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婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される  作者: ゴルゴンゾーラ三国


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 今まで、誰にも言われたことがない言葉に、わたしはなんと返したらいいのか、分からなかった。嬉しいのは本当で、もしかしたら、わたしの憧れも認めてくれるのかも、と期待してしまうのも事実。

 でも、それ以上に、今回のことは見逃せなかった。


 なんて伝えたらいいんだろう、と迷っていると、「――迷惑だった?」と、アルディさんが問うてくる。


「ち、違います! すごく……すごく、嬉しかったです! でも、それはそれ、これはこれと言いますか……!」


 思わず声を荒げてしまうと、わたしが言葉に詰まった瞬間にパチン! と手を叩く音が聞こえてきた。

 びっくりして肩が跳ねる。


「そこまで。痴話喧嘩なら他でやってよね。ここ食堂だから」


 手を叩いたのはルナトさんだった。呆れたような表情でそんなことを言う。

 全員が全員、わたしたちの方を見ているわけではないが、わたしたちがいる入口付近に座っている団員たちからの視線が、ちらちらとこちらに時折向いていることに、今更ながら気が付いた。


「ていうか、昼メシ食ってる時間なくなるよ。まあ? オレはお前らが昼メシ食いそびれようが、どーでもいいけど?」


 ルナトさんの言葉に、慌てて、入口の扉の近くに取り付けられている大きな壁掛け時計を見ると、昼休憩が終了の時刻まであとニ十分もなかった。

 アルディさんが昼食を食べそびれない為に食堂に来たのに、これでは意味がない。


「とりあえず、昼食にしませんか。――……続きは、また後で」


 わたしがそう言うと、アルディさんはまだ少し、納得していないような顔をしていたけれど、でも、後で、と言ったからか、少なくとも、この場は収まってくれた。

 人が少なくなってきた食堂で、席についてご飯を食べ始める。美味しいはずなのに、なんだか、味が分からない。


 ルルメラ様に酷くなじられたことと、初めて誰かに庇われたことに、まだ、ドキドキとしていて、なんとなく、何をしていても落ち着かないのだ。

 もそもそとご飯を食べ進めるわたしとは反対に、アルディさんの食べるスピードは早い。早食いに慣れているのか、それとも、男女差で一口の大きさが違うからなのか、食べるスピードが早くてもそこまでがっついて食べているようには見えない。


 ちらちらと、どうしても、アルディさんのことが気になって見てしまう。

 そんなことをしていたら、パチッと、目があった――ような気がした。目があったような気配を感じて、すぐにご飯へと視線を逸らしたから、本当に目があったのかは分からない。


 結局、ご飯の味は、最後までよく分からないままだった。

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