表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者のお供  作者: 御影
12/25

第九話 水の都へ向かう道

 炎の魔石を手に入れたあの後。


 今、俺達はエンを出て街道を歩いていた。


 ~回想~


『マッスルさん! 仲間になってくれないか!?』


『む? いきなりどうしたと言うのだ少女よ』


『実は、カクカクシカジカ、うんぬんかんぬん・・・』


『何と!? 少女は勇者であったか!?』


『そうなんだ!!』


『ふははは! 良かろう! 世話になった分、我が全力で手助けしよう!!』


 ~回想終了~


 そんな感じで、今勇者一行にはマッスルさんが同行している。


 勇者の刻印を嬉々として受け入れていたマッスルさん。


 マゾとしか思えない。ん? と言うことはアレか?


「勇者よ。次はどこへ行くのだ?」


 まさかのマッスルさん受け疑惑を深めている中、当のマッスルさんがミアに訊ねる。


 ・・・確かに。


 この後どうするつもりなんだろう。


「うん。炎の魔石は手に入れたから、次は水の魔石だな」


 炎の次は水ですか。


 面倒くさい。この旅は何時まで続くんだろう・・・。


「水の魔石というぐらいだから、水の都にあると思うんだ」


 お~い。いいのかそんな適当で。


「ふむ。水の都と言うとアークアだな。湖の中央に浮かぶ、観光名所として有名な街だ」


 意外と物知りなマッスルさん。


 確かに、アークアってそんな街だった気がする。


「アークアに行くとすると、途中にある森を抜けなければな」


「森かぁ。何だかワクワクするな!」


「ふははは! そうだな勇者に少年よ!」


 まだ見ぬ森にワクワクするミア。


 マッスルさんに後ろに付かれガクブルする俺。


 テラコワス。


「ぬ? どうしたのだ少年?」


 まだマッスルさんのガチムチ疑惑が晴れた訳ではない。


 気を付けねば・・・。






「凄いなイズミ! 凄いな!」


 街道を進み、アークアに向かう為森に入った俺達。


 始めて見るのか、ミアのテンションはウナギ登りだ。


「ふははは! きのこだ!!」


 脇に生えていたキノコを手に取り笑うマッスルさん。


 いくら何でもテンション高すぎだろう。


「旨そうだな!」


 ハイテンションのまま、マッスルさんの持つキノコを奪い取るミア。


 先の展開がこれ程読めるのも珍しい。が、意外と素早いミアを止める事は出来ない。


 きっと勇者の素早さはカンストしてる。


 奪い取ったキノコを齧るミア。


「もぐもぐ・・・。ぐはぁっ!!」


 キノコを咀嚼し、血を吐くミア。


 迂闊過ぎだよ勇者様・・・。


「ど、どどど、どうすれば良いのだ!?」


 ワタワタと慌てるマッスルさん。


「お、落ち着け我。こういう時は落ち着いて、道具袋から毒消し草を出して・・・。む、苦い」


 お前が食ってどーすんだよ!!


 全然落ち着いてねーじゃねーか!!


「わ、私を置いて、イズミとマッスルさんは・・・魔王をっ!」


 旅の序盤でまさかの勇者離脱フラグ。


 あと、その台詞は魔王戦で言うべきだと思う。


「どうするのだ少年!?」


「まぁ落ち着けけけけけ」


 ガクガクと肩を揺らすマッスルさん。


 首が、首が。


 マッスルさんを引き離し、道具袋から毒消し草を取り出す。


「面倒だから全部入れよう」


 手持ちの毒消し草全部をミアの口に押し込む。


「もが・・・もがもが・・・!」


「ホラ食えさぁ食え全部食え!」


 楽しそうだって?


 だって楽しいからな!


「もっきゅもっきゅ・・・苦い」


 毒消し草を食べて、復活するミア。


「おお勇者よ! 無事だったか!」


 涙を流して喜ぶマッスルさん。


 こいつ等に森を抜ける気あるんだろうか・・・。






「おぉ~」


 あれからマッスルさんが同じ様に毒キノコを食ったりもしたが、俺達は何とか森を抜けた。


 ちなみに、マッスルさんはミア手持ちの毒消し草で回復させた。


 特に戦闘も無く、ただ森を抜けるだけで手持ちの毒消し草を全部消費するなんて・・・。


「綺麗だ・・・」


 毒消し草消滅の原因その一が、目の前に広がる湖を見てボーっとしている。


「ふははは! あれがアークアだ!!」


 毒消し草消滅の原因その二が指差す先。


 確かに、湖の上に街がある。


「よし! こんなに綺麗な湖なんだ! 泳いで行こう!」


 そして予想の斜め上な事を言う勇者ミア。


 目の前に石橋があるのというにこれ如何に?


「ふははは! どちらがアークアに先に着くか競争だ!」


「負けないぞ!」


 鎧を着たまま湖に飛び込む二人。


 ざっぱーん!


 ・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・はっ!


 いかんいかん。あまりの出来事にちょっと意識が飛んでたみたいだ。


『『ふははははは!』』


 凄い勢いで遠ざかって行く二人。


 鎧を着たまま、どうやって泳いでるんだろう。


 まぁいいや。俺は橋を渡っていこう。


『侵入者だ!』


『指名手配の侵入者か!?』


 遠くで声が聞こえる。


『私の勝ちだな! ん?』


『ふははは! さすが勇者だ! む?』


 何をするにもトラブルを生まないと気が済まないのか、あの勇者は。


「・・・どうしよう。逃げようかな・・・。でも刻印あるしなぁ・・・」


 そして俺は、重い足取りでアークアへと向かうのであった。

少し短い第九話。


石橋は叩いて渡らずに避けて通る。


それが勇者クオリティー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ