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行き過ぎた欲望

作者: けいご

 その日、健太郎はホームラン3本を近くの公園でかっ飛ばして来て、その帰り道は意気揚々としていた。しかし、健太郎の胸の内はどこかざわつくものがあった。それは、これから帰る自分の家に対してでもあるようだった。健太郎はなぜ自分の家に帰るのにこんなにも心の内がざわざわとするのだろうか?と不安に思った。しかし、その不安の正体は健太郎自身には分からなかった。

 ホームラン3本打っているように、健太郎の実力は申し分なかった。自身の目標を最後までやり通そうとする粘り強さも持ち合わせていた。そんなところもあって、周りからの評価も一定のものを得ていたのだが、健太郎のクソ真面目な性格から彼は家路に真っ直ぐに付くのが通例だった。

 彼はなぜ自分には能力も充分にあり、周りからの評価もある中で、真面目に今日の仕事が終わったとばかりに真っ直ぐに家路に付いてしまうのか、自分でもよく分かっていなかった。ただ、その家に帰ろうとする行為がさも地獄の穴に吸い寄せられるような感覚だけは常日頃から持っているのだった。

 家での彼はとても優等生に振る舞い、衣食住何不自由なく暮らしていけるのだった。それは、今日彼が外でホームラン3本をかっ飛ばしてきたのが十分彼の人生において幸せであるのにも関わらず、家での彼の生活というのはもう彼とって十分すぎるほどのものであった。そう、それは正に過剰な幸福という一種の地獄の穴のようであった。クソ真面目な性格の健太郎はその穴から抜け出ることが出来ず、幸福を感じているにも関わらず人間の欲望というものは際限がないものなのだなあ、とつくづく思うのだった。

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