表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/122

52

 翌日。わたしの家に、ハウントさんがやってきた。ハウントさんの前では、制服を来て会う方が多かったから、こうして普段着のドレスで会うのはなんだか少し、不思議な感じがする。

 応接室に入り、ソファに座ることをお父様が勧めたけれど、その前に、ハウントさんは頭を下げた。綺麗な九十度である。


「――この度は、誠に申し訳ありませんでした」


 ハウントさんの謝罪の声。


「……謝罪は既に受け取っている。本当に申し訳ないと思うのなら、仕事で挽回してくれ」


 お父様の声に、空気がぴりっとなる。ことがことだから、元より重たい雰囲気ではあったけれど。

 その言葉に、ハウントさんは頭を上げ、「失礼します」ともう一度、軽く頭を下げてからソファへと座った。


「原因は、昼食を準備した者の不手際だったようです」


 そう言って、ハウントさんは説明を始めた。

 獣化した獣人は、獣化が解けるまであの檻の中で過ごすらしいが、そうなると、当然、世話をする者が必要になってくる。それは、わたしがしていたブラッシングとは別に、食事の用意や掃除のことである。

 正午の鐘が鳴ると、昼食の当番を割り振られた人が昼食を運び、準備をするらしい。ただ、その人は当然、午前中は訓練なり書類仕事なりしているので、その片付けをして昼食を運ぶとなると、わたしとカインくんが獣化棟を出た後に、獣化棟へと訪れることとなる。

 その昼食の準備をした後、暴れて隔離されていた犬と化した獣人の檻の施錠が甘かった、ということらしい。


「件の獣人は、孤児院の出でして、酷く周囲を警戒しているようでした。抜け出ようとしたものの、獣化棟の扉自体は開けられなかったようです。しかし、そこにオルテシア嬢とカイン――同行していた団員が戻ってきたようで……」


 急に現れた人影に驚いて、ガブッと噛みついてきた、ということか。


「……孤児院、だと?」


 お父様がいぶかし気な声音で呟いた。


「はい。――……孤児院が取り潰され、そこに保護されていた子供たちの一部が、第二騎士団に所属することとなりましたので」


 その話はカインくんから聞いている。聞いていた、んだけど……今、一瞬、ハウントさんが言葉を詰まらせていたように感じた。何か、言ったらまずいことが、会話の中にまぎれていたんだろうか。

 でも、孤児院が潰れて子供たちが移動することになった話は、カインくんも知っていた。彼が知っているくらいなのだから、今更そんなに秘匿するようなこともないはず――ない、よね?


 不思議に思って、ちらっとハウントさんの方を見ると、彼もまた、わたしの様子をうかがっていたようで、目があった。

 すぐに目線を逸らされたけど。


 なんだか、明らかに隠し事をしている態度で気になってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ