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外伝第二話 生贄生配信 後編

【怪異探偵外伝第2話 生贄生配信・後編】


スナップムービーを配信する狂気の配信者と、主人公たちが遂に激突!

悪夢の連鎖は断ち切れるのか……?


ダークファンタジー×異能バトル


残酷描写・重く暗い内容がありますので、ご注意ください。

第五章 生贄の配信


気が付くと、そこは廃墟の配信スタジオだった。

割れたコンクリートの壁に剥がれたペンキ、埃まみれの床。

壁に巨大な視聴者数カウンターが設置され、赤い数字が0で点滅している。

幾つもの配信機器が青白く輝き、中央には巨大な水槽が不気味な光を放ちながら置かれていた。


「…何…ここ…?」

早織が恐怖のあまり、弱々しく膝を付く。

彼女の声が、廃墟の空洞に虚しく響いた。


「こんにちはぁ! 【解脱生配信チャレンジ】にようこそぉ〜!

本日は水槽窒息耐久チャレンジ。最高の救いをみんなで共有しちゃいましょう♡」

突如として、喪服の配信者が現れた。

漆黒のスーツと帽子、粘着く甘い声。動画と同じ不気味さを放つ。


配信者の視線が皆を一瞥し、歪んだ笑みが深まる。

「おや…?今日は解脱者様以外の方もいらっしゃいますね。ゲストは大歓迎ですよ。皆さんにも、最高の救いをお届けしましょう♡」


「あんたが動画配信の呪詛ね。…その手で何人殺した?人の命を弄んだ事、後悔させてやる…!」

真琴の周囲の空気が震え、全身から刺すような殺気が漲る。


「真琴ちゃん、冷静にね…。貴方名前は?何故こんな事をするのかしら?」

美弥が静かな怒りを湛えながら問う。

彼女の指先が、微かに電光を散らす。


「名前など、とうの昔に捨てましたが…【虚無】とでも呼んで下さいませ。皆様に最高の解脱…多くの「死」を与え、お見せし…広く我が主の教義を広める。それが、私の至上の喜びなのですよぉ♡」

虚無の歪んだ笑みが裂け、白い歯が妖しく光る。


虚無が指を鳴らすと、早織の身体が消え、瞬時に巨大水槽に囚われた。

頭上から冷水が注がれ、早織の全身を濡らしていく。

水槽のガラス越しに、早織のくぐもった叫びが響く。

「誰かあぁ!助けてぇっ!!」

水位が上がる音が、廃墟に不気味に反響する。


「話し合いは無駄のようね…!」

直後、美弥の雷撃が虚無を直撃する。

バリバリッ!

乾いた音とともに視界が白くなり、同時に内臓に響くような爆音が響く。

虚無の全身が焼かれ、焦げ臭い匂いが充満する。


すかさず真琴が躍り出る。

風の刃が一閃し、虚無の身体をまたたく間に両断する。風が渦を巻き、埃を舞い上げる。


両断された虚無の身体から、悪意ある文字列の流れが吹き出し、不快な電子音を響かせながら身体を再構成させた。

既に喪服の姿はなく、無数のコメントが蠢くように肉体を形作り、黒く歪な人型へと変異していた。

『死ね』『わろた』『永遠の救い』——視聴者の言葉が生き物のように脈打つ。


「必死すぎわろたww」

「早く氏ね」

「濡れ透けエロwww」

「今日の生贄ちゃん超可愛い♡」

心無い書き込みと共に、視聴者数カウンターの数字が膨れ上がっていく。

【視聴者数 48,291 → 89,104 → 152,883】


「…こいつは、視聴者のコメントで強化されているのか…?じゃあ、大元を叩き壊すっ!」

岸本が、渾身の力で配信機器を叩きつける。

コードが千切れ、機器が砕け散る音が響くが…瞬時に割れた傍からヒビが修復され、元の形に戻っていく。

「駄目だ、壊れねぇ…!」


「物理破壊は不可能か…真琴ちゃん、久々にやるわよ!」

「了解っ!」


「天の荒ぶる雷神、その御力を賜わり万里を討つ鎚となり給う!」

美弥の両手に眩い雷の塊が顕現する。

空気が震え、雷光が部屋を白く染める。


「天高き風の神、その力を以て全てを貫く刃となり給う!」

真琴の周囲の空気が急速に集束され、美弥の雷と融合する。

風が渦を巻き、雷が閃く。


ギュオオオオオオンッ!


極限まで集束した風雷は、眩い光の砲火となり虚無を呑み込み、塵も残さずに消し去った。

部屋全体が白い閃光に染まり、暴風が吹き荒び、轟音と共に廃墟の壁が吹き飛ぶ。


虚無の姿が消滅した後、スタジオに静寂が訪れた。


「まずは、水を止めるっ!」

真琴が送水管を切り裂き、乾いた斬撃音が響く。

壊れた管から大量の水が吹き出し、みるみる水位が下がっていく。


「私…助かった…の?」

早織の声が、水槽の中でかすかに響く。

頭から冷水を浴び震えながらも、彼女の表情に微かな安堵が浮かぶ。

「次は水槽を破壊するわ!早織ちゃん、屈んでっ!」


——しかし、視聴者数が20万を超えた瞬間——。

ギィンッ!

水槽は真琴の斬撃を、嘲笑うかの如く弾き返した。


虚空より大量の文字列が吹き出し、虚無の身体がみるみる内に再構成された。

体表のコメントが棘の付いた触手となり、鞭のようにしなる。

歪な人型は更に禍々しくうねりを上げ、まるで視聴者の悪意が肉体化したかのように脈動していた。


ブシャアアァァッ!

送水管は更に太さを増して再構成され、冷水を滝のように降らせる。


「嫌ああぁぁっ!」

早織の絶叫が、叩きつける水音と共に水槽内を反響した。

安堵は一瞬で崩れ、彼女の瞳に再び絶望が宿る。


「どんな攻撃をしても無駄ですよぉ。視聴者の悪意がある限り、私を倒す事は不可能なのです…貴女たちにも、救いを与えてあげますね♡」

嘲笑う声が電子音と共に響き、無数の文字列が触手となり襲いかかる。


ギギギギギイィンッ!

激しい攻防が始まった。

真琴の風刃が虚無の身体を切り裂くが、切り裂いた傍から再生が始まる。

美弥の雷が虚無の全身を焼くが、焦げた身体の下から、次第に文字列の肉体がうねりを上げる。


「こいつ…きりが無いっ!」

真琴の顔に、僅かな焦りが浮かぶ。


「真琴ちゃん、左右に散開するわよ!奴は雷撃を受けると僅かに動きが鈍る…攻撃を散らして隙を作りましょう!」

「美弥さん、了解です!」


2人の散開した広範囲攻撃に、虚無の触手の勢いが落ちる。

僅かな隙を付いた攻撃に、次第に虚無の再生速度が遅くなっていく。


虚無の舌打ちが小さく響く。

「私の救済を次々と…無粋な方たちですねぇ。だが、それもあと少しですよお♡」


視聴者数が30万を超えた瞬間、虚無の身体が筋肉が脈打つように更に膨らんでいく。

体表の文字列がより太く鋭く輝き、棘の付いた無数の触手が雨のように振り注ぐ。


美弥が歯を食いしばる。

「……まずいわね。これは予想以上だわ」

「早くしないと、早織ちゃんがっ!」

次第に悪意の触手が真琴たちの肌を切り裂き、血が滴る。

痛みと疲労が、2人の動きを徐々に鈍らせる。



水位は、早織の腰まで達していた。既に彼女の目からは光が失われ、涙を流しながら弱々しく立ち尽くしている。

「くそっ、割れろ!割れやがれっ!!」

岸本がコンクリート片で水槽の破壊を試みるも、水槽はびくともしない。ガラスが鈍く響くだけ。

全員に絶望が滲み、虚無の笑い声がスタジオ内に響き渡る。



一方、人里離れた廃ビルの地下3階——。

龍雲が、ヴィクトルと共に呪詛に汚染されたサーバールームの前に立っていた。


「解析によると、サーバーは天の声の残党が運営。視聴者の悪意をエネルギーに変換し、特定の場所へ送信しているようだ」

ヴィクトルが機器の操作をしつつ、淡々と告げる。


場所を特定し、昼夜を問わず解析を続けるも、画面に絡みつく黒い文字列が蠢き、身を捩って2人を拒絶する。


「ようやく99%以上解析できたが…呪詛の根が予想以上に深いな。解除までの推定時間、約10分」


龍雲は無言でキーボードを叩き続けつつも、額には汗が浮かび、顔には僅かな焦燥が浮かぶ。

依代を通して、美弥たちに声を送るーー。



その時、美弥と真琴の依代が淡く光った。

『こちら龍雲。現在ヴィクトルと協力し敵サーバーを特定・攻撃中だ。あと10分耐えてくれ…呪詛を弱体化させる!』

僅かに熱を持った龍雲の声が、皆にかすかな希望を呼び戻す。

依代の光が、部屋の闇を優しく照らし、皆の表情に光を宿した。



「流石ね龍雲。真琴ちゃん、攻撃は止めて防御に徹するわよ!」

「はいっ!あと10分…何としても持たせるっ!」

美弥の雷撃がバリアのように広がり、真琴の氷の結界が触手を阻む。

触手が弾かれ、ノイズが部屋中に響き渡る。

2人の息が上がり、汗が滴るが、10分のカウントダウンが頭の中で進む。


圧倒的な力に勝利を確証した虚無の身体が、突然動きを止める。

【視聴者数 312,447 → 48,002 → 3,112】

カウンターの赤い光が弱まり、カチカチという音が途切れていく。


「な…何ですか!? 視聴者が……!?」

虚無の顔に、初めて戦慄が走る。

文字列のうねる身体が、急速に空気へと溶け始める。


「馬鹿な…私の…私の身体がぁ…!」

背後のスクリーンにエラーメッセージが点滅する。

【サーバー接続エラー 視聴者0】

【全アクセス遮断】


美弥と真琴の顔に、笑みが浮かぶ。

「今よ、真琴ちゃん!」

「了解!」

電撃と青い双剣が交差し、弱体化した虚無を真っ二つに切り裂く。

絶叫が廃墟に響き渡った。


急速に身体が崩れ落ちる中、虚無は呻いた。

「ククク…また来ますよ…ネットがある限り、私たちは永遠に…」


美弥が静かに告げる。

「…それなら、その度に私たちが叩き潰してあげるわ」


美弥の指先から、淡く冷たい雷光が音もなく放たれる。

僅かに残った虚無の身体に触れた瞬間、か細い悲鳴が響き、完全に消滅した。


配信機器と水槽が崩れ去り、やがてスタジオは、静かに本来の廃墟へと姿を変えて行った。



第六章 安堵


廃墟の床に崩れ落ちた早織は、身体を震わせながら呆然と天井を見上げていた。

涙は止まらず、激しく喘いでいる。

彼女の瞳には、まだ激しい恐怖が残っていた。


「早織さん……大丈夫だ。もう終わったよ」

岸本が静かに近づき、優しく抱きかかえる。

早織の濡れた身体の水が、岸本のシャツに染み込む。

彼女は岸本の胸に顔を埋め、震える声で呟く。


「……私…助かった……んですね……。ありがとう……本当に、ありがとうございます…」

大粒の涙を流しながらしゃくり上げる早織を、岸本は無言で抱きしめ、彼女の背中を軽く叩く。

真琴が手を差し出し、美弥が優しく声をかける。

皆の表情に、静かな安堵が広がった。



第七章 朝日


早織を送り届け事務所に戻ると、龍雲が既に待っていた。

彼の表情はいつも通り無表情だが、どこか疲れが見える。

「美弥、対応が遅くなりすまなかった。呪詛に汚染されたサーバーをダウンさせるのに、思いの外手間取ってしまった…」


「結果オーライでしょ?お互いにお疲れ様ね、龍雲」

美弥が笑う。

龍雲は無言で頷いた。


岸本が煙草をくわえながら呟く。

「【天の声】の教義を広めるか…。ネットがある限り、また生まれるかもな…」


美弥が振り返り、静かに告げた。

「ええ…でも、また生まれたら消し続けてやるわ」


真琴がふぅっと息を吐いた。

「じゃあ、解決のお祝いって事で…この前買ってきたお菓子、みんなで食べない?」

彼女は屈託のない笑みを浮かべ、袋から大量のお菓子を出し始める。


「私のおすすめはこれ!新作の【激辛パクチー練乳ポテトチップス】っていうの。皆どう?」


(出たよ、真琴のヤバいチョイスのお菓子…!)

岸本の胃が、味を想像しただけでムカムカしてきた。

「…お前、それ本当に食うのか?」


真琴は目を輝かせ、袋を開ける。

途端に、得も言えぬ匂いが事務所の中を満たす。

激辛の刺激と、練乳の甘ったるい臭いが混じり合った、正気とは思えない香りが漂う。

「もちろん!糖分と刺激のコンボで、疲れが吹っ飛ぶよ!」


(想像以上にやべぇ…。既に匂いだけで辛い…!)

岸本の顔が青ざめ、鼻を押さえる。


「真琴ちゃん、本当に相変わらずね…。私は他のをもらおうかしら」

美弥が苦笑する。


「……っ!」

瞬時に龍雲の顔に緊張が走り、無言で一歩後退する。


事務所に、いつもの喧騒が戻ってきた。

やがて朝日がカーテンを透かし、部屋に優しい光を投げかける。

ネットの闇は消えない。

だが、今日も光は届いた。


これにて外伝第2話、完結です!


重く暗い話でしたが、 最後に希望の灯が灯る瞬間もありましたね。

どう感じていただけたでしょうか?


本編の方は既に完結済みです。

外伝を読んでくださった方は、ぜひ本編も振り返っていただけると嬉しいです。


本編はこちらからどうぞ↓

コピペしてご覧下さい!

https://ncode.syosetu.com/n2345lk/


読んでくださって、本当にありがとうございました!

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