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 どうしたものか、と思っていると、わたしの反応が薄かったのがつまらないのか、ルルメラ様は「そういえば貴女、第二騎士団に出入りすることになったらしいじゃない」と話題を変えてきた。どうあってもわたしを馬鹿にして遊びたいらしい。

 フィオナ様の方は、そんなルルメラ様をたしなめようとして、睨まれて、黙り込む。ルルメラ様に見つかったのが運のつき、というか何というか……。


「まさか貴女が騎士団に入るとはねえ……」


 みなまで言わないが、彼女の目つきが完全にわたしを見下している。非常に居心地が悪い。早く迎えの馬車が来ないかな、と思っては見るものの、王族がわたしに話しかけているのだ。よっぽどの急用じゃない限り、割って入ることはできないだろう。

 ということで、彼女が飽きて部屋を去るまでわたしは我慢するしかない。


「地味姫には騎士団も不釣り合いじゃない? それとも平民にでも取り入って、慰めて貰う?」


 口が悪いなあ、この第一王女。王族の品位はどうした。……とは流石に言えない。いままでのわたしの反応と違いすぎる、というのもあるけど、王族にそんな口は聞けないのである。せめて婚約者という立場だったらまだやりようもあったけど、その席はつい最近剥奪されたばかり。


 ……それにしてもこの口ぶり、釣り合わないのはわたし、とでも言いたげだ。

 数十年前まで獣人は差別されていて、老人と呼んでも差し支えない年代の人たちは獣人を嫌っているようだが、わたしたちのような、差別が撤廃されてある程度経ってから生まれた世代はそこまで獣人に対する嫌悪感はない、のかも。

 以前の記憶をたどってみても、獣人を差別するようなことを言っている、若い令嬢や子息の姿を思い出すことができない。


 ……まあ、これに関しては、皆の前にわたしが出ると、途端に皆が「地味姫だ」とくすくすしだしたり、そもそも仲がいい人が多くないので、獣人の話題が出ない、というのもあるだろうけど。

 でも、現王が人種差別を撤廃することに力を注いでいる人だから、その影響もあって、祖父母世代、曾祖父母世代の禍根は、わたしたち世代に残っていない可能性が高そうだ。

 まあ、その差別や嫌悪感と、獣化した姿への恐怖感は別物なんだろうけど。


「……ちょっと、聞いてるの」


 そんなことを考えこんでいたからだろうか。すっかりルルメラ様への返答が滞っていた。彼女は不機嫌そうに、パチン、と扇子を閉じる。

 いけない、いけない。黙っていたら無視しているように見えてしまう。


「聞いております。第二騎士団へは仕事を頼まれているだけですし、今のところは一時的なものですから」


「――仕事! 貴族令嬢が!」


 いじるネタを見つけたぞ、と言わんばかりにルルメラ様の目が輝く。

 め、めんどくさい……。

 しかし、それからしばらく、ルルメラ様にあれこれ嫌味を言われ、遊ばれることになったのだった。

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