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 食堂につくと、それはもうすごかった。確かにこれは、にぎやか、というよりも、うるさい、と表現したくなるのも分かる。

 わたしはほとんど第二騎士団の人と顔合わせをしていなくて、全体の人数を把握していなかったので、ここまで人数がいるとは思わなかった。

 ざわめきようを見て、カインくんがぽつりと、「あー、出遅れちゃったか……」と呟いていた。


「あ、でも席はちゃんと人数分どころか余分にあるんで、座れないことはないっすよ」


 確かに、これだけ込み合っていても、ぽつぽつと空いている席があるのが分かる。じゃあ、別に席を策に取っておく必要とかはないのか……。まあ、騎士団の人数は分かっていて、ほぼ同時に全員食事にすることが分かっているなら、ちゃんと人数分用意するよね。飲食店じゃあるまいし。


 わたしはカインくんに案内され、食事が配膳されるカウンターへと並ぶ。三種類から選べるらしい。肉、魚、野菜、それぞれメインが決まっているようだ。

 わたしは野菜がメインのものを頼む。肉と魚は、すでに結構なサイズに切り分けられたものを焼いて味付けしてあるようだけど、野菜はサラダや豆と煮たものなど、うつわによそる形式のものばかりだったので、量の調整がしやすそうなのだ。

 わたしだって食べ盛り、と言える年齢ではあるものの、肉体労働をする男性と同じ分の食事は流石に食べ切れない。でも、肉や魚だと量の調整をするのに手間がかかりそうだし。


 規定量の半分くらいの量で食事を受け取ると、わたしたちは空いていた席へと座った。

 豆の入った料理、テーブルマナーの練習のときに散々食べさせられたなあ、なんて思いながら、料理を口に運ぶ。


 ――と、なんとなく視線が気になって、正面を見ると、カインくんがじっとわたしを見ていた。何か食べ方、間違えたかな。家では出たことのない料理だったけど、応用でなんとかなるはず、と思っていたのに。


「どうかしました?」


 何か間違えたかな、とドキドキしながら聞くと、カインくんは慌てたように、「綺麗に食べるな、と思って」と言った。


「さすがご令嬢だな、と」


「このくらいで大げさですよ」


 とりあえず、間違えていたわけじゃないのはよかった。


「やっぱ貴族って、みんなそのくらい綺麗に食べるものなんすか?」


「え? まあ……でも、爵位が下がるほど、もう少し崩すこともあると思いますよ」


 基本的に、周りから見て不快だと思わない程度にできていればいいのだ。ルールにがちがちに従うのは王族や公爵、侯爵家くらいまでである。伯爵家あたりから、崩す家と崩さない家が半々くらいになり、それ以下は、逆にちゃんとした家庭教師を雇えず、最低限になりはじめるので、マナーを破ろうとと思って雑になっているわけではないと思うが、結果的にはくだけたものになっている。


「自分も貴族入りを狙ってるんですけど、結構厳しそうですね」


 貴族入り。そう言えば、そんな、何かの制度っぽい言葉があったなあ、とわたしは思い出す。いい機会だから、ちょっと聞いておこうかな、なんて思ったとき――。


「――ちょっといい、ですか」


 わたしは、黒髪の少年に声をかけられた。

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