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12

 訓練場に食堂、詰所、と案内され、最後に獣の姿になった獣人――獣化と呼ばれる状態の獣人が休んでいる部屋にたどり着いたのだが、わたしはすっかり疲弊していた。

 あまり運動をしない日々を過ごしていたから、というのもあるが、何より、あちこちで視線が刺さるのである。ひそひそと話される内容は、「地味姫だ」という嘲笑に近いものと、「あれがアルディの言っていた令嬢か」という好奇に満ちたものとの二種類の視線が、わたしに向けられる。


 割合的には後者の方が多かったが、わたしが注目され、ひそひそと話されるのは、大抵が貴族が通う学校か、夜会やパーティー、というようば場で、「地味姫が来たぞ」「リアン第二王子と釣り合わない」と陰口を叩かれることばかりだったので、好意的な視線でも、遠巻きに注目されるだけで精神的に疲れてしまう。


「大丈夫っすか?」


「――……大丈夫、です」


 心配そうにカインくんが声をかけてくれるが、こんなところで根を上げてはいられない。入団して初日、頼まれた仕事を一つもこなしていないのに、弱音は吐けない。大丈夫、と言うしかない。


「えーっと、じゃあ、こここから先が獣化した獣人の待機部屋になります。今日は三名いるっす。少ない方ですね」


 三名で少ない方なのか。でも、第二騎士団はかなりの人数がいるし、それを考えると少ない方なのかも。タイミングが悪いときになると、二けた数の獣化した獣人が待機していることも珍しくないらしい。

 小型な動物だと助かるんだけど……。


 そんなことを考えていると、カインくんが重そうな扉を開ける。――その先に見えた光景に、わたしは唖然としてしまった。


 ――檻だ。


 中央に廊下が伸びていて、左右に檻が設置されている。前世にテレビの動物番組で見た、動物園のバックヤードみたいである。

 獣の姿をしている、とはいえ、元々は獣人だ。人の言葉が分かるのだから、今、自分が置かれている場所についても、理解できるだろう。

 掃除が行き届いていなくて、汚いわけじゃない。でも、まさかこんな風になっているとは思わなくて、絶句してしまった。


 だって、普段、王族や貴族の為に王城の警備をしているのに、こんな場所に押し込められうようにしているなんて。

 あのとき、ブラシをくわえた虎がわたしの元に来れたくらいなのだから、もっと自由に出入りできる場所だと思っていたのに。


 わたしが黙っていると、カインくんが、自虐の色を滲ませた笑顔で、「国のお偉いさんは、あんまり獣人が好きじゃないみたいなんすよねえ」と、とんでもないことを言った。

 身体能力に優れているから王城の警備をさせておいて、好きじゃないって何?

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