第十話 水の都アークア
石橋を渡る事数分。
俺はアークアの入り口に立っている。
「おや? まさかイズミ君かい?」
「おお、門番のオッサン!」
そこに居たのは、以前アークアに来た時にも立っていたオッサン。
「大きくなったな~。一人かい?」
「一人です」
そうかそうかと笑顔で頷くオッサン。
「じゃあ、あの侵入者とは関係無いんだね?」
門番が指差す先。
目を向けると、ミアとマッスルさんが縄で縛られていた。
「関係無いです」
「本当に?」
やばい、目が笑ってない。
しかし俺に隙は無い。君子危うきに近寄らず。
無視しよう。無視して誤魔化そう。
それが一番だ。
「酷いじゃないかイズミ!!」
「そうだぞ少年!!」
わーわーと叫ぶ二人。
ちょ、声でけーよ!
「関係無いんだね?」
「関係「イズミは仲間だ!」・・・」
「ちょっとこっちに来てもらおうか」
ズルズルと引き擦られる俺。
魔法で逃げようにも、門番を傷付けない魔法なんか覚えてない。
ええい! ラリホー! ラリホー!
「まさか、イズミ君を兵士に突き出す時が来るなんて・・・」
あっさりと俺を兵士に突き出すオッサン。
くそっ、もう少し仲良くなっておけば良かった!
「大人しくしろ!」
あっという間に縄で縛られる俺。
芋虫状態だ。
違うんだ! 話を聞いて下さい!
「このまま、国王の前まで連行だ!」
数名の厳ついお兄さん達に引き擦られ、連行される俺達。
「痛いぞイズミ!」
俺は何もしてない・・・。
「ふははは! 中々無い経験だな!」
五月蝿いぞバカ・・・。
こうして、俺達はズルズルと街の中を引き擦られるのだった。
「熱い熱い!! ちょ、摩擦摩擦!!」
俺、ちゃんと石橋渡って来たじゃん!
「こやつ等が侵入者か?」
豪華な服に恰幅のいい身体。
ヒゲが凄いです。
「はっ! 先程、湖から街に入ろうとする所を取り押さえました!」
(凄いなイズミ。王様だぞ王様)
(正確には王ではないぞ勇者よ)
(?)
(街の権力者なだけだ。街の者にそう呼ばせているだけで、王でも何でもない)
ちょっとー!!
もうちょっと小声で喋って! 王様の耳がピクピクしてるって!
絶対聞こえてるって!!
「ゴホン! で、侵入者よ」
「私達は侵入者じゃない! 勇者だ!」
一括りにするな。勇者はお前だお前。
「勇者?」
首を傾げる王様。
「そうだ。魔王を倒す為に旅をしているんだ」
「ふははは! 魔王など、我に掛かれば一撃だ!」
芋虫状態のまま胸を張るバカ二人。
「そうか・・・フム」
ヒゲを撫でて、考え込む王様。
しばらくして、一人の兵を近くに呼んだ。
「ごにょごにょ・・・」
「ごにょごにょごにょ・・・」
「ごにょ・・・」
「ギョギョギョー!」
驚いたの!? それ驚いたの!?
話を終えた魚くん(仮名)が、縄を解いていく。
お? おお?
「勇者・・・と言ったな?」
「そうだぞ」
頷くミア。
「魔王を倒す、と言ったが・・・何故ここに?」
そりゃ不思議だろう。俺も不思議だ。
「私達は今、水の魔石を探してるんだ。何で探してるのかというとだな・・・」
説明を始めるミア。
誰一人として聞いてない気がするのは気のせいだろうか。
王様耳掃除してるよ。
「・・・と、言う事なんだ」
説明を聞いて、一つ頷く王様。
「そう言えば、水の魔石が近くの洞窟にあると聞いたことがある」
「本当か!?」
本当にあったー! 適当にここ来たのにあったよ!
「しかし、その洞窟は魔物が多く出ると聞く。しかも、魔石は洞窟の最奥にあると・・・」
「構わん!」
もっと考えて喋ろうよマッスルさん。
魔物が一杯ってあんた、絶対しんどいって。
「行こう! イズミ!」
そしてお前は最後まで話を聞けぇっ!
俺の腕を掴んでグイグイと進むミア。
「ふははは!」
笑いながらそれに続くマッスルさん。
お前ら、せめて洞窟がどこにあるか聞いてから動け!!
「上手くいきましたね」
「まさか、あそこまで簡単にいくとは。勇者とはバカか?」
「さぁ? しかし、これで街の外をウロウロしている魔物が居なくなるわけですね」
「はははは! まさに、バカとハサミは使い様だな!」
王様と魚くん(仮名)の笑い声は、結構な大きさで響き渡った。
「ん? 笑い声?」
「何をしてるんだ? さぁ、早く行こう!」
「日が暮れてしまうぞ少年!」
「・・・気のせいか? いやでも何か・・・」
「さぁ、洞窟を探そう!」
ズルズル。
「腕抜けそうなんですけどー!?」
ふははは! 見ろ! 俺がゴミの様だ!!
毒でもないのに体力がゴリゴリ減っていく俺。
「おかあさ~ん。あれなに~?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
市民の声が胸に刺さる・・・。
「ふははは! ホラ、薬草だ!」
だからそれは傷口に擦り込む物だと・・・ウボァー!
炎の魔石の次は、水の魔石です。
もっと面白い文章が書けるようになりたい・・・。
ちなみにイズミ君は旅の中でアークアにも立ち寄ってますが、基本的にギルドの仕事しかしなかったので王様と面識はありません。