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結局、解放されたのは夕方くらいで、さくっと終わった、第二騎士団の施設の案内やブラッシングよりも、ルルメラ様の話に付き合っている時間の方が長かった。フィオナ様が折角会いに来てくれようとしていたのに、彼女とは全然話ができなかたし。
わたしは自室のベッドの上に寝ころぶ。まだ夕食前で、お風呂すら済ませていないが、少しくらい、いいだろう。
この国は女王を認めてはいるものの、やっぱり王子の方が王位継承権は高くなるので、ルルメラ様の王位継承権は高くない。でも、万が一、彼女が女王に即位するようなことがあれば、非常に大変なことになりそうだ。
天井を長めなながら、わたしは、ぼーっと頭の中を整理する。
……それにしても、第二王子にもう新しい婚約者がいるって、本当なのかな。いや、ルルメラ様があれだけ自信満々に話すのだから、嘘、ってことはないだろう。少なくとも、公にされていないだけで、そういう予定にはなっているはず。
お父様なら何か知っているかな。流石に王族とはいえ、既に本決まりして何年も経っている侯爵令嬢との婚約を無意味に破棄するわけがない。
わたしが地味姫なんて呼ばれているのは、それこそ社交界デビューのちょっと後。その頃にはもう第二王子との婚約は決まっていたけれど、正式な発表はまだ先のことだったから、わたしは地味姫で、家柄以外なんの取り柄もない女だから嫌だ、と断るのであれば、正式な発表前に取り消せば、今ほど面倒なことにはならなかった。
……お父様は、婚約破棄の手続きをした際、わたしより後に退出していた。そのときにもまた、何か話をしていたはず。
そもそも、婚約破棄の話が持ち上がったときに、理由を聞かされているはずだ。それに納得したから、お父様も同意したと思うのだ。前世のネット小説で見るような、イベントと言っても差し支えないような大事が起きたわけでもないし。事後承諾をせざる理由がない。
「……聞いたら教えてくれるかな」
わたしがリアン第二王子に不釣り合いだから、なんて、理由にもならないような理由すら聞かされていない。
以前のわたしなら、聞き出すようなことはしなかったかもしれないけど……――。
わたしは呼び鈴を鳴らして、ジルを呼びつける。
「お父様に面会の申し入れをしてくれる」
わたしの言葉を聞いたジルは、すぐに行動し始めてくれた。
別に、知らなくてもいいと言われたらそれまで。でも、わたしにだって知りたいと言う権利くらいあるはずだ。