表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

禁則

ここは薄暗いけど、解る

外は雨が降っている


僕は、雨が屋根を叩く音が嫌いじゃなかった



「素直になれよ」


「ルールなんか守る事に熱心になって、それで幸せになったやつなんて視たことないよ」


顎に回した僕の指を払い除けると、君は眼鏡を直しながら法典を参照した


「そうは言うけど」


「ほら、ここの項目」


「君の教唆に従った場合、その内容に関わらず罰則が存在する」


「まして、君の話す内容は常に違法なものだ」




「じゃあさ」

言いながら、僕は君の光輪を片手で握る


法典が床にばさりと落ちる

君は「あ…」と吐息を漏らしたあと、少し濡れた瞳で僕から視線を逸らした


「天使を辞めたら罰則も無くなったりしないの?」


掴んだ光輪を乱暴な仕草で左右に揺すると、君は熱い息を吐きながら「離せ…」と力無く藻掻き、躰を揺すった


「堕天だけは、僕はやりたくないんだ」


「一生背信者として追われる身になったら、僕なら耐えられない」



「だったら」


「いまここに居る僕を通報しないのは、どうして?」


揺すっていた光輪を離すと君はバランスを崩してよろめいた

転びそうになる君を、僕は両の腕で引き寄せる


「それは…」


「好き…だから……だけど……」


話す言葉が、僕の腕の中で段々と小さくなっていく

君の眼を視詰めながら、それでも僕は、君の指がこっそりと動くのを視野の隅に視た


──気のせいかな


こんな事ばかりしていると、警戒心ばかりが強くなってしまう


まだ断定するには早い

危険は有るものの、それでもあと少しだけ愉しみたい気持ちが僕にはあった


「へぇ…」


「いけない子なんだね」


唇を合わさりそうな程に近付けながら、僕はポケットに忍ばせた武器に手を伸ばそうとした


弾詰りせず、刃こぼれもしない一番良い武器

折り畳み式の警棒だ


今のところは折り畳まれているけど、一振りすると大体のものは殺す事が出来る武器になる

つまり、僕の戦意と同じだった


僕の手が武器に触れる

躰の合わせた部分から、肉体の筋の動きで、君が何かしら腕を動かそうとしているのが感じられた


経験から言うと、この僅かな動きが反撃の支度である可能性は十分にある


僕は君を抱いていた腕を離すと、両手の掌を広げて害意がない事を示した


「何かしようとしなかった?」


「別に…?」


君が問いかけ、僕が答える

意味の無い白々しい言葉が僕たちの間を交差した


僕は「敵同士で無ければなぁ…」と思いながら、安全に部屋を去る算段を頭の中で組み立てている


君を好きなのは本当の事だった


「ねえ」


「もう帰るけど、最後にキスしようよ」




「んっ…」


「…………」


「いま、何かしようとしなかった?」


「別に…?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ