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 王城解放日。

 少しくらい、めかしこんでもいいかな、とジルに相談したら、あれこれ張り切って準備してくれたはいいものの、結局、なんか違う、となって、直前で取りやめることとなった。

 持っているもので、可能な限り可愛らしく、とジルが張り切っているのを隣で見て、冷静になってしまったというか……。わたしに似合うか不安になってしまった。


 今までとギャップがありすぎてついていけないのだ。

 急におしゃれするようになったら、すごく意識しているみたいで恥ずかしい、というか。

 ジルには大丈夫、と言われたけど、むず痒くて駄目だった。

 でも、折角だから、と、この間買った洗髪液は使った。いい匂い、って言ってくれたし……。

 今のわたしには、このくらいが丁度いいのかもしれない。あまり一気にめかしこんだところで、落ち着かなくて定着しなかったら意味がない。


 せめても、と、ジルが頑張って、派手にならない程度に髪を編んでくれたから、普段よりは地味ではないはず。

 ない、はず……。


「ね、ねえ、ジル、やっぱり変じゃない?」


 わたしは馬車の前で、今日何度目か分からない質問をジルに投げかけた。自分でもしつこいくらいジルに聞いている自覚はあるのだが、ジルは変わらず、笑顔で、「大丈夫ですお嬢様、可愛いです!」と答えてくれる。


「大変可愛らしいですが、お嬢様……そろそろ行かないと遅れてしまいます」


 わたしの質問に、にこにこと答えていたジルが、急かすようにわたしを馬車に乗せようとする。実際、時間が結構押していた。慣れない格好に気恥ずかしくはあるものの、このままここでうだうだと立往生していても埒があかない。

 さっさと馬車に乗り込んである意味で逃げ場をなくしてしまおう。

 王城に向かうことは何度もあったし、ここ一か月半はそれが当たり前になっていたけれど、今までで一番緊張している気がする。


 い、いや、でも、今日アルディさんと会えるとは限らないし。彼は一日仕事だから、見かけるだけで終わるはず。タイミング次第では声をかけることくらいはできるかもしれないけど、雑談までには発展しないだろう。ましてや、お父様に聞いた話を彼に尋ねる余裕なんてない。仕事なんだから。

 うん、大丈夫。向こうはこっちに気が付かない可能性が高い。大丈夫。

 そんなことを考えていると、馬車が動き出した。


 ――……でも、もしかしたら、一言交わすくらい……。


 がたごと、と馬車が動き出しても、なんだか落ち着かなくて、未練がましくわたしは窓ガラスに反射するわたしを眺め、変じゃないかな、と思ってしまうのだった。

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