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「タイミング悪かったかな」


 アルディさんが首を傾げる。ルナトさんが怒って行ってしまったのは分かっても、どうして怒っていたのかは分からないようだ。まあ、確かにタイミングは何とも言えないものだったけど、あそこまで怒鳴ることないのに。


 わたしとアルディさんが見合って首をかしげている横で、「ルナト先輩かわいそ……」とカインくんが小さく呟いていた。彼には何か分かるらしい。

 確かに、何か言おうとしたタイミングで声をかけられて出鼻をくじかれたのは分かるけど、……でも、そもそも、すぐに言わない方が悪いような……。どんな言いにくいことを言うつもりだったんだろう。


「まあルナトの方にはまた僕から声をかけておくよ。――あ、丁度いいから、これ、今渡しておくね。本当は、昼食が終わったら獣化棟の方へ行こうと思ってたんだけど」


 アルディさんがわたしに何か、小さな包みを渡してくれる。何だろう、新しいブラシとかかな。それにしてはまるでプレゼントみたいな包み方をしてあるけど……。


「よかったら開けてみて」


 渡してくれた本人がそう言うので、わたしは言われた通りに包みを開ける。その中には、紙の箱が入っていて――それを開けると、シンプルながらも透かし彫りが綺麗な髪留めが入っていた。


「……綺麗」


 思わず、わたしは声を漏らす。


「気に入って貰えたなら良かった。ウチにいる間、使ってほしいな、って思って」


 まさかのプレゼントに、わたしはつい、食い入るように髪留めを見てしまう。こんなに細かく綺麗な透かし彫り、初めて見た。この国の髪留めは、大抵宝石をつけて装飾するから、こういうのは珍しいのだ。


「今、オルテシア嬢が使っている髪留めが、そのうちどこかに引っ掻けて壊しそうだな、ってのが半分、ひらひらしていて、つい気になっちゃうのが半分、かな」


 ……わたしの今使っているものはリボンで、仮にほどけても自分で結べるからこれを選んだのだが、騎士団的にはあまりよろしくなかったらしい。これでも、普段使いのものを選んだから、華美じゃなくていいかな、とか思ったんだけど……。まあ、わたし自身、『地味姫』の名にたがわず、派手なものもそう持っていないんだけど。それでも一応侯爵令嬢なので、それなりに装飾のついたものを使っている。


 これ、駄目だったか……と、表情に出さずに、わたしは心の中で反省する。

 ――しかし。


「っていうのが、ちょっとした理由であり建前かな。本音は、オルテシア嬢がブラッシングを引き受けてくれたことへのお礼と謝罪がメインだよ」


 お礼、はまだ分かるけど……謝罪、とは?

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