安心するから
「みんな写真送っといてー」
七瀬が続けてそう言う。
「はい、分かりました」
僕はポケットからスマホを出し、撮った写真を送ろうとした。だが、撮影した写真が百枚を超えていて、全部送る訳にもいかない。
だから、厳選しなければいけない。
僕以外は数秒で写真を送っていく。それで僕は少し焦る。
「ちょっ、あと少しだけ待ってください。撮った写真の枚数が多くて」
「ゆっくりでいいよ」
焦る僕に、智樹さんは優しく言ってくれた。
僕は言われた通り、ゆっくりと落ち着いて写真の厳選をした。そして二十三枚の写真を送った。
「送れました!」
画像を送ったついでに他の人が送った写真を見る。撮ってる場所はある程度同じなのに、違う見方ができる。
送られてきた景色の写真の中、一つだけ景色を背景に撮られた後ろ姿の僕の写真があった。送った人は智樹さん。
「智樹さん、この写真なんですか?」
僕が画面を前に向けると、助手席に座る智樹さんが振り向いて、それね、と呟いた。
「ほら、先に二人で鳥居撮った時あったでしょ? その時に撮ったんだよ」
上で僕が鳥居を撮っている時、後ろから聞こえたシャッター音はこれだったらしい。でも、聞きたかったのかはそう言うことではない。
「あの……撮った場所とかじゃなくて、なんで景色を背景に僕を撮ったのかなって思って……」
別に嫌なわけじゃない。ただ、絶景を前にして、なんで僕を撮ったのかが知りたい。特に不思議なのは、智樹さんがその一枚しか撮っていないということ。
智樹さんは視線を少し落とした。それと同時に、空気が微かに暗くなったような気がした。
「ご両親……せめて弟君に送ってあげな。きっと安心するから」
言い終えると、智樹さんは前を向く。
弟や家族に写真を送ったって自慢にしかならないだろ、と内心思ったが、智樹さんを信じて、言う通りにすることにした。
「はい、わかりました」
返事をして、弟とのトーク画面を開く。そして智樹さんが送ってくれた写真と僕が撮った鳥居の写真、計二枚を送る。
『これ、神社行った』
写真にメッセージを添えた。
僕は次に行く厳島神社の情報を少しだけ調べようとした。すると、メッセージアプリの通知が来た。相手は僕の隣に座る雪さん。




