表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/122

61

 わたしがルルメラ様に言い返したことが最初は受け入れられなかったのか、ルルメラ様は、きょとんと目を丸くしていたが、だんだんと状況を飲み込めたのか、怒りに染まった表情に変わっていく。


「地味女の癖に――!」


 ついに姫ですらなくなった。


「貴女たち――ッ」


 ルルメラ様が何か言おうとした、そのとき。


「ルルメラ」


 彼女を呼び捨てにする声があった。

 第一王女を呼び捨てにした、この声は――!


 がたがたと、食堂にいた団員たちが席を立ち、一斉に敬礼をする。

 敬礼をした彼らの視線の先には――第一王子である、ローザス王子がいたのだから。


「ルルメラ、こんなところにいたのかい」


 王子、という言葉がふさわしいと誰もが納得するような、煌びやかな見た目をしていて、柔らかい物腰の第一王子。彼までもがこんな場所に来るなんて……。

 城内は彼の家の敷地内みたいなものだから、そりゃあ、どこにいたって罰せられることはないだろうけれど。


「フィオナから全部聞いたよ。ルルメラ、俺は、第一王女であるなら、思ったことを簡単に口にしていいのかどうかよく考えなさい、と日々教えていたと思うけれど――」


 ゆったりとした声音で、言い聞かせるようにローザス王子はルルメラ様に話しかけていたかと思うと――。


「それは兄の気のせいだったかな」


 ――咎めるような、強い口調に変わる。幼子を叱るような声音から、他者を追いつめるものに。ルルメラ様は、ぐっと言葉に詰まっていた。

 他人をいじめるのが好きな彼女ではあるが、兄のローザス王子とリアン王子は敬愛しているというし、その兄であるローザス王子から咎められているとなると、反論しにくいのだろう。


「それに、こんな昼食どきにお邪魔して……騎士団の皆に迷惑だろう。ほら、帰るよ」


 ローザス王子の言葉に、ルルメラ様は椅子から立ち上がる。悔しそうにわたしを日と睨みしてから、ローザス王子の後を追った。わたしに謝ることはしないまま。まあ、期待なんかしていなかったけど。

 でも、おとなしく帰ってくれたことには助かった。ありがとうございます、ローザス王子。そして彼を呼んでくれたフィオナ様。


 扉が完全にしまり、少しして、ドッと食堂内がどよめいた。こんなこと、簡単に起きることじゃないから、みんな、緊張していたことだろう。


 ――……。

 わたしは、ざわざわとした食堂の中、アルディさんの服の裾を引っ張った。彼はすぐに振り返ってくれる。

 わたしは深呼吸を一つして――。


「どうして、あんなことを言ったんですか」


 ――彼を、問いただした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ