空気や波が固まった
震えてるのは寒いからじゃない。じゃあ何が原因なんだろうか。
考えても分からず、モラルが欠けている発言をしてしまう。
「じゃあ、なんで震えてるんですか?」
僕も声のボリュームを小さくして訊く。彼女はまだ温かく無いであろうカイロを包み込むように両手で持つ。
「……ごめん、言えない」
空気や波が一瞬固まった。僕にはそう感じた。
ここで何を言えばいいのか、何も言わないで黙るのがいいのか、僕には多分一生わからない。
結局何も言えず黙ってしまう。そんな僕を見兼ねたのか、雪さんは静かに口を開く。
「言えないけど……今はこのままにさせてほしい」
渡したカイロを僕のポケットに入れ、震える手を再度、両肩に置いて、抑揚のない声で言った。
彼女が言いたくないのであれば、僕はこれ以上訊かない。それと、今言うべきことがやっと分かった。
「はい、何かあったら言ってくださいね。なんでもしますから!」
そう伝えて写真撮影を再開した。
雪さんのことを気にしてばかりいると、雪さんにストレスがかかるだろう。だから、あえて気にせずシャッターを切る。
龍宮の潮吹が見られる荒々しい崖は、多分吹き上がる海水が長い年月を掛けて削ったんだと思う。
考えれば考えるほど、神秘的な魅力が増す。
そこから写真を撮る回数が増え、同時に雪さんの震えを薄れていった。
「雪さん、もうそろそろ、みんなのところに戻りますか?」
僕らは龍宮の潮吹を見てる間、ほとんどは二人でいた。他の三人は多分別のところで見ている。
後ろを振り向いて訊くと、彼女は肩に置いていた手をスッと戻して、顔を好調させた。
「そうだね、集合しよっか」
緊張気味な声で、少しカタコトになりながらそう言う。そうして彼女が歩き出す。
僕は雪さんが進む方向についていく。後ろから見た雪さんの背中は、震えてはないものの、猫背になっていた。




