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外伝第二話 生贄生配信 前編

【外伝第二話 生贄生配信 前編】


スナップムービーのように犠牲者を殺害し、ネット配信をする狂気の宴……。

謎の配信者に、主人公たちはどのように立ち向かうのか?

ダークファンタジー×異能バトル


残酷描写・重く暗い内容がありますので、苦手な方はご注意ください。

挿絵(By みてみん)


第一章 ノイズの電話


雑居ビルの三階、岸本探偵事務所。

午後の陽光がカーテンを透かし、室内に淡い金色の筋を引いている。


デスクの上には、飲みかけのブラックコーヒーが湯気を立て、岸本優介は灰皿に煙草を押しつけながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

外の喧騒が遠く聞こえる。


デスクの電話が、突然鳴った。

岸本は眉を軽く寄せて受話器を取る。

「はい、岸本探偵事務所」


「岸本か、また依頼を頼みたい」

合成音声特有の、耳障りな金属質の響き。

正体不明の依頼人【ノイズ】からの電話だ。

岸本の背筋に、僅かな緊張が走った。


「今回は、一般人からの依頼によるものだ。今までとは全く異なる、新種の呪詛の可能性が極めて高い。数日中に、呪滅探偵と共に依頼人をそちらに引き合わすので、聞き取りも頼むぞ……健闘を祈る」

一方的に、ガチャリと切れた。


受話器を置いた岸本は、しばらく沈黙したまま天井を見上げた。

(他の呪滅探偵との合同捜査……新種の呪詛か。面倒な匂いがするな……)

漠然とした不安が、胸の奥でゆっくりと広がっていく。



第二章 来客


「岸本、新作のお菓子買って来たわよ。◯ット◯ットの【抹茶ティラミスパフェ味】だって。一袋いる?」

神藤真琴が、両手にコンビニ袋を提げて事務所に入ってきた。

袋の中身はほとんどお菓子で、満面の笑みを浮かべる。

白いブラウスにジーンズ、ポニーテールを軽く揺らしながら来客用テーブルに袋を置く。


「おいおい、それ全部菓子かよ? 糖分過剰だろ……糖尿病になっても、俺が面倒見る気はないぞ」

岸本は煙草を灰皿に押しつけながら、いつもの調子で返す。


真琴は唇を尖らせて反論する。

「呪滅は体力使うから、糖分補給は必須なの! あんたのお酒と煙草の方が身体に悪いんだから」

文句を言いながらも、真琴は楽しげに袋を開け、他の菓子も並べ始める。

事務所に、甘い匂いがふわりと広がった。


その時、ドアが軽くノックされた。

「こんにちは…あら、真琴ちゃん相変わらずね。新しいお菓子?」

黒いオフショルダーのトップスにロングスカート。

透き通るような白い肩を妖艶に引き立てる黒の衣装。

常世美弥が、穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。


「美弥さん、お久しぶりです!」

真琴がぱっと顔を輝かせ、駆け寄る。

二人は手を合わせて再会の喜びを分かち合った。

「真琴ちゃん、いつも可愛いわね」


美弥の視線が、岸本に移る。

「初めまして、岸本さん……ですよね。神霊十将六位【神雷】常世美弥と申します」

岸本は軽く会釈を返す。


美弥の後ろに、引き締まった細身の青年が静かに佇んでいた。

神霊十将八位【迅風】時雨龍雲。

無表情に近い顔で、短く頭を下げる。


そして、その隣に——

まだ10代に見える少女、藤宮早織。

怯えきった表情で、今にも泣き出しそうだった。

肩が小刻みに震え、視線は床に落ちたままだ。


「怪異探偵・岸本優介です。どうぞお掛けになって下さい……大丈夫ですよ。ゆっくりで良いので、お話お聞かせ下さい」

岸本は出来るだけ穏やかに声をかけ、来客用ソファに促す。


早織は小さく頷き、ゆっくりと腰を下ろす。

しかし、彼女の身体は震え続けていた。

事務所に、静かな緊張が満ちた。



第三章 配信


早織はテーブルに置かれた麦茶を、震える手で一口飲んだ。

歯にコップがカチカチと当たる音が、静まり返った事務所に小さく響く。

彼女は深呼吸を一度して、ゆっくりと口を開いた。


「…最初は、SNSで流れてきたんです…。タイムラインに、【この動画すごい面白いからおすすめ!みんなで解脱しちゃおう♡】って投稿があって…。興味本位でタップしたら、変な配信サイトに飛んでしまって……」


岸本が呟く。

「…その投稿、BANされてないのか?」


「…もちろん、すぐ消されるんですけど…また違うアカウントから同じ投稿があって…。呪いみたいに、消えないんです……」


早織がスマホを差し出す。

画面には「解脱生配信チャレンジ」というチャンネルが表示され、サムネイルの暗い背景に、笑顔の配信者が不気味に浮かんでいる。

早織の指が震えながら、一つの動画をタップした。

事務所の照明が、不自然に明るさを落とした気がした。

動画が再生される。


画面の中央に、漆黒のスーツと帽子を被った配信者が映る。

まるで死者を送る喪服のような姿。

帽子は深く被られ顔は見えないが、歪んだ笑みと異常なまでに白い歯が、どこかこの世の者ならざる異質な雰囲気を漂わせていた。


「こんにちはぁ!【解脱生配信チャレンジ】にようこそぉ〜!

本日は高温サウナ耐久。最高の救いをみんなで共有しちゃいましょう♡」

配信者の声は、粘つくような甘さで耳に絡みつく。


画面が切り替わる。

暗転すると、そこは巨大なサウナ部屋だった。

ガラス扉の向こうで、若い女性が全裸で閉じ込められている。

女性は必死に扉を叩き、口を大きく開けて叫んでいるが、音声はミュートされているのか、その声は聞こえない。


室内が次第に赤く、高温になっていく。

女性の顔が紅潮し、汗が滝のように流れ始める。

次第に息が荒くなり、扉を叩く力が弱まる。

20分が経過する頃には目が虚ろになり、痙攣しながら床に崩れ落ちていった。


右側のコメント欄が、まるで他人の死を嘲笑うかのように流れ続ける。

「さっさと氏ねよ」

「今回もエグいwww」

「生贄ちゃんかわいい」

「そろそろ救済のお時間ですwww」


視聴者数が跳ね上がる。

48,291 → 89,104 → 152,883……

数字が上がるのに比例するように、女性の動きが弱くなり、やがて泡を吹いて動かなくなった。

画面が暗転し、再び配信者が映る。

笑顔のまま、甘ったるい声で。


「はぁい、今回も皆様の前で、一つの魂が救われましたね!次回の解脱生配信もお楽しみにぃ♡」

テロップが流れる。

「この生配信は全てフィクションです。実際にマネしないでね♡」


事務所に、重い沈黙が落ちた。

早織がスマホをテーブルに置き、両手で顔を覆った。

彼女の肩が小刻みに震え、嗚咽が漏れる。


「……この配信を見て、しばらくしてから、変なメールが届くようになったんです…。最初は、ただの迷惑メールだと思って無視してたんですけど、これ…見てください…」


早織が受信トレイを開く。

画面に並ぶメールの件名が、青白い光に浮かび上がる。


【解脱生配信】

貴女が次回の解脱者です♡ 9月6日

【解脱生配信】

早くメール開けてね♡ 9月7日

【解脱生配信】

早織さん、早くして♡ 9月8日


「……これ、いくら削除しても、迷惑メール設定しても届くんです…最後は、私の名前まで…誰に相談しても、相手にしてくれなくて……」

早織の声が途切れ、さめざめと涙がこぼれた。


「まずは、メールを開けてみよう。早織さん、良いかな?」

努めて優しく声をかける岸本に、早織は力なく頷いた。


藤宮早織様

解脱生配信チャレンジです。

おめでとうございます!

貴女が次回の生贄に選ばれました。

9月20日23時に貴女をお迎えに上がります。

最高の救済を味わって下さいね♡


「ひっ……!!」

見た瞬間、早織の身体が小さく跳ね、全身の震えが止まらなくなった。

両手で口を押さえ、目を大きく見開いたまま、息を詰まらせる。


龍雲が、初めて口を開いた。

低く、感情の読めない声。

「この配信サイト、過去に似たような教義の宗教があったな。…元信者が配信している可能性がある」


岸本が龍雲に視線を向ける。

「!…もしかして、あの集団自殺の…【天の声】か!?」

龍雲は無言で頷いた。


「これは、前例の無い現象だ。俺は別のルート…ヴィクトルさんと共に解決策を模索する。もしもの時は、皆で早織さんを守って撤退してくれ。何か分かれば、依代を通して連絡する」


龍雲は美弥に視線を向け、短く告げる。

「頼むぞ、相棒」

龍雲は踵を返し、事務所を出ていった。

事務所に、再び重い沈黙が訪れる。


真琴が、震える早織の肩を優しく抱きしめる。

「大丈夫よ、早織ちゃん。私たちがいつも側にいるから…。絶対に守るわ!」

早織は小さく頷き、涙を拭う。


美弥も静かに微笑み、声をかける。

「こういう時こそ、まずは落ち着くのが大切よ。…温かい飲み物でも淹れてくるわ。気が休まるわよ」


皆で早織を囲むように座る。

僅かに彼女の表情が和らいだ。

夕陽が窓から差し込み、全員の影を長く、黒く伸ばしていた。



第四章 待機


メールに記された日。

岸本たちは、早織の住むワンルームマンションへと車を走らせた。

夕陽が沈みかけ、街のネオンがぼんやりと灯り始める頃、部屋に到着した。

室内は、早織の生活の痕跡が残っている——観葉植物にタブレット、ソファに掛かったブランケット。

だが、空気は重く淀んでいた。


「…呪詛の気配の、欠片も無いわね」

真琴が部屋を一通り見回し、確認するように呟く。

彼女の目が、警戒を解かずに部屋の隅を睨む。


「そうね…でもこれは、悪戯なんかじゃない。配信サイトからは、明確な悪意が感じられたわ」

美弥が、静かな怒りを堪えながら応える。

彼女の指先が、雷の火花を散らすように微かに光った。


23時、30秒前……突然、部屋全体が歪むような、奇妙な違和感に襲われた。

空気が重くなり、視界がわずかに揺らぐ。

耳の奥で低いノイズが響き、胃が締めつけられるような感覚が広がっていく。


「何だ…これ…怪異じゃない…呪詛の予兆か?」

岸本が、不快感に顔を歪める。


突然、早織のスマホが不気味に光り、画面いっぱいにカウントダウンの数値が映し出される。

赤い数字が、部屋を血のように染め上げる。

【3…2…1…】


早織を中心に閃光が走り、その場にいた全員を瞬時に飲み込んだ。

視界が白く染まり、耳鳴りが響く。

不協和音と、吐き気のような不快さに襲われる中、次第に意識を失っていったーー。

これにて前編終了です。


全員が飲み込まれましたね。

次回、狂気の配信者が姿を現します。

この悪夢の連鎖を、岸本たちは断ち切る事が出来るのか!?


後編は明日or明後日アップ予定です。

読んでくださってありがとうございます!


また、本編は既に完結済みです。気になる方はコピペしてご覧下さい↓

https://ncode.syosetu.com/n2345lk/

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