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黒猫ヴァレリーの事件簿  作者: 高梨 梛
第3章 落ち葉の足音
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第6話 恭介の迷推理とヴァレリーのため息

恭介はしゃがみこんだまま、地面を見つめていた。

落ち葉を払うと、土の上に細い跡が現れる。

二本の線。

まっすぐ、道の奥まで続いている。


「これ……」


恭介は指でなぞった。


「引きずった跡じゃないか?」


ヴァレリーは黙って見ている。

恭介は立ち上がり、跡をたどった。

線は落ち葉の道を通り、古道具屋の裏口の前まで続いている。

そして、そこで途切れていた。

恭介は腕を組む。


「やっぱり変だ」


ヴァレリーが言う。


「何がだ」


「だってさ」


恭介は道を指さす。


「重い物を引きずったんだろ?」


「そう見える」


「だったら――」


恭介は足元を見た。

落ち葉の上には、はっきりと自分の足跡が残っている。


カサ。


カサ。


踏めばすぐ跡がつく。

恭介は言った。


「足跡があるはずだ」


ヴァレリーは何も言わない。

恭介は落ち葉をさらに払った。

だが出てくるのは、

二本の線だけ。


「……おかしいな」


恭介は眉をひそめる。


「一人分の足跡しかない」


自分の足跡だけが新しくついている。

昨夜のものは見当たらない。

恭介は腕を組んだ。


「もし柱時計を運んだなら、すごく重いはずだ」


ヴァレリーは小さく言う。


「大人二人でも大変だ」


秋山から聞いた言葉だった。

恭介は頷く。


「そう、だから一人じゃ無理」


そこで言葉を止めた。


「二人なら――」


恭介は地面を見つめる。

落ち葉。

二本線。

足跡。


「……でも、二人なら足跡が増えるよな」


ヴァレリーの尻尾がゆっくり揺れる。


「二人なら、音ももっと騒がしいはずだ」


恭介はヴァレリーの言葉に困った顔をした。


「これ、どういうことだ?」


ヴァレリーは静かに答える。


「運んでいない」


恭介が顔を上げる。


「え?」


「柱時計は」


ヴァレリーは線を見た。


「持って歩かれていない」


恭介は首をかしげる。


「意味分からん」


「その頭は飾りか?」


ヴァレリーはそれ以上説明しなかった。

ただ落ち葉を一枚、前足でつつく。


カサ。


乾いた音が鳴る。

そして小さく言った。


「音だ」


「え?」


「昨夜の音を思い出せ」


恭介は考える。


カサ……


少しの間


カサ……


確かに妙だった。

恭介は腕を組んだ。


「……重い物を運んだ音じゃないのか?」


ヴァレリーは目を細めた。


「近い」


「近い?」


「だが違う」


恭介は頭をかいた。


「さっぱりだ」


ヴァレリーはゆっくり歩き出した。

落ち葉が鳴る。


カサカサカサ。


普通の音。

しかし昨夜は違った。

カサ……


一拍ほどの間。


カサ……


ヴァレリーは小さくつぶやく。


「人間は耳を使わない」


恭介はため息をついた。


「またそれか」


ヴァレリーは振り返る。

そして言った。


「だが落ち葉は覚えている」


恭介は聞き返す。


「何を?」


ヴァレリーは落ち葉の道を見た。


「犯人の動きだ」


風が吹く。

落ち葉が転がる。


カサ……


静かな音だった。

恭介は、はっとする。


「分かったぞ!」


ヴァレリーが目を細める。


「ほう」


「犯人は二人だ!」


「……」


「一人が時計を引きずって、もう一人が後ろから支えたんだ!だから足跡が少なくてもおかしくないし、音も――」


ヴァレリーは深いため息をついた。


「愚かだ」

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