無い場所に行ける訳無いじゃないですか』


 あはははと笑う精霊。


 急にフランクになったな。


「はっはっは。それもそうか!」


「ふははは! それもそうだな!」


『でしょ? あはははは』


 何だこの状況・・・。






『で、勇者様はどうして水の魔石を?』


 何だかんだで仲良くなった勇者と精霊。


「うん、それはだな・・・」


 かくかくしかじか。


『そーですか。魔王退治ですか』


「そうなんだ。良かったら譲って貰えないかな?」


『そう言う事でしたら良いですよ』


 いいんだ・・・。


 ちょっと待ってて下さいね~と言いながら、湖に潜る精霊。


 戻ってきたときには、精霊の傍に青く輝く石があった。


『どうぞ』


「いいのか?」


『いやぁ、こんなに誰かと話したのも久しぶりですし。楽しかったですから』


 何だろうこの精霊。和む。


「そうか、ありがとう!」


「しかし、タダで貰うのも悪い気がするな勇者よ」


「そうだな。よし、イズミ!」


 何ですか?


「ちょっと、オーブを取り返して来てくれないか?」


「俺が?」


「うん」


「ミアは?」


「私は、もう少し精霊と話をするからな」


 何故でしょうか。


「だって可哀想じゃないか。ずっと洞窟の中で一人きりで。折角友達になったんだ、もっと話したいんだ」


『勇者様・・・貴女って人は』


 ブルブルと震える球体。


 感動してるっぽい。


「マッスルさんは?」


「我ももう少し精霊と話そう。色々と為になる話しが聞けるからな」


「つまり、俺だけで・・・?」


『入り口までの近道は教えますので』


 ・・・。






「そぉーい!!」


 バァーン!


「おおぅ!! 扉は静かに開けんか! ビックリしたではないか!!」


「んな事はいいんだよ、気にすんな」


「そ、そうか・・・。で、魔石はあったのか?」


「あった。が、その前にオーブを取り戻す事になった」


「な、何の話だ・・・?」


 ダラダラと汗を流す王様。


「いいんだよ誤魔化さなくても、面倒くさいから」


「くっ、こやつを捕らえよ!」


 王様の命令で、飛び掛ってくる兵士達。


「吹き飛ばせ、エア・ストーム」


 全部吹き飛ばしてやった。


「ヒィ・・・!」


「持ってんだろ? ホラ、出せ」


 胸倉を掴む。


「は、はいぃ!」


 宝物庫からオーブを取って来る王様。


 カツアゲ? 違うよ、取り返してるだけだよ。


「オーブです」


 ・・・何? この水色の石ころ。


「ホントかお前? 嘘付いてっと頭パーンすっぞ!?」


「本当です!!」


 嘘じゃなさそうだ。


「・・・そうか。コレは返すから、もうあそこから盗もうとすんなよ。面倒くさいから」


「はい! すいませんっしたー!!」


 こうして、俺はオーブを取り戻したのであった。

投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。


次で水の魔石編終了です。

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