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 王城解放日。その言葉を聞いて、わたしは、そんな短くてわずかな間だけでもブラッシングする人間が欲しい、というのを察しした。


 この国の王城は、年二回、ホールや一部執務室を一般公開をする。国民は勿論、観光客も結構な数やってくるのだ。本来は、王城の建築物の見学や、いつもどのような仕事をしているかを見る社会科見学みたいなもののはずだが、ここ数年はちょっとしたお祭りみたいになっている。観光客目当てに、城に続く道の前の辺りに屋台が出ているのだ。


 最初はちょっとした飲食店の出張、みたいなこじんまりしたものが一店、二店、とあるだけだったが、今ではこの解放日にしか食べられない限定品を出したり、かなりの数の店舗が出ていたりと、かなり賑わっている。

 なので、元々は学校の授業としてや、よほどの愛国心を持っている人間くらいしか訪れなかった数年前とは比べ物にならないくらい人が多くなっていた。


 そうなれば当然、それに比例して、王城の警備である第二騎士団の仕事も非常に忙しくなるのだろう。

 だからこそ、その日までに万全の体勢を整えて置きたい、ということか……。

 最初から期限が決まっていれば、ただの仕事、ということを信じて貰えるだろう。一部は絶対に「地味姫が第二王子に縋ろうとしている」と言うだろうが、そういう人たちはわたしが何言ってもそれに繋げるだろうし。


 来月の王城解放日まで、となると、一か月と少し。期間を考えても、そこまで長くはない。貴族界で噂が広まるのは一瞬だが、皆、動きは早くない。一か月少し、というこの期間で噂を確かめようとする人はそうそういないはずだ。少なくとも、皇子目当てで選ぶ仕事には見られないはず。


 わたしはあれこれ脳内で考えた結果、来月の王城解放日までのお試しなら、悪くないかもしれないな、という結論を叩きだした。孤児院の院長はともかく、分家の養女になるなら、分家を選ぶところから始まるはずなので、どうせ一か月は暇だろうし。


「来月の王宮解放日まで、というのでしたら、お受けします」


 わたしがそう言うと、ハウントさんはパッと顔を明るくさせた。作り物っぽくない、心からの笑顔。


「非常に助かります! 今日は制服がありませんから……明後日までには予備のものを取り寄せます。急で申し訳ないですが、この後、採寸だけさせてください」


 口ぶりからして、制服があったら、今日からでも働いてほしいらしい。よっぽど切羽詰まってたのか……。

 とはいえ、悲しいかな、婚約破棄された身。予定なんてほとんどないのである。元より、地味姫をお茶会等に誘う人もそういなかったので、婚約破棄されなくたって、忙しくもなんともないのだが。流石に婚約破棄されたばかりでは、と行儀作法、勉強もすべて免除になっている。


 同情や心配からの配慮ではなく、選択する道次第では、無駄になるどころか足かせにしかならない可能性があるからストップしているだけ、だが。

 故に、急に予定を詰め込まれても結構大丈夫なのだ。


 わたしは城のメイドに採寸され、明後日から第二騎士団に仮入団することとなったのだった。

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