家族と涙
旅の初日 十二月九日。
通話した次の日、家族に一言かけた。
「二週間後その……遊びに行く」
父、母、弟、みんな静まっていた。
「いつ帰ってくるかは、まだ決まってないから、もしかしたら一年……」
すると急にみんなして驚いた反応を見せた。
「どこに行くの?」
母はそう聞いてきた。
「ネッ友と遊ぶ……」
「そうなのね」
またしてもみんな静まった。
『やっぱりかぁ』とため息を吐き部屋に戻った。
母はやっぱり僕の事なんでどうでもいいらいしい。僕がリアルどころかネッ友すらいない事を知ってるくせに止めなかったのは、本当にどうでもいいからなんだ。
「どうでも……」
目から一粒の涙が落ちた。
自分でも分かってたが、本当に僕の事に興味がないんだ。弟が優秀なら僕はどうでもいいんだ。
罪のない弟まで憎んでしまうなんて、最低な兄だ。
涙が止まらないまま、旅の準備を始めた。
──朝、6時、遂に旅の当日がやってきた。
最後にもう一度確認をする。スマホ、財布、お茶、モバイルバッテリー、着替え、靴下、マスク、地図、ノート、筆記用具。以上。
所持金143万は全部持ってきた。余りにも大金なのでせめて智樹さんには話をしなければ。
そうこうしている間にも時間は流れ、10時になっていた。集合時間を考えて行動するなら、もう出発しなければいけない。
「いってきます」ぐらい言おうと思ったが、きっと家族はそれを望んでいない。
玄関に行きドアノブを捻った。当分、いや、もしかしたら一生この家には帰って来れないかもしれない。
別れの決心をして家を出た。すると後ろから声がした、
「隼人、いってらっしゃい」
その声は母だった。それに続き父から
「無事帰ってこいよ、できれば……隼人の誕生日までに」
僕の誕生日まで後、三ヶ月。
「うん。いっ、いってきます」
一度も後ろを見れなかった。だって泣いた顔なんて見られたくないから。
僕は変わってしまったが家族はいつまでも家族だった。