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「ありがとう、かなりすっきりした」


 そう言うアルディさんの表情は、どこか晴れやかに見えた。

 わたしからしたら、特に大きく変わったところは見られないけど、本人からしたら全然違うのかもしれない。


「やっぱり人にやってもらえるのはいいね」


 ここまで喜んでもらえると、わたしもやった甲斐があるものだ。

 とはいえ、一か月後に、仮入団を経て、本格的に入団するかはまだ全然、分からないが。


 わたしは、一か月なら、と比較的軽い気持ちで引き受けたのだが、周りはそう見なかったようだ。リアン第二王子に未練があるから王城に出入りするために騎士団に入った、という噂は立つだろうな、と覚悟していたが、予想以上に早く出回っていた。

 わたしが制服を受け取り、着替えているときにはもう、メイドらしき女の子たちがひそひそやっているのを目撃してしまったのである。


 わたしが、制服に着替えるように、と借りた部屋の窓から見える位置の裏庭で噂話をしていたのだ。着替え中にはカーテンをしていたし、そのカーテンを開けた際に話し声が聞こえて、つい聞いてしまったのである。

 着替えを手伝ってくれたメイドが、顔を青くして慌てていたから、もしかしたら、城中のメイドにはもう広まっているのかもしれない。どう見ても、着替えを手伝ってくれたメイドも知っている風だった。


 しかも、恐ろしいことに、その噂話をしていたメイドたちの一人が「新たな結婚相手を探しに騎士団へ入るという可能性もあるのでは?」と言い出した。

 そんなこと、全然考えていないのに。というか、そう見られることを、メイドが話しているのを聞いて気が付いた。令嬢が騎士になり、女騎士として職務に就く前例はあるものの、大抵が、数人いる兄に憧れて、とか、父親が騎士団の中で結構なポジションにいるとか、元々騎士団と関りがある令嬢がほとんどらしい。


 そりゃあ、変な目で見られても仕方がない。

 婚約破棄されたての、社交界で笑われ者になっている地味姫が騎士団に仮入団した、というのはなかなかに刺激的な話題だったらしい。

 最後までわたしに気が付かないまま、メイドたちはわたしを話題にあれこれ好き勝手に話していた。――着替えを手伝ってくれたメイドは、仲間だと思われたくないのか、必死に知らないふりをしていたが、彼女もまた、わたしがいなければあの会話に混ざっていたのかも。


 ――……でも。


「一か月っていう仮期間でも、引き受けてくれてありがとう」


 そう、アルディさんが言ってくれて、役に立ったのだと実感すると、ちょっとだけ、報われたような気分になるのだった。

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