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――そして、ついに訪れてしまった最終日。
明日から王城の一般開放日、というだけあって、なんだか城内がバタバタとしていたが、わたしのお疲れ様会には、結構な人数が参加してくれていた。
流石に第二騎士団の人数を考えると、全員が全員、ブラッシングしたことのある団員じゃないけど、あの人はあのときブラッシングした人かな、と分かる人もちらほらいて。
乾杯をして、雑談をしていると、カインくんがわたしの方へとやってくる。久しぶりに彼と会ったような気がする。
お礼の品であるタオルをプレゼントしたときにも会っているのだが、タイミングが悪く、しっかり会話ができたわけじゃないから、そう感じてしまうのかもしれない。
「け、怪我の具合はどうっすか……?」
緊張している様子でカインくんが話しかけてくる。
「ほ、本当に申し訳なくて不甲斐ないです……。でも、怪我が治ったかだけ、聞きたくて」
タオルを渡したときにも気にかけてくれていたけれど、「大丈夫」と一言いうだけに終わってしまっていたんだっけ。わたしはぺリッと頬のガーゼを外して見せた。
「もうほとんど跡はないんだけどね」
明るいところで、近付いてじっくり見ない限りは気が付かないくらいにまでは治った。跡がある、と言われれば気が付くけれど、言われなければ影だと思われるだろう。
ただ、まだ塗り薬を塗らされているので、化粧で隠すのが難しく、ガーゼをつけている。わたしとしてはもうガーゼを外して自然治癒に任せればいいのに、と思うのだが、それは駄目らしい。治るのであれば完璧に、跡なく治したい、というのが医者の考えらしい。まあ、跡が残らないにこしたことはない、というのはわたしも同意だけど……ちょっと過保護すぎないかな、とも思う。
あからさまにホッとした表情のカインくんに、わたしはカインくんの傷の様子を尋ねた。明らかに彼の方が重症に見えたのだ。
「自分のほうはもう! すっかり治りました。まあ、跡は残っちゃったんすけど……」
そう言って軽く見せて貰ったが、確かにハッキリと赤く跡が残っていた。段々と薄くはなっていくとは思うが、しばらくはくっきりと残ったままだろう。
「でも、これは跡が残ってよかったと思います」
残っていい傷なんてあるんだろうか? 痛々しいだけだと思うけど……。
「これを見て、自分の失敗を思い出して、精進しようと努力できると言いますか。これが薄くなるくらいには、もっと強くなって、オルテシアさんをしっかり警護できるようになっていようって思うんです」
「まあ、それだけ強くなっても今度オルテシアさんを警護するような機会があるかは分かりませんが」とカインくんは言う。




